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岩永善次郎、異世界と現代日本を行き来する  作者: 山口遊子


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第349話 インヴェスターA


 オストラン王国の将来についてローゼットさんにご高説を垂れた俺は、その後持ち込まれた書類にハンコをついたら、その日の仕事は終わってしまった。


『亭主元気で留守がいい』そのままで、ローゼットさんにことわって昼前に俺は屋敷に戻っていった。


 屋敷に戻ったら、時間が時間だったからリサは台所にいるのだろうが、居間には誰もいなかった。2階に上がったら屋根裏部屋から声が聞こえてきた。



 屋根裏部屋に上がってみると、アスカ3号がアキナちゃんのパソコンをセットアップしているところをエヴァ以外の子どもたちが揃って眺めていた。


「「お父さん、お帰りなさい」」


「ただいま」


「華ちゃんと、はるかちゃんは自分の部屋でパソコンをみておる。エヴァは向こうのマンションのパソコンの前じゃ」


 アキナちゃんのパソコン本体は床に置かれていて、机の上にはモニターが3個並んでいた。しかも、パソコンの筐体きょうたいはバカでかい上に、側面が透明で、内部で青い光がクルクル回っている。


「アキナちゃんのパソコンはずいぶん大きくてモニターも多いし、パソコンも派手なんだな」


「大は小を兼ねるのじゃ。パソコンの箱もきれいじゃろ?」


「アキナちゃん。確かにきれいだが、箱の中で青いのがクルクル回っているのは何か意味があるのか?」


「あれは、今パソコンの準備をしてくれているアスカ3号を励ましておるのじゃ」


「そうだったのか。知らなかった」


「ゼンちゃん、パソコンのことで分からないことがあれば、わらわに聞いてくれてよいのじゃよ」


「俺はパソコンを持ってないから今聞くことはないと思うけど、将来パソコンを買うことがあったら、その時は頼むよ」


「任せてくれてよいぞ。パソコンのことならどんなことでも、わらわにかかればチョチョイのチョイなのじゃ」


 頼もしいお言葉である。アキナちゃんにかかればパソコンが壊れても、片手ではたけば直ってしまいそうだものな。


 今現在、セットアップをアスカ3号に任せているところを見ると、自信とスキルにはまだ相当なひらきがあるようだ。



 俺は屋根裏部屋からそのまま1階まで下りて、ダンジョン経由でマンションにいってみた。


 玄関で靴を脱いで居間に入っていくと、エヴァがパソコンに向かっていて、キーボードをたたいていた。何をやっているのか覗いてみたら、メール?


「あっ! お父さん。お帰りなさい」


「ただいま。

 メール書いてたのか?」


「外務省の世良事務官にメールを書いてます。

 わたしのメールアドレスを教えるだけなので、内容はあいさつだけです。

 送信!」


 もうメールを使いこなしているのか、大したものだ。


「そろそろ昼食だから、手伝いに戻ります」


 そう言ってエヴァは居間から出ていった。


 お手伝いか。みんないい子だよな。


 俺もそろそろ帰った方がいいな。



 屋敷に戻って、しばらくしたら昼食の準備ができたとエヴァが居間にやってきて教えてくれた。


 食堂に入って席に着いて待っていたら、すぐにみんな集まったので、


「「いただきます」」


 オリヴィアのコンクールもそろそろなので『調子はどうだい?』と、聞こうと思ったが、プレッシャーになるようなことは言わない方がいいと思い、代わりに現在うちでトレンドのパソコンを話題にすることにした。


「みんな、パソコンの入門書はもう読んだのかな?」


「「1冊だけ読みました」」


「ちょっと難しかったけど、アスカ3号に分からないところを聞いたら分かりました」


「わらわは3冊のパソコン本を隅々まで(・・・・)読んで制覇しておるのじゃ!」


「アキナちゃんには難しいところや、分からないところはなかったんだ」

 

「分からないところは飛ばして読んだから、分からないところは何一つなかったのじゃ」


 分からないところを飛ばしたら、隅々まで読んだと言えないと思うのだが。分からないと認識できたということは、目だけは通したのかもしれない。


「そうか。アスカ3号もいることだしな」


 パソコンを使う女神さまはそうとう珍しいと思う。少なくとも俺が今まで読んだことのある創作ものではそんな女神さまはいなかった。


「わらわは、マネーゲームとやらをして向こうの世界で富を集めるつもりなのじゃ」


 マネーゲーム?


「アキナちゃん、マネーゲームって?」


「株の売買とかFXとか相場で大儲けすることなのじゃ。

 エヴァに元手を貸してくれと頼んだら金貨1000枚貸してくれることになったから、ゼンちゃん、金貨1000枚を担保に1億円貸してほしいのじゃ」


 どこで相場とかについて知識を得たのか分からないが、1億くらいならアキナちゃんに貸してやってもいいか。


 本当なら、投資の専門家であるインヴェスターZが投資のイロハを教えてもいいが、アキナちゃんのビギナーズラックを期待して何も予備知識を与えないままの方がいいかもしれない。


「担保はいいから、適当な口座を作ってくれれば1億円そこに振り込んでおくよ。税金がややこしいから、簡単な契約書を作って貸したことにしておくか」


「ゼンちゃんの証券会社は総合証券会社。トレードするには手数料が安いネット証券に口座を作るのじゃ」


 よく知ってるな。


「じゃあ、俺がアキナちゃんの使う予定のネット証券に口座を作ってやるよ。そこに1億振り込んでおくから、アキナちゃんが適当に使ってくれ」


「さすがはゼンちゃんじゃ。

 儲けの半分はゼンちゃんに渡すから楽しみにしているのじゃ」


「それはいいから。適当にやってくれればいいよ」


 昼食が終わって、久しぶりにアイスをデザートに配って居間に移動したら、アスカ3号が居間にやってきた。


「マスター、パソコンのセットアップはほぼ終了しました」


「ご苦労さん。

 アスカ3号。この前俺のスマホを使って銀行振り込みしたから、俺の口座からどこかほかの口座にお金を振り込む方法は分かっただろ? IDとかパスワードとか」


「はい」


「アキナちゃんにどこのネット証券がいいか聞いてそこに口座を作ってくれ。口座ができたら俺の銀行口座から1億円その口座に振り込んでくれ。

 口座開設にはおそらくアキナちゃんのマイナンバーカードが必要と思うから。

 それと俺とアキナちゃんとの間のかねの貸し借りの契約書の書き方をネットで調べて、契約書を作ってくれ。契約書には印紙が必要だからそれも忘れずにな。印紙は郵便局で売っていると思う」


 俺はアスカ3号に印紙代としていくら何でも100万あれば足りると思って、100万円と預かっているアキナちゃんのマイナンバーカードを渡した。


「了解しました」


 アスカ3号は札束とアキナちゃんのマイナンバーカードを受け取って居間から出ていった。


 アスカ3号マジ有能。



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