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岩永善次郎、異世界と現代日本を行き来する  作者: 山口遊子


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第376話 年末温泉旅行6、夕食

前話、2023年3月5日22時50分。おじさんズが紹介もしていないのにオリヴィアのことを知っていたとか、内容がおかしかったので修正しました。


 助けたおじさんたちには驚かされたが、誰でも生きていればこういったことも可能性だけはあるだろう。


 そうこうしていたら、


『失礼しまーす』と、部屋の外から声がかかった。知らぬ間に夕食の時間になっていた。


「はい。どうぞ」


 部屋の中に仲居さんが入ってきた。


「失礼します。

 お食事の用意を始めます」


 俺たちは邪魔にならないように、窓際の部屋に移動した。


 座卓の上が布巾できれいに拭かれて、仲居さんの一人が、


「これから料理をお持ちしますが、お飲み物の方はいかがいたしますか?」


「親父はビールでいいか?」


「ああ」


「まずはビールを2本、いや親父もいるから3本、グラスは4つ。ソフトドリンクは、えーと」


 ソフトドリンクはめいめいで頼んだ。


「かしこまりました。

 今日のご飯はカキの炊き込みごはんなんですが、温かいものをお持ちしますので、ご飯をお食べになる時は呼び出し電話でお知らせください」


 そう言って仲居さんは部屋を出ていった。


 それから、5分ほどして、


『失礼します。お飲み物とお料理をお持ちしました』


 そう言って今度は二人の仲居さんが部屋のふすまを開けて、小さなちゃぶ台を座卓の脇に置いてその上に飲み物とグラスの乗った大きな盆を置いた。


 そのあと、二人は部屋の外から次から次へと料理を運び入れ座卓の上に並べていった。


 座卓が料理で埋め尽くされたところで、


「みなさま、お席にお着き下さい」


 屋敷での席順は、


 エヴァ アキナちゃん 華ちゃん はるかさん リサ  

 

 オリヴィア キリア  イオナ   親父   俺



 飲み物が配られ、俺たちビール組の4人には、仲居さんがグラスに注いでくれた。


 今回も、前回とほとんど同じメニューで、ちゃんとアワビの踊り焼きがあった。


 仲居さんは説明しながら鉄板焼きの下の固形燃料に火を点け、


「なにか御用がありましたら、そちらのお電話で客室係と書かれたボタンを押してください」


 そう言って仲居さんたちは部屋を出ていった。



「まずは乾杯だ」


「カンパーイ!」


「「カンパーイ」」


「それじゃあ、いただきます」


「「いただきます」」



 まずは刺身だな。


 刺身を箸で摘まみ、ビールをゴクゴク。


 煮物を摘まんで、ゴクゴク。


 最近ビールを飲む機会が増えたのかもしれないが、妙にビールが進む。俺のグラスが空になったところで。向かいに座るリサが「どうぞ」と、言って俺のグラスにビールを注いでくれた。みれば、リサのグラスの中身もだいぶ少なくなったので、俺が注いでやった。親父のグラスにははるかさんが注いでやり、はるかさんのグラスには親父が注いでやった。


 内輪で飲む分には、お酌は面倒といえば面倒かも知れないが、これもコミュニケーションの一つだし、こうやってお酌をしてもらえばお酒がさらにおいしくなる。ような気もする。


 ビールがあらかたなくなったところで、


「それじゃあ、日本酒にいくか」


「おお、ええねー」


「はるかさんとリサは?」


「わたしも」「わたしも」


 ちゃぶ台の上に置いてあった飲み物のメニューから、俺は床の間の脇に置いてあった電話で客室係を呼び出して、


「田〇の大吟醸2合を三つ、お猪口ちょこは4つで」


 前回〇4代を飲んだので、今日はこっちにしてみた。


 ソフトドリンクの追加はまだいいようだ。


 アキナちゃんが静かだと思ったら、目の前にアワビの入った土鍋を動かして、アワビがゆっくりうねっているのを眺めていた。アワビを眺めながら、他の料理を器用に食べていた。アワビのうねりがアキナちゃんの琴線に触れたようだ。



「失礼します」とすぐにお酒が届けられたので、日本酒組4人でお互いにお酌をして、


「さーて、どうかな?」


 ……。


「おっ! こらぁうまえ」


「「おいしい」」


 うまいな。さっぱりした飲み口。さっぱりしすぎると物足りないところも出るものだが、これは違うな。癖のない酒だが癖になる。ダンジョン牛と同じでこれも習慣性があるかもしれない。


 気付けば手酌で3杯ほど飲んでいた。まずい。


 と思ったら、親父も、はるかさんも、リサまで手酌で飲んでいた。コミュニケーションがなくなってしまったが、これもまたよし。


 そうこうしていたら鉄板焼きの固形燃料が小さくなってきた。牛肉と付け合わせの野菜にしっかり火が通っていた。前回は霜降りの牛肉だったが、今回は赤身だ。


 小皿のタレにちょっとつけて口に運んで食べてみたところ、


「あっ! これはダンジョン牛の赤身だ! 間違いない」


「どれどれ、儂はダンジョン牛はまだ食ーたことがなえんじゃ。

 ……。これもうまえ!」


 親父もこの味にはまってしまうのか。いちおう親父は資産家だからダンジョン牛で身上しんしょうを潰すことはないと思うが。


 日本酒を飲みながら、料理を摘まんでいたら、アワビの踊り焼き用の卓上ガスコンロのつまみを回してカチャリと火がつく音が聞こえてきた。アキナちゃんも火をつけたようだ。俺も波に乗り遅れないように火をつけて、親父のコンロにも火をつけてやった。


 気付けば、日本酒の入っていた2合入りのガラスの入れ物が3つとも空になっていた。ちょっとピッチが速いような気もするが、俺たちにはヒールポーションという強い味方がある。今日は年の瀬、ヒールポーション前提で羽目を外してもいいだろう。


 ということで、今度は2合を4つ。ソフトドリンクも追加で頼んでおいた。



 すぐにアワビが盛大に踊り始めた。ソフトドリンク組の方から、


「オーーー!」「ウワーーー!」とか声が聞こえてくる。


「オーー。アワビがかわいそうなのじゃー。美味しそうなのじゃー、感謝して食べてやるのじゃー」


 命を感謝しておいしく頂くのが俺たちの義務だよな。


「そろそろ、10分だから、アワビをひっくり返していいんじゃないか。動かなくなったら火を止めてフォークでしっかり押さえてナイフで食べやすい大きさに切ればいい」


 俺もアワビをひっくり返して、しばらくして動かなくなったところを、さっそくナイフで切り分けて口に運んでみた。貝特有の磯の風味とバター醤油の香りが鼻孔と舌の上に広がる。


 うーん。トレビアーン!


「うまえ!」


 俺は親父の言葉にわれに返った。


 何を食べてもおいしく感じる今日この頃。何を食べてもおいしいようでは美食家とはさすがに言えないだろう。しかし、最近食べているものは間違いなく美食だ。





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― 新着の感想 ―
[一言] 幸せ気分で家族と囲む食卓こそが最高の調味料ですよね
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