第386話 仕事始め2
コタツに入って、いろいろ考えているうちに、親父に、先にボケてしまったことを詫びて、……。
「岩永さん、そんなところで寝てると岩永さんでも風邪をひきますよ。いくらヒールポーションで治ると言っても体に良くありませんよ」
華ちゃんの声が聞こえるが姿は見えない。
俺って寝てたの? 目を開けると華ちゃんがコタツの脇に立っていた。
「おー、いやな夢を見た。
若年性で逝ってしまった夢を見たんだ。何も思い出せなくなってしまって焦ったー」
「目が覚めた以上、思い出せたんでしょう?」
「えーと、何を思い出そうとしていたのか思い出そうとしてたということを思い出した!」
「?」
「風呂に入ってくる」
俺はコタツから出て風呂場にいき、風呂の用意をしてそのまま風呂に入った。
「思い出した!」
風呂に入ることで全てを手に入れた俺は復活を果たした!
風呂から出た俺は、ブラウさんからもらった視察先希望リストをエヴァに渡しておいた。
エヴァは風呂に入る前にすぐにリストを複合プリンターで読み取り、メールに添付して外務省に送った。
すぐに外務省から了承した旨の返信があったようだ。
夕食時にみんなに高級なヒールポーションを渡しておいた。親父には何本かヒールポーションを以前渡していたが、念のためその日のうちに親父にもヒールポーションを届けておいた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
宮殿へ出勤した翌日の今日は週初なのだが、お役所は正月休みで防衛省での会議は翌週から始まることになっている。で、翌週の週初は祝日なのでその翌日が今年の最初の会議となる。
俺の方は、せっかく発電機が手に入ったことだし、アスカ2号という強力な電気工事屋さんも養成しているので、エヴァと相談して、エヴァが経営するダレン北ダンジョンの第10階層にあるダンジョン宿舎を近代化だか現代化することにした。
内容は、130キロワットのゴーレム発電機を設置したうえ、各部屋への電気照明の取り付けと厨房設備の現代化だ。客室にはコンセントを取り付けないが厨房には各所にコンセントを取り付けることになる。
電気工事用の資材はコアルーム脇のアスカ2号用の作業室に一揃い揃えていたので、それを俺が必要量まで増やして工具などと一緒にアイテムボックスに収納し、ダレン北の第10階層にあるダンジョン宿舎に運び込んだ。一緒にエヴァとアスカ2号、作業の手伝いにアスカ1号を連れていった。
俺は資材などを下ろして作業の様子をしばらく見た後、あとはアスカたちに任せて、エヴァを連れて屋敷に戻った。
使用中の客室に入って工事を勝手にすることはできないので、全室照明の電化には時間がかかるかと思ったが、部屋の照明を明るく便利にするため工事するとアスカが説明したら快く部屋の中に入って作業することができたそうで、翌日工事の進捗を確かめにエヴァを連れて宿舎に跳んでいったら、発電機の設置、分電盤の設置、宿舎内の配線と電気照明の取り付け作業は完了してた。
作業完了後、宿舎の従業員も宿泊中の冒険者たちも、ボタン一つで室内がライトの魔法以上に明るくなり、ボタン一つで暗くなることに驚いていたそうだ。
その日、エヴァと一緒にホームセンターで仕入れた大型電子レンジ、IH対応のフライパンや鍋を厨房に持ち込んだ。使用法はアスカ2号が従業員に教えたうえ、白いプラスチックの板にマジックで書いたものを厨房の壁に貼っている。ちなみにアスカ2号が書いた文字は印刷したようにキッチリとした文字だった。
ニューワールドの住人は魔法に接する機会があるが、火がないのにもかかわらずフライパンや鍋が温まったり、料理だけがあっという間に温まることに従業員は相当驚いていた。
厨房現代化の本当の主役は業務用冷蔵庫とそれに見合った厨房器材なのだが、そちらは納品に1週間ほどかかるそうで、俺がマンションの駐車場にトラックで運ばれてくる器材を、トラックを帰してから収納して運ぶことにしている。器材の据え付けなどはアスカたちを使うから間違いないはずだ。
ダンジョン内は地上に比べると電化しやすいので、その気になればダンジョン内の方が、地上より格段に住環境が整ってくる。
「エヴァ、こうなってくると、宿舎を増築したくなるな」
「そうですね。いつも宿舎が満員なので大きくしてほしいと冒険者たちが言っているようですから」
「来たついでだから、いつでも工事できるよう空洞を拡幅するだけ拡幅しておくか」
「お願いします。あとはわたしの方でできます」
「了解」
宿舎近くの空洞の岩壁を収納して奥行き20メートル×幅40メートルほど拡幅してやった。これでエヴァがマーロン建築にでも発注すれば宿舎は増築できる。従業員の補充についてもエヴァに任せておいて大丈夫だ。
ダンジョン宿舎がレベルアップしていく中、アキナちゃんの発注専用パソコンだかワークステーションが証券会社から提供され、業者の手によってマンションの一室に据え付けられた。
発注専用パソコンは専用回線につながっている。屋根裏部屋に置いていたアキナちゃんのハデハデパソコン一式もこちらに運び入れたので、立派なトレーディングルームになった。そしてでき上ってすぐアキナちゃんに渡していたダンジョンガールズ風3人ユニットのゴーレム9体が床の上に並べられていた。
「フッ、フフッ、フフフッ」
アキナちゃんはご満悦で発注用のパソコンのキーボードを叩いている。
「週5日で1年は250日。祝祭日を年間10日とすると勝負できるのは最大で年間240日しかないのじゃ。1日10億稼ぐとして、最低でもこの1年で2千億は稼げるはずじゃが一心同体の活動もせねばならぬから忙しいのじゃ!」
アキナちゃんは独り言を言いながら指先を力強く動かし、
パチパチパッチーン!
1年で2千億は稼げると言っているのは相場の神さまとなったアキナちゃんだ。来年の今頃は3千億くらい儲けていそうだ。
「そうじゃ! アスカ3号が暇なときにはわらわに代わってトレードさせておけばいいか。相場の上げ下げだけ教えておけば、アスカ3号でも十分なのじゃ。フフッ。
これ、アスカ3号はおらぬか? ……」
アスカ3号の業務に支障がない範囲で、好きに使ってくれ。アスカ3号に俺からも言っておくから。おっと、これは忘れないように、メモ、メモ。
トレーディングルーム:本来ゼンジロウの発音と思考ではトレーデングルームなんですが、あまりにかけ離れているのでトレーディングルームとしています。




