第356話 週明けの会議での爆弾。推理
俺のイミフな話が一段落したところで外務省の世良事務官が話を始めた。
「それでは、外務省から報告いたします。
ニューワールドの公表ですが、年末大晦日を予定しています。
ダンジョンの探索を進めた結果、この10月に新たな出口をダンジョン内で発見し、その出口からダンジョン外に出たところ、新たな世界、ニューワールドを発見したとします。
新たな出口からその周辺を探検した結果、一帯はオストラン王国という名の文明国だった。
というシナリオです。
この段階では、名称以外、新たに見つかったダンジョンの出口の位置やオストラン王国を含めたニューワールドの情報は一切公表しません。
そして、年明け早々、1月下旬以降わが国との友好関係を深めるためオストラン王国より視察団が訪れ、日本各地を視察することになった。と、発表します。
ニューワールドの公表により国内は大騒動になるでしょうが、年末番組が吹き飛ぶ程度でピラミッドが現れた時ほどではないでしょう。年末年始は国内の外務省も防衛省も休みですし」
なるほど。興味本位のマスコミなんかに振り回されたくはないよな。
「オストラン王国から視察先の要望を受けていますので、外務省では、視察先の選定と移動、宿舎の手配などを行なっています」
なるほど。エヴァからの要望を受けてちゃんと動いているんだな。
「オストラン王国からの視察団を受け入れたあと、引き続きわが国からオストラン王国に視察団を派遣します。視察団はオストラン王国に入国後、オストランの国王陛下に謁見する予定です」
えっ! なにそれ? 聞いてない。
「こちらの視察団の帰国後、オストラン王国との国交樹立を4月を目途に国内外に発表する予定です。
オストラン王国との国交樹立の発表後、オストラン王国の国王陛下ないしそれに準じる方をわが国にお招きすることを外務省では考えております。
仮にオストラン王国の国王陛下がお見えになれば国賓ということになりますので、宮中での歓迎行事、陛下との御会見、宮中晩餐会、総理との会談および会食などが行なわれます」
えっ! なにそれ?
なにか妙な気配を感じて俺の隣りに座っている華ちゃんの横顔を見たら、目を細め口をへの字にしている。顔は真っ赤? 笑ってる?
えっ! なにそれ?
これどうするの? すごーくまずいぞ。
「外務省では、そのような形でオストラン王国対応を考えています」
俺は動転しながらも、布石を打つことは忘れず、
「先ほどのニューワールド公表のシナリオですが、実際に日本のダンジョンと向こうの世界のダンジョンがつながっているかもしれませんよ。
今は向こうの世界からこちらに一方通行だけですが、多くの人が望めば相互通行可能になるかもしれません。わたしの勘ですけどね」
布石になるかどうかはわからないが、少なくとも会議の出席者は俺の今の言葉を聞いているので、もし、そういうことが起こったとして、多くの人が願った結果と考える。かもしれない。
会議中、きっちりフィギュアゴーレムコマを受注数だけアイテムボックスで作ってはいる。ただ、60センチのゴーレムコマはあるがフィギュア化していないので、30センチのメタルゴーレムコマ用のフィギュアゴーレムコマを拡大して60センチ用のフィギュアゴーレムコマを作った。ちょっと誤差が出るかもしれないが、もしクレームが付いたらちゃんと作り直そう。向こうも大きさを確認して発電機に作り込むのだろうから、許してもらえるとは思う。
その日の会議そのものは『俺の勘です』発言で終了したので、ポーションと、フィギュアモンスターとフィギュアゴーレムコマを下の特設テントに卸して、梱包されていたゴーレム発電機3台を頂いて会議室に戻った。
「60センチのメタルゴーレムコマですが、直径で数ミリ誤差があるかもしれません」
「その程度の誤差は織り込み済みですので大丈夫です」と川村局長のありがたいお言葉があった。
安心して華ちゃんを連れて、帰ろうとしたら、野辺次長から、
「岩永さん、三千院さん。次回の会議は年が明けて12日の火曜を予定していますのでよろしくお願いします」
「了解しました。じゃあ、失礼します」
俺は華ちゃんを連れて屋敷に戻った。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
善次郎と三千院華が転移で会議室を去った後。部屋の中には川村局長と野辺次長だけが残っていた。
「野辺次長が残ってくれというからここに残ったが、なにかな?」
「局長、先ほどの岩永さんの話ですがどう思われます?」
「どの話だったっけ?」
「多くの人が望めば相互通行できるようになるかもしれない。というところです」
「ダンジョンのゆらぎの拡大、本道へのモンスターの不侵入そういったものは、われわれの要望だったわけだし、岩永さんの言うようにダンジョンはわれわれの希望を聞いてくれた結果じゃないのかね」
「局長、ダンジョンで分かっていないことは沢山あります。というか、分かっていることはほとんどありませんが、岩永さんの言葉を言葉通り信じていいのでしょうか?」
「信じるも信じないも、特に問題はないし。岩永さんの『予言』が当たらなくても、それはそれだろ?」
「もちろんそうなんですが、今回も岩永さんの『予言』が当たったらどう思います?」
「いいことなんじゃないか?」
「先日、山口某というweb小説家の小説を読んだんです」
「ほう」
「彼はダンジョン関係では第一人者と言われメディアにも露出しているような人なんですが、彼の小説の中で、ダンジョンの最深部にダンジョン・コアといってダンジョンの全てを創り出し、コントロールしている核が存在しているんです」
「それで」
「もちろんそれだけ大切なものですから、ダンジョンで最強のモンスターによって守られています。その最強モンスターを斃し、ダンジョン・コアに手を触れると、その者が、ダンジョン・コアの主、ダンジョンマスターになって、ダンジョン・コアに命令できるようになるんです。
例えば、出入り口を広くしろとか、階段間を結ぶ本道にはモンスターを入れるな。とか」
「野辺次長は、岩永さんがそのダンジョンマスターにでもなったと考えているのかい?」
「局長、先日一心同体は数日で20階層まで探索したじゃないですか」
「そうだったな」
「その後、探索は進めていないという話でしたが、コアを手に入れてそれ以上探索の必要がなくなったんではないでしょうか? 予想では国内32個のダンジョンは全て繋がっているわけです。ということは岩永さんが手に入れたのかもしれない、たった一つのコアによって創られたダンジョンかもしれません」
「岩永さんが国内すべてのダンジョンのダンジョンマスター?」
「以前の岩永さんの話だと、ゴーレムゴーレムしたゴーレムしか作れないということでダンジョンガールズの件が一度ペンディングになったものが、元のフィギュア通りのゴーレムができ上った上、今度はゴーレムコマです」
「なるほど。ダンジョンマスターとして、ダンジョン・コアにそういうものを創らせた。ということか。可能性はあるような。
うーん。
岩永さんが日本のダンジョン全てのダンジョンマスターだとして、われわれのできることというか、何か早急にしなければならないことはあるかね?」
「岩永さんのあの性格ですから、彼がダンジョンマスターなら喜ばしいことだと思います。
やんわりと、われわれの要望を伝えていけば、対応してくれるのではないでしょうか」
「なるほど。了解した。
話は変わるが、野辺次長、その山口某とかいう作家に接触して、使えるような男なら、これから使っていってはどうだ?」
「メディアに露出しているわけですから、こちらからある程度の情報を与えておけば、今回のような大きな発表に対する緩衝材にはなりそうですね」
「今回だけに限らずな」
「了解しました」




