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岩永善次郎、異世界と現代日本を行き来する  作者: 山口遊子


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第377話 年末温泉旅行7、夕食からサウナ


 さんざん日本酒を飲んでいい気分になったころにはお皿の上の料理もだいぶなくなっていた。


 さすがにお腹をさすっている者はいなかったが、アキナちゃんを除いて背中を座椅子の背もたれにあずけている状態だ。


 何度か飲み物を頼んだ時に空になった皿などは下げてもらっているので、アキナちゃんの前にはほとんど何も残っていなかった。アキナちゃんは食べるものがなくなってキョロキョロし始めた。


 今日はご飯物は温かくないとおいしくないそうで、ご飯を食べる時には電話してくれと言われていたので、持ってきて貰うよう電話したところ、すぐに届けられた。


 各人の前に小型の土鍋と香のもの、それに汁物が置かれた。土鍋の蓋を開けたら、中身はカキの炊き込みご飯で、ふっくらしたカキが4つ5つ出汁の利いていそうなご飯の上に乗っかっていた。小さなしゃもじで自分で茶碗によそって食べるようだ。汁物はなめこの赤だしだった。


「うーん、いい香りなのじゃ」


 アキナちゃんがしゃもじでカキの炊き込みご飯を掬って茶碗に入れ、幸せそうに箸でカキ1つ摘まんで口に入れた。


「プリプリじゃ。プリプリ。フフ、フフフフ」


 アキナちゃんはカキの炊き込みご飯を土鍋から掬ってあっという間に全部食べてしまった。


「やっとお腹が落ち着いたのじゃ」


 おいしくたくさん食べられることは幸せだ。


 最後はデザートだ。これは、電話したわけではないが、ご飯が届けられた後、10分くらいして届けられた。どこかに監視カメラがあるのでは? と思われるほどのタイミングの良さだった。


 今回は、ミントの緑の葉っぱが添えられたバニラとイチゴとチョコレートの3色アイスクリームがデザートだった。


 感想はひとこと。濃厚だった。



「いやー、食ーた食ーた。これだけ食ーたのは何年振りじゃろ? っと、思い出えた。しんなに昔じゃのうて、つえこのあえだ善次郎の家でウナギを食ーたんだった。ハハハハ」


 親父も腹いっぱいになったか。俺でさえ腹いっぱいなんだから当たり前か。


 締めとして、みんなにヒールポーションを渡して、みんな揃って一気飲みした。なぜかアキナちゃん一人すくっと立ち上がって片手を腰に当ててポーションを飲んだのだが、どうも風呂から上がって飲んだ牛乳のドリンクポーズのつもりらしい。


 食事が終わったことを電話したら、すぐに仲居さんが2名やってきて、座卓の上を片付けて、布巾できれいに拭いた。


「お布団の用意はいかがします?」


「もう布団を敷いてもらうかな。

 何人ずつ寝るかな。俺と親父はこっちの部屋。女子たちはあっちの部屋で8人だと狭いか?」


「お客さま、10人までなら一部屋に布団を敷けますよ」


「わらわはゼンちゃんと爺と同じ部屋で寝るから、こっちの部屋じゃ」


「じゃあ、わたしもこっち」「「わたしも」」


 結局前回と同じ感じで、こっちの部屋に俺と親父と子どもたち5人。隣りの部屋にはるかさん以下3名ということになった。


「そういうことでお願いします」


「かしこまりました」


 いったん部屋の隅に立てかけて置かれた座卓は、ちゃぶ台と一緒に部屋から運びだされて、すぐに部屋の中に布団が運び込まれ、3組と4組に2列に並べらべて布団が敷かれた。


 隣の部屋も布団が敷き終わったようではるかさんたちは隣の部屋に移動していった。


 俺と親父が部屋の一番奥に並んで寝て、その横にキリアとオリヴィア、俺の頭の上にアキナちゃん、その隣にエヴァとイオナ。


 時刻はまだ8時過ぎ。


「親父、風呂に入ってこないか?」


「そうだな。騒動のおかげでまだサウナに入っちょらんしな」


「アキナちゃんたちはどうする?」


「わらわはもう寝るのじゃ」


「わたしも」「「わたしも」」


「じゃあな。みんな忘れず歯を磨いて寝るんだぞ」


「「はい」」



 俺と親父は子どもたちを残して、再度風呂場に向かった。


 水色の暖簾をくぐると、脱衣場には結構な人がいた。


 俺たちは、裸になって手拭いを持って浴場に入っていき掛湯をしてからまずは一番広い岩風呂に入った。


「気持ちええなー」


「そういえば、親父、裏山のダンジョン周りの開発はどんな具合だ? 春にはオープンするんだろ?」


「うん、ええ塩梅に大きなビルもでき上って来とー。新しえ広え道もできちょーし、冒険者用のアパートなんかは町に何軒も建てちょー」


「そうなんだ。車で簡単に通えないような中途半端に遠方の冒険者を当て込んでるんだな」


「そげなことだな。町でもアパートを作っちょーけんな」


「今のところ冒険者の上げた利益には税金がかからないから、町の税収に直接は関係ないだろうけど、人が増えれば町は潤うよな」


「そうはえってもな。よそ者が大勢やってくーことを嫌がり者も多えけんな」


 田舎の文化は都会とは違うし、習慣も違うわけだからトラブルが起こらない方がおかしいものな。都会人以上に文化習慣の違う外国人の冒険者もやってくるだろうし。


 しかも冒険者は、相手がモンスターといえ戦いを本業とする連中だ。カタギの人間はそんな連中にかかわりあいたくいないというのも理解できる。マナーのなっていない冒険者はダンジョン経営にとって百害あって一利なしなので、退場してもらえればありがたい。


 そういった連中を摘まみだせる仕組みがあればいいが、いくら俺がダンジョンマスターでも難しいよな。


 いままで、日本のダンジョンの中で犯罪が起きたとは聞いていないが、犯罪は起こると思って間違いない。来年の4月には全国32あるダンジョンが全部稼働し始めるわけだから、何か手を打った方がいい。


 単純に考えて治安の維持、強化は警察力の強化だよな。アスカ並のゴーレムはそうそう数を揃えられないが、ある程度レベルの高いゴーレムをダンジョン警察用に作ってもいいかもしれない。そのゴーレムにビデオカメラを着けておけばいろいろ役に立つような気がする。


 しばらくそうやって、頭を使ったところで、


「親父、そろそろサウナに入るか?」


「そうじゃな」


 二人して岩風呂から上がってサウナに入ったところ、さすがにあの二人はいなかったが先客が5名ほどいた。10人ほどは入れる感じのサウナなのでぎゅうぎゅう詰めにはならないが、先客に迷惑にならないよう少し小さくなって親父と並んでバスタオルの敷かれた長椅子に座った。


「5分ぐらいがんばるか?」


「そうだな」


 目の前の12分時計を睨みながら5分間ガマンして、すぐに親父と二人サウナから撤退した。俺たちが入る前からサウナに入っていた5名は俺たちがサウナを出た時にはまだ誰も出ていなかった。


 この旅館に泊まっている連中はどれだけサウナが好きなんだ? こんな調子だと、近いうちに第2のおじさんズが現れるぞ。



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