第388話 Zダンジョン保安強化。
防衛省での会議中、発電機用のメタルゴーレムコマの値段を想像して勝手に盛り上がってしまった。
発電所の話の後、さらに野辺次長から、
「グリーンリーフの3名が年末ようやく第1ダンジョンの第20階層、大空洞に到達しました。
その際、動画を撮影したのですが、動画からでは大空洞の広さを推定できませんでした」
あそこはどこまでも続いているように見えるからなー。
「第20階層まで片道1日半、往復で3日から4日。エベレスト登頂ではありませんが、広大な20階層の探索を進めるためには、前進基地のようなものを設置しながら進めることになると思います。20階層まで資材を運搬するだけでも容易ではないのでいつ前進基地を建設できるかは見当もつきません。
もちろん、自衛隊員を動員すれば短期間に前進基地の建設も可能なのでしょうが、さすがにこういった形での自衛隊員の出動はできません。
そういうことなのでグリーンリーフの3名とも話したのですが、大空洞内にもしその先に通じる階段なり通路があったとしても発見は困難だろうということで、グリーンリーフは今後第19階層までの階層の未探索部分の探索を行なっていくことにしました」
この件について言えば、アイテムボックスと転移のある俺からすればチョロすぎる案件だが、前進基地建設の助力について俺は言いださなかったし、防衛省からも依頼はなかった。
防衛省側からの話が終わったあと、防衛省にも外務省から話は伝わっていると思ったが、俺の方からオストランの視察団の日程などについて話をしておいた。
最後に野辺次長から、
「大空洞へ直接つながるピラミッドが地上に現れたらありがたいんですが」
ピンポイントで、俺の考えていることを言われてしまった。予言者Zとしては、この機会なので、
「そういった心の声がダンジョンに届けば、ダンジョンが応えてくれるかもしれませんよ」
などと、それらしく言ってみた。ここでふと思ったのだが、俺の話し方、年末旅館で見たダンジョン評論家に似ていないか?
その日はそれで会議は終了し、ポーションとフィギュアモンスターを卸して華ちゃんを伴い屋敷に帰った。
この日の俺の頭の調子は上々だったようで、会議の席で考えていたことをすぐに思い出し、コアルームに跳んで不届きな冒険者を何とかできないか相談してみた。
「……。コア、そういうことなんで、こういったとんでもない連中を摘まみだすようないい方法はないかな?」
「ダンジョンに侵入した人物の思考を読み取ることはできます。
しかし、大量の冒険者が侵入している関係で、全ての冒険者の思考を読み取ることはわたしとしても困難です」
それはそうだ。
「さらに、思考がどうであれ、未遂の者を本当にダンジョン外にパージしてしまってよろしいですか?」
「確かに、それはマズそうだな。未遂であっても爆薬なんかを持ち込まれれば被害が大きいからな。
それなら持ち物検査をしてみるか。機械での持ち物検査は確かに冒険者も嫌がると思うが、コアの能力で持ち物検査できるならいいかもな。持ち物検査は可能だろ?」
「持ち物のチェックにはほとんど負荷はかかりませんから全数チェック可能です。
どういった持ち物をチェックしますか?」
「火薬や爆薬といった危険物だが、分かるかな?」
「燃焼した場合、音速に近いかそれ以上の高速で燃焼する化合物というくくりでよろしいでしょうか?」
「よくは分からないがそれでいいんじゃないかな」
「了解しました。そういった化合物の持ち主を、ダンジョンからの強制退去させればいいですか?」
「強制退去させるとどうなる? というかどこに出ることになる?」
「どこでも可能です。火山の火口でも海の底でも」
「それはさすがにマズいな。
そうだ、火薬なり爆薬の見た目が変わらないような形で、無害なものに変えられないか?」
「可能です」
「じゃあ、それで頼む」
「了解しました」
「待て待て、火薬や爆薬が使えなくなると、ダンジョン協会の護衛員や自衛隊員が銃器を使えなくなってしまうな。
ダンジョン協会の護衛員、コアは分かるか?」
「はい、わかります」
「自衛隊員は?」
「分かります」
「弾丸なんかに入っている火薬なんかも含めて彼らの持つ火薬や爆薬はそのままでいいからな」
「了解です」
これでよーし。
コアルームから屋敷に帰った俺は、コタツに入ってミカンの皮をむきながらオストランと日本の接続について考え始めた。これについては、実施時期はまだ先だが、そろそろ具体的に考えた方がいいだろう。ニューワールド側の出入り口は、日本町予定地の隅でいいだろうが日本側の出入り口はどこするかが問題だ。
どうせなら、親父が持っている土地のどこかに作ってやるか。そうすればさらなる町興しになることは確実だ。この際だから高速道路とか新幹線が走るくらい大きな出入口にしてやろう。実施は、オストラン国王と日本が正式に国交樹立したと世界に発表する4月前後がインパクトがあっていいだろう。
何にせよ、大掛かりなことをするためには、事前の打ち合わせは必須だし、そうなると防衛省には俺が日本の全てのダンジョンを統べるダンジョンマスターだということをカミングアウトする必要がある。
オストランと日本をダンジョン経由でつなぐことは確定として、後の課題は大空洞の開放か。何か助言でもしてもらえればと、華ちゃんに相談してみることにした。
「そうですねー。
中央の大型ピラミッドの先はコアルームまで直通だし、大勢の人間を無制限に入れてしまうのはその意味でもまずくないですか?」
「そうだよな」
「それに、大型ピラミッドの入り口のモンスターと言えども自衛隊の本物の火器があれば簡単に排除されそうですし」
「確かに。少なくともあそこの防備は厳重にしないとマズいよな。本当はコアルームをどこかに隠してしまった方がいいんだろうが、コアルームとダンジョンは繋がっていないとマズいそうだし」
「あそこの開放は、本当に地球に巨大隕石が衝突するような危機の時でいいんじゃないですか? それか、今の出入り口から地道にたどり着かせるだけで」
「うーん。やっぱりそうだよな。そうしよう」
自分一人で決められないことも、こうして背中を押してもらえれば簡単に決められる。いつも華ちゃんに頼っているのだが、頼って悪いわけじゃないし。
「華ちゃん、それはそうと、そろそろ昨年末に中断していたダレン南ダンジョンの大空洞の探索を再開しないか?」
「そうですね。
わたしはいつでもいいし、キリアちゃんもいいと思うけど、アキナちゃんは最近忙しくしているから都合を聞かないといけませんね」
「そうだな。
これからアキナちゃんのところに行って都合を聞いてくる」
アキナちゃんはトレーディングルームにいると目星をつけていったところやはりトレーディングルームの中にいた。そこでアキナちゃんに明日から週末にかけての都合を聞いたところ、
「アスカ3号にトレードを任せておくので大丈夫なのじゃ」
パチパチパッチーン!
「フッフッフッフ」
アキナちゃんがそう言うなら大丈夫なのだろう。
アキナちゃんの後キリアを見つけて、明日からダレン南ダンジョンの大空洞の探索を再開しようと言ったら、喜んでいた。




