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岩永善次郎、異世界と現代日本を行き来する  作者: 山口遊子


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第361話 それぞれのクリスマスイブ


 アキナ神殿の大神官たちを都に届けた翌日。



 エアコンについてはアスカ3号が昨日のうちに発注してくれている。アキナちゃんのトレード関係では、発注量制限と建玉制限は大幅に緩和されたうえ、年明けになるが、発注専用端末を設置し専用回線も引いてもらえることになったとエヴァから聞いた。



 大きな箱を抱えたアスカ3号がやってきて、


「マスター、日本ではクリスマスイブにはデコレーションケーキを食べる風習があるというので、ケーキを注文していました」


「アスカ3号、気が利くじゃないか。これからもそういう感じで頼むな」


「はい、マスター」


 今日はクリスマスイブだったのか!


 季節感もほとんどなく生活している俺は、みんなへのクリスマスプレゼントの用意を当然のごとく失念していた。


「アスカ3号。俺はこれから、クリスマスプレゼントを見繕ってくるから出かけてくる」


「はい、マスター。昼食はどうされますか?」


「時間がかかるかもしれないから、食べていてくれとみんなに伝えてくれ」


「はい、マスター。みなさんに伝えておきます」



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 ダンジョン・アニマルと呼ばれる、ブタやニワトリ、七面鳥などがダンジョンで発生するようになった代わりに、これまでのモンスターが1、2階層ではほとんど現れなくなった。


 その結果、にわか冒険者、休日冒険者の数が急激に増加した。


 足立たち勇猛果敢の3人も他の中堅冒険者たち同様、そういった冒険者たちに押される形で、活動階層を下げ、最近は5階層で活動していた。


 足立たちにとって、5階層といえどもモンスターやダンジョン・アニマルを斃すこと自体は容易なので、そのぶん成果は大きくなっている。ここのところ彼らがレンタルするフィギュアモンスターはフィギュアゴーレム3個、フィギュア大蜘蛛1個である。


 以前、冬休みに入ったら速攻で宿題を済ませて、それからダンジョンに入ろうと話していた3人だが、昨日の終業式の後3人で図書館に集まって宿題に取り掛かった。冬休みの宿題自体が少なかったこともあり、少し遅くなったがその日のうちに宿題を終わらせてしまっていた。


 冬休み初日の今日のクリスマス・イブは足立たち勇猛果敢の3人は、朝8時に装備も含め準備を整えダンジョン前に集合した。



 ピラミッドのある入り口から5階層に下りるだけでも、2時間近くかかるため、行き帰りだけでも4時間かかる。そのためダンジョンでの実質活動時間は4時間ほどしか取れないのだが、5階層の枝道に入ってしまえば、30分に一度はモンスターなりダンジョン・アニマルに遭遇するので彼らは満足している。


 3人は雑談しながら第5階層に向かう本道を歩いていた。足立は本道を歩く冒険者の数がいつもよりやはり少ないような気がした。


「クリスマス・イブで予想通り冒険者の数が今日は少なそうだな」


「そうだな」


「こうやってイブの日もダンジョンの中を歩いていると、青春だなーって感じがするよな」


「足立、面白いこと言わないでよ」


「足立、どこかに遊びに行きたかったのか?」


「そういうわけじゃないが、高校2年のクリスマスはたった一度なんだなー。って、ちょっと思っただけだ」


「それを言うんだったら、毎年毎年、その年のクリスマスは一生に一度だけだぜ」


「さらに言えば、毎日毎日、一生に一度よね」


「なんだか、二人とも夢がないところが仲がいいな」


「まあ、こうやって3人で好きなことやっているわけだから、これはこれで青春なんじゃないか?」


「そうそう、これも青春なのよ。

 ねえ、話かわるけど、今回の期末テストわたしたち3人とも成績よかったじゃない」


「そうだったな。成績表も今までで一番良かったと思う」


「俺もだ」


「わたしもなの。

 思うんだけど、ダンジョンの中に入ってモンスターなんかと戦っていると頭が良くなるんじゃないかな? ほら、ゲームなんかだと経験値が貯まってレベルアップするような感じで」


「ゲームと違ってはっきりと表示されたりアナウンスされるわけじゃないから分からないけど、気付かない間にレベルアップしてるのかもな。

 人間にレベルがあるかどうかわからないけど、火野の弓術スキルは上がっているかもしれないぞ」


「そうかな。実感はないけど、もしそうなら嬉しいわ」


「どこかでそういったことが分かるアイテムって落ちていないかな?」


「web小説なんかじゃ鑑定スキルとかデフォルトで主人公は持ってるんだけどな」


「あれば便利だものね」


「後欲しいのはアイテムボックスだよな」


「アイテムボックス欲しい」


 ……。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 こちらは、クリスマスイブのグリーンリーフの3名。彼らはフィギュアゴーレム3個とフィギュア大蜘蛛6個を通常持ち歩いて、状況によってメタルモンスターに戻している。


 フィギュアゴーレムの3個は、荷物運びにも使うのだが、それよりも階段を守るボスモンスターに出会った時のために持ち運んでいる。第16階層から17階層に下る階段の前にいたボスモンスターはメタルゴーレム3体の力技で斃している。


 現在彼らは第1ダンジョンの15階層に前進基地を置いている。前進基地には食料や着替えなどの消耗品を置いており、フィギュア大蜘蛛2個をメタル大蜘蛛に戻して警備させている。


 一心同体が20階層に到達してだいぶ経つが、グリーンリーフは現在第19階層で第20階層への階段を探していた。


「今日はクリスマス・イブだったわね」


「そうだね」


「基地に戻れば、ケーキがあるよ」


「茜さん、ケーキ持ってきたの?」


「うん。買ってから3日も経ってるけど、大丈夫と思うよ」


「そろそろ、階段を見つけたいよね」


「しかし、この広いダンジョンで一心同体はどうやって簡単に階段を見つけたんだろう?」


「何か、そういったスキルがあるのかも?」


「そうね。わたしの探検レベルは3だけど、一心同体の中に探検のスキルレベル4の人がいるかもね。わたしはあの白い防具を着けていた子じゃないかと思うんだけど」


「一心同体がどうであれ、実際のところわたしたちにどうすることもできないから、気にしても仕方なかったわね」


「地道にいきましょう」


「うん。そうだったね」


 ……。


 一葉はスキルにより、目の前の扉には罠はかかっていないことが分かった。


 初見の扉にはたいてい罠が仕掛けられているのだが、こうして罠のない扉がある。おそらく一心同体が罠を解除したことで罠がかかっていないのだろう。そういう意味では階段に向かっている可能性は高い。


「じゃあ、この扉を開けるわよ」


 一葉がゆっくり扉を開けると、その先には30メートル四方の石室で、扉の向こう側には下り階段が見えた。


「やっと、見つけた」


「モンスターはいないな」


「罠もかかっていなかったし、一心同体が片付けてからまだ湧いていなかったようね」


「階段を下りてみる? 話によるとこの階段、300段あるそうよ」


「ここまできた以上、下りてみましょう。

 行き帰りで600段はきついけど、これで今回の探索は終了だから頑張りましょう」


「がんばろー!」


「エイ、エイ、オー!」




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