第365話 ゼンジロウ1号2
屋敷でフラフラして時間を潰していたら、1時間経ったのでコアルームに跳んでいった。
ちゃんとゼンジロウ1号はコアルームの床に立ち上がっていた。心配していた鼻は潰れていなかった。
「マスター、完了しています」
「サンキュウ。
それじゃあ、ゼンジロウ1号、アイテムボックスに収納する。屋敷に帰ったら屋敷のみんなに紹介するから」
「はい」
ゼンジロウ1号を収納して、屋敷に帰ってコタツに入ってしばらくしたらエヴァが昼食の準備ができたと知らせに来てくれた。
「「いただきます」」
昼食を食べながら、
「年が明けたら、オストランから視察団を日本に出すんだけど、視察団が視察を終えて帰ってきたら、今度は日本から視察団がオストランにやってくるんだよ」
ここまではおそらくみんな知っている話と思う。
「日本の視察団はオストランの王さまに謁見したいそうなんだよ」
「えーと、善次郎さんが謁見じゃなくって、えーと引見するってことですよね?」と、はるかさん。
「うん。そうなんですよ。
そのときは、玉座から離れてもいるだろうし、こっちの言葉で話をすれば、この国の王さまが日本人とは思わないんじゃないかと思うんだけど」
「顔を見れば日本人ですし、この国の王さまの名まえはゼンジロウということはすぐわかるんじゃないですか?」
「そうかもしれません。
まっ、それでも相手は視察団なので何とかなるかなーって」
「はあ」
「そっちは何とかなったとして、華ちゃんから聞いてるかもしれないけど、春になったら、オストランの国王を国賓として招待したいそうなんですよ」
「国賓というと一番上等な待遇でしたっけ?」
「宮中で晩さん会とか総理大臣と会食とかあるようなんです」
「うわっ!」
「それはパスしたいけどさすがにパスできないから、いいことを思いついたんです」
「それは?」
「アスカたちは、言葉もバイリンガルだし、ダンジョンの外でも活動できて、しかも自分で学ぶことができる、人間と区別できないというか人間を超えたような超高性能ゴーレムじゃないですか」
「はい」
「それなら、俺そっくりの高性能ゴーレムを創ってしまえば、俺の影武者になるんじゃないかって思いついたものだから、午前中コアのところにいって、高性能ゴーレムを創ってきました」
「影武者ゴーレムですか?」
俺は席から立ち上がり、テーブルの横に移動して俺の隣りにゼンジロウ1号を取り出した。
「そう。
出でよ、ゼンジロウ1号」
「「おおー」」
「「お父さんと全然区別できない」」
「お父さんよりカッコいいかも?」「イオナ、思ったことをなんでも口にしちゃダメ」
「ゼンちゃんとは明らかに違うであろう」
「どこが?」
「オーラじゃよ、本物にはわらわの加護が付いておるのじゃ」
「何にも見えないよ」
「なんと! ゼンちゃんの神々しいまでのオーラがエヴァたちには見えぬというのか?」
「「うん」」
「まさか、わらわのオーラも見えぬことはあるまいな?」
「「全然見えないよ」」
「なななな、なんと! 初めて知ったのじゃ!
もしかして、華ちゃんたちも?」
「うん、全然見えない」
「ごめん、アキナちゃん」
「ごめんなさい」
「そうであったのか。わらわの神々しさを目の当たりにしていなかったとは、なんともかわいそうな話じゃが、見えぬものは仕方がない。
ということは、本物のゼンちゃんとゼンジロウ1号との区別はゼンちゃんとわらわ以外つかないのじゃな」
「じゃないかなー」
「フフ、これは良いことを聞いた」
「うん?」
「何でもないのじゃ。フフフ」
「まあ、俺とゼンジロウ1号の区別が直接できなくても、ゼンジロウ1号はアイテムボックスを使えないし転移もできないから、そこで区別できるはず。だけど、十分影武者として通用するな」
「岩永さん、あしたの記念式典にゼンジロウ1号を使うつもりですか?」
「さすがに、明日の記念式典は俺が国王になったことを正式に発表するというし、春に行われる俺の戴冠式にはちゃんと俺が王さまを務めるよ」
「ということは、それ以外の時は?」
「せっかく創ったわけだし、それ以外の式の時くらいはな」
「宮中での晩さん会とかゼンジロウ1号に任せるんですか?」
「そのつもりで創ったんだけど。
あっ! マズい。ゼンジロウ1号は今のところ飲み食いできなかった。
咀嚼して腹の中にためるように改造が必要だ。忘れないうちに改造してしまおう」
「ゼンちゃん、ゼンジロウ1号じゃが、まだ何もしゃべっておらんのじゃが、声はどうなんじゃろ?」
「そういえば、俺も『はい』くらいしか聞いてなかった。
ゼンジロウ1号、みんなに自己紹介してみろ」
「はい。
ゼンジロウ1号です。皆さんよろしく」
「ゼンジロウ1号、あいさつはたったそれだけなのか?」
「はい」
「声だけでは全く区別できないほどそっくりじゃった。
ゼンちゃん、あいさつがこれくらいあっけない方がゼンちゃんらしくていいのではないか?」
「俺ってそうなの?」
アキナちゃんは別として、誰も俺の問いに下を向いて答えなかった。
「まあいいや。本番までゼンジロウ1号をどうするかだな。ゼンジロウ1号は造ったとき俺の記憶を受け継いでいるけど、出来上がったあとは別々だから、いつも俺の後ろをついて歩かせて、同じ記憶を持つようにしないと、他の人との会話がチグハグになるよな」
「岩永さん、どうやって岩永さんの記憶をゼンジロウ1号が受け継いだのかわかりませんが、あとからでも記憶や知識をアップデートできるんじゃないでしょうか?」
「それもそうだな。
俺の出たくない式の前日にコアルームに行って忘れずにアップデートすればいいや」
「しかし、そういうところダケはゼンちゃんは頭が回る」
「さすが、お父さんです」
「キリア、別に褒めたわけではなかったのじゃがな」
「えっ!? そうだったの?」
「そうだったのじゃ」
「そういえば善次郎さん、国賓とかになるとファーストレディー同伴じゃないですか?」
「王さまが独身なんだからファーストレディーは要らないんじゃ?」
「独身なら仕方ないか。
とはいえ、善次郎さん」
「はい」
「善次郎さんの場合、聖剣を抜いて王さまになったわけですから、いわば新王朝。
王さまというのは、お妃さまを娶って、跡継ぎを残すのが一番大事な仕事じゃないですか?」
「プファッ。
いやいや。この国の場合は、聖剣を抜いた者が王さまになるわけですから、血筋はそれほど大切じゃないでしょう」
「確かに」
「ハナちゃん、お妃の話になったら急に下を向いたようじゃが、どうしたのじゃ? 何か言いたいことがあったのではないのか? ホレ、ホレ、言うてみよ」
「なっ、何もないです!」
「ヒャッヒャッヒャッヒャ」
アキナちゃんがわけのわからないヒャッヒャ笑いを始めてしまった。




