第390話 造船2。視察団。
翌日。
船ができるまでダレン南ダンジョンの大空洞の探索は延期しているので俺は通常状態に戻っている。
午前中に、不動産屋がアキナちゃんのマンションの売買契約書を持ってマンションにやってきたとアスカ3号に呼ばれたので、俺は不動産屋の差し出す契約書の所定の場所にサインしていった。華ちゃんから貰った万年筆が役立った。代金は所定の口座にアスカ3号が振込んでいるそうだ。
その後、屋敷に戻った俺はアスカ2号を連れてコアルームに跳び、コアにアスカ2号に協力して船を作るよう指示しておいた。
船の大きさはどのくらいになりそうかアスカ2号に聞いたところ、
「ヨットやクルーザーなどは全長50フィートで大型と呼ばれるそうですが、50フィート(15メートル)ではアキナさんの要望に応えられませんので、メガヨットと呼ばれる全長120フィート(35.5メートル)で考えています」
さすがはアスカ2号。アキナちゃんの性格まで理解しているようだ。
「ですので、造船所は長さ50メートル、幅30メートル、高さ20メートルで考えています」
「船に特徴とかあるのかな?」
「舵輪は付けますが操縦はゴーレムに行なわせますので口頭の指示を受け付けます」
ほう、AI搭載だな。人工衛星がないし地図もないからナビは無理だが無人操縦船だな。
「船体ができ上ってからですが船の喫水はある程度深くなるため音響測深機を装備します」
水深測量しているわけじゃないから海の底がどうなっているか分からないものな。
「航海用レーダーも装備しますから、航行に関して不安はないと思います。
音響測深機、航海用レーダーその他の電子関係器材は外部に発注して調達する予定です。よろしいですか?」
「必要と思われるものはどんどん調達してくれ」
「はい」
アスカたちに任せるだけでどんどん仕事がはかどる。
アスカ2号とコアに任せておけば船は大丈夫だ。工期を聞いていなかったが、アスカ2号もコアも、黄色いスタミナドリンクを飲まなくても、はるかダンジョン最深部で24時間戦えるので、そんなにかからないような気がする。それに今回は、アスカ2号の手伝い用の作業ゴーレムも何体かコアが創るはずだし。
船に関して俺の仕事は、外部から購入した大型器材の造船所までの運搬と完成した船をアイテムボックスに収納して、適当な水面に浮かべるだけだ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
アスカ2号とコアに任せていた造船だが、だいぶ船の形ができてきた。
船の乗っかった架台は、2メートル間隔でずらりと並べられており、一つ一つの架台の上面は木製で幅は30センチ。架台は船底の形に沿って窪んでいるので、船底が傷つくことなくキッチリはまっている。
それまで船と漠然と呼んでいたのだが、それでは味気ないので、名まえを付けることにした。
昼食の席で、
「今造っている船の名まえなんだけど、何かいい名前はあるかな?」
「わらわの一推しは『一心同体丸』じゃ!」
出たー!
コタツを囲んでいた面々を見渡すと、キリアだけ深く頷いていた。
「ほかに誰か意見はあるかな? なければ一心同体丸だな」
「はい!」
「華ちゃんの意見は?」
「え、えーと。そう。
オストラン国王が乗る船だから、ロイヤルオストランとか?」
「おっ! 何だかカッコいいな。
だけど、それだとうちのものじゃなくて、国の持ちものって感じがするなー」
「じゃあ、イワナガ・シャチョウ号」
「今度の会社の社長はエヴァだけど、何でシャチョウ?」
「それなら、シャーリン」
「何それ?」
「じゃあ、朝びらき丸は?」
「何それ?」
……。
「もう一心同体丸でいいです!」
華ちゃんの賛同を得られたのだが、
「パーティー名のときの一心同体はキリリと引き締まってカッコいいけど、
丸を付けて一心同体丸になってしまうと、同体が胴体みたいでちょっと変じゃないか?」
「それもそうじゃな。
ならば、白く塗装してロイヤルスワンはどうじゃろ?
これなら、それなりの高級感もあるし、ラシイじゃろ?」
「淡水の上ならいいけど、あそこは塩水だったからなー」
そこで、はるかさんがスマホを操作して、
「代表的な海鳥はアホウドリ、えーと、英語だとアルバトロス。あっ! これいいかも?
ロイヤルアルバトロスって白アホウドリって意味があるそうです」
「カッコいいのじゃ」
「俺もそれを推す。
異議のある人ー?」
誰もいなかった。
「ロイヤルアルバトロス号に決定!」
そのロイヤルアルバトロス号は、
キールなどの主要構造部分は鋼材を使用しているが、その他の部分はFRP(繊維強化プラスチック)を使用している。使用した鋼材も周囲はFRPで固めている。
直径75センチのメタルゴーレムコマで2800馬力のエンジンを4基搭載予定だ。すでに直径75のメタルゴーレムコマはコアルーム横の造船所に置いている。アスカ2号に4個のメタルゴーレムコマのうち2個は逆回転するように言われたので、そのようにしている。
さらに船内電気用に130kWの発電機2基も用意している。どちらももうじき設置される。
スクリューは炭素繊維複合材料(CFRP)製で直径120センチの物を2個注文している。当初180センチのスクリューで2軸を考えたそうだが、納期がかなり長かったので、120センチのスクリューで大型船並みの4軸推進としたそうだ。
120センチのスクリューでも4個だと納期が相当延びるそうなので2個にしている。2個でも納品までに2週間かかるそうだ。納品先はうちのマンションなので、スクリュー製造会社も少し疑問に思ったと思う。また、スクリューシャフトを含め回転部を固定するためベアリングも発注している。これは、コアがコピーするためのものだ。
アスカ2号とコアの仕事なのでまさか浸水することはないと思うが、スクリューが取り付けられたら、一度水の上に浮かべて浸水チェックすることにしている。
造船所内には屋敷からでもマンションからでも移動できるので、たまに華ちゃんや子どもたちが見学にくる。危険はないと思うが、例のミスリルのヘルメットを造船所の入り口に何個か掛けている。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
視察団が日本に出発する日がやってきた。俺は視察団員の一人でもあるエヴァを連れていったんオストラン神殿に跳び、ローゼットさんを拾って宮殿の玉座の間に跳んだ。
やってきた時間は9時10分前。まだ誰も玉座の間にいなかったが、すぐにブラウさんが後ろに9人の視察団員を引き連れて玉座の間に入ってきた。視察団員たちには既に日本語スキルブックを使用して、日本語スキルを得ている。これからオストランでは日本語を話せるということがステータスになるかもしれない。目の前の9人はおそらく若手の部類なのだろうが間違いなくこの国のエリートに育っていくのだろう。
ブラウさんはそのまま進んで俺の隣りに立ち、視察団員たちは横一列に並んで俺の前に整列した。
ブラウさんから、9人の視察団員たちにエヴァが紹介され、エヴァもよろしくお願いしますと頭を下げて、9人の視察団員の横に並んだ。
「諸くん、おはよう。
今日から10日間、日本の国をよく見て、いいところ、悪いところ、悪いところは見えないかもしれないが、オストランに取り入れるべきものが何かじっくり見てきてくれ」
「「はい!」」
おー、視察団のみんなの返事は良かったぞ。やる気を感じた。少しずつ宮殿の雰囲気もいい方向に変わってきているのだろうか?
彼らが視察から帰ってきたらさらに一皮むけることを期待しておこう。
「これから一人ずつ日本のダンジョンの中に転送する。向こうでは日本政府の役人がきみたちを迎えてくれるのでその指示に従って行動してくれ。
それじゃあ、きみから。転移!」
最後にエヴァを日本の第1ダンジョンの入り口の空洞に転送して俺の仕事は終わった。
「陛下、ありがとうございます」
「10日後、彼らが帰ってきてからが楽しみですね」
勇気のしるし~リゲインのテーマ~/牛若丸三郎太
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