第359話 再び大空洞
俺たちのダレン南ダンジョンのコアを見つけるため、俺たちは楽園の台座の上に31個の大金貨を置いて、ピョンちゃんの後を追い31個目の階段を下りていった。
こう言うと、何を言っているのか意味不明だが、そういうことなので仕方がない。
「特別な階段だと思ってはいたが、やっぱりこの階段は300段ありそうだな」
「そうみたいですね。
いまのところ150段下りていますから、これは300段コースですね」
「キリアもアキナちゃんも、脚は平気か?」
「大丈夫です」「これくらいヘッチャラなのじゃ」
「華ちゃん、ああは言っているけど、スタミナの魔法をみんなに頼む」
「はい」
すぐに華ちゃんが自分も含めて全員にスタミナの魔法をかけてくれた。魔法の効かないアキナちゃんにはスタミナポーションを渡しておいた。
そこから予想通り150段ほど階段を下りて、俺たちは第何層か分からないが新たな階層に下り立った。
「ここも大空洞だったな」
「わらわはここが大空洞だと最初から分かっておったのじゃ」
200段を下りたところで俺もそんな気がしてたんだよな。250段くらいで階段の底が妙に明るく見えてたし。
「感じは、Zダンジョンの大空洞そのままだな」
「そうですね。というか、ここってZダンジョンの20階層ってことはありませんか?」
「それはないんじゃないか? コアがこっちのダンジョンのことを、一方通行で繋がっていると言ってたところを見ると、こっち側には干渉できないようだし」
「そうでしたね」
「お父さん、ここも下に下りる階段はかなり遠いんでしょうか?」
「ピョンちゃんの後をついていくしかないけど、どうせこの大空洞の真ん中あたりに階段があるんだろうから相当遠いだろうな。
昼までピョンちゃんの後についてゴーレム白馬とゴーレム列車で進んでみよう」
「「はい」」「そうじゃな」
ゴーレム白馬を3頭アイテムボックスから取り出し、ゴーレム列車の先頭車両を華ちゃん用に1台取り出した。俺のゴーレム白馬トルネード号はキリアとアキナちゃんのゴーレム白馬より一回り大きいので簡単に区別がつくが、キリアとアキナちゃんの白馬は全く区別はつかない。
「それじゃあ出発だ。
ゴーレム白馬、伏せ!」
「「伏せ」」「ゴーレム列車、伏せ」
全員がそれぞれの乗り物に乗ったところで出発。ピョンちゃんは華ちゃんの肩から飛び立って大空洞の中心がありそうな方向に飛んでいった。
そうやって1時間ほど進んでいたら、それほど広くない湖というか池が前方に見えてきた。
「あの池のほとりで、昼食にしよう」
池のほとりはうまい具合に下草が芝生のように生えていたので、そこにブルーシートを敷いて昼食にした。
昼食はいつもながらのハンバーガーとフライドポテトだが、久しぶりなので結構おいしい。
「太陽はないけど、天気もいいし、メシもうまい」
「気持ちいいですよね」
「ゼンちゃん、わらわは白身魚の入ったハンバーガーを所望なのじゃ」
「はいよ。
キリアと華ちゃんは?」
「じゃあ、わたしも白身魚のハンバーガーで」
「わたしは、チーズバーガーをお願いします」
華ちゃんに白身魚のハンバーガーとキリアにチーズバーガーを渡して、俺はチキンバーガーにしておいた。
「明日はアキナ神殿の連中を都に運ばないといけないから、ダンジョン探索はできないな。
アキナちゃんは、神殿の連中と一緒に都にいくのかい?」
「わらわは式の前の日くらいに爺たちと合流すればいいのじゃ」
「なら、みんなで式の前日に都にいくか。俺も当日何かひとこと言わなけりゃいけないらしいから、前日に向こうにいこうと思っていたからな」
「泊りはどうします?」
「アキナちゃんの部屋は神殿で取っているのだろうけど、今からじゃあ宿の予約はできないだろうな。いったん屋敷に戻るか、オストラン神殿で泊めてもらうか、あとは王宮の宮殿の中に部屋を用意させるかだな」
「気兼ねがないという意味では屋敷の方がいいですよね」
「そうだな。じゃあそうするか。式の当日、オストラン神殿に早めに顔を出そう。
しかしこの空洞もZダンジョンの大空洞並に広そうだよな」
「そうなると、ピョンちゃんが中心に向かっているとして2日はかかりますものね」
「そうだな。記念式典の前にはオリヴィアのピアノコンクールの結果も分かるし、今年はこれでダンジョン探索は最後だな。式典が終われば、すぐに熱海の旅館だし」
「熱海の旅館は楽しみじゃな」
「親父も来るんだが10人で二部屋。部屋割りをどうするかだな」
「お爺さんと、お父さんと、わたしたち4人とアキナちゃんで一部屋。
ハナお姉さんとはるかさんとリサ姉さんで一部屋」
結局キリアの言うようになりそうだ。部屋はもともと広いから7人でも何とかなるだろう。
昼食を食べ終え、アイスも食べて、しばらく青空に浮かぶ綿雲を眺めたりしてまったりしてから俺たちはゴーレム白馬とゴーレム列車に乗ってピョンちゃんの後を追って大空洞の中を進んでいった。
休憩を挟みながら3時間ほど進んでいったのだが、周りの景色はほとんど変化なかった。今日はこのあたりまでにしてそろそろ屋敷に戻ろうかと思ったところ、草が途切れ、その先に地面がむき出しになった場所が広がっているのが見えてきた。その地面からはわずかに煙が上がっていた。
いったん騎兵部隊を停止して、
「煙が上がっているけど火事のあとかな?」
「少し上って消えていますから煙というより、湯気では?」
「確かに湯気だな」
「温泉が湧いているのかも?」
「ダンジョンの中に火山活動などなさそうだけど、ダンジョンってふしぎ空間だから何でもアリだものな。
温泉が湧いているか、確かめてから帰ろうか」
そこから俺たちは、5分ほど進んでむき出しの地面地帯に入った。そこから先は地面は地面だったが、岩盤がむき出しになったような場所だった。岩盤の上をさらに5分ほど俺たちは進んだ。わずかだが硫黄臭くなってきた。
さらに進むと硫黄臭とともに湯気の立っている池が連なっていた。
「これじゃあ、どこかの温泉の地獄めぐりだな」
「地獄?」
「熱い湯や湯気を地獄に例えているんだ。ニューワールドにも地獄の言い伝えがあるか分からないが、生前悪いことをした人間が死後に行く場所だそうだ。地獄では生前の罪の大きさによって責め苦に遭うって言う話だ」
「ほう。ニッポンにはそういう言い伝えがあるのか」
「日本だけじゃないみたいだけどな」
「わらわたちには、そんなものはないな。死んだらそれでおしまいなのじゃ。じゃから生きているうちにしっかり生きていく。と、わらわの神殿にかぎらず、どこの神殿でも教えておるのじゃ」
「なるほど」




