第347話 IT化
その日の夕食時、案の定アキナちゃんから、
「ゼンちゃん、この屋敷の中でもパソコンが使えるようになったそうじゃが、わらわもパソコンが欲しいのじゃ」
俺の返事がどうなるのか、みんな俺を注目している。
「ほかのみんなもパソコンが欲しいだろうし、あって悪いものじゃないから、明日みんなでマンションのパソコンを使ってそこから注文しよう」
「ありがたや、ありがたや」
「わーい」「やったー!」「えへへへ」
俺の答えは正解だったようだ。
「アスカ3号に、いろいろ調べてパソコン関係の専門家になってくれって言ってるから、アスカ3号ならすぐに専門家になるだろ。
パソコンが揃ったら自分で使ってみて、分からないことがあればアスカ3号に聞けばいいから。
とはいえ、これから注文しても、物が届いてから使えるようになるには1週間近くかかるかもしれないから気長にな」
「「はい」」
「岩永さん、わたしもパソコン買っていいかな?」
「もちろんだ。
はるかさんも、今のより高性能なパソコンに乗り換えるなら、学校の経費ということで買ってくれていいですからね」
「は、はい。ありがとうございます」
「そのうち、宮殿もIT化したいな。
ゴーレム発電機ができたら、電力ケーブルと信号ケーブルをダンジョンから伸ばして、一気にIT化だ!」
「岩永さん、ちょっとやり過ぎになりませんか?」
「そうでもないだろう。パソコンだって導入すればすぐに慣れるって。こっちにはアスカ3号がいるんだから、パソコンの先生として貸し出せば何とかなるだろ」
「アスカ3号だけだと、難しくないですか?」
「アスカ3号はもうすぐIT専門家になるわけだから、完成形のアスカ3号を俺がコピーすればいくらでも簡単にIT専門家は増えるだろ? だから全く問題なし、モーマンタイじゃないか」
「アスカをまだ増やすんですか?」
「必要ならば、やぶさかではない」
「アスカを10人、いや101人並べてみたいものじゃ」
「そのうちな。
しかし、実際問題、101人もアスカをコピーしたらエライことだよな」
「それはそれで、カッコいいのじゃ」
「みんな同じ顔だぞ?」
「そこがいいのじゃ」
神さまの感性は俺のような凡夫、匹夫とは全く違うから何とも言えんな。
そして翌日。
俺たちは朝食後、自宅警備員のアスカ1号を残して、みんなでマンションに移動した。もちろんダンジョン経由だ。
俺が転移で運ぶとマンションの玄関の広さの関係で一度に3人運ぶのが限度だが、ダンジョン経由だと一人ずつゆらぎに入って向こうの玄関に現れ、靴を脱いで作り付けの下駄箱に靴を片付けて順番に廊下に上がるので、かえって便利だ。
みんなでマンションの居間に集まったら、広い居間も少し狭くなった。床に体育座りするわけにもいかないので、応接セットを出しておいた。そしたら、居間がもっと狭くなってしまった。
「アスカ3号、パソコンの勉強の方はどうだ?」
「かなり進んだと思っています」
アスカ3号から力強い答えが返ってきた。
「今日は、みんなのパソコンを注文しようと思うから、注文を手伝ってやってくれ」
「はい。マスター」
「ここのパソコンはエヴァ用に買ったものだけど、エヴァも屋敷にパソコンを置きたいだろうから、もう一揃い買ってもいいんだからな」
「はい」
「それじゃあ、まずはアキナちゃんのパソコンを買うか、ちゃんとしたものを選べば、他の人も似たのを買えばいいから、最初は慎重にな」
「分かっておるのじゃ。
アスカ3号と相談しながら、超高性能パソコンを買うのじゃ!」
「じゃあ、適当にやっていてくれ」
アキナちゃんがパソコンの正面に座り、その隣にアスカ3号、首を伸ばしたみんなが二人を囲んでいる。
俺は見ていても仕方ないと思い、ソファーに座って、見るではなくぼーとみんなの後ろ姿を眺めていたら、アキナちゃんとアスカ3号の会話が聞こえてきた。
『アスカ3号、ここで売っているパソコンのうち、一番いいのを買うのじゃ』
『はい。
ここで売られている商品はそこまで高性能ではありませんが、それでもいいですか?』
『いや、あくまで高性能を目指すのじゃ。この会社じゃなくて他の会社で売っているパソコンではどうなのじゃ?』
『どこもそれほど差はありません。
パーツを購入して、自分で組み立てれば、かなり高性能なパソコンを作ることが可能です』
『ならそうするのじゃ』
『はい』
……。
「ゼンちゃん、アスカ3号がパーツを組み立ててパソコンを作るのじゃが、パーツ代を合わせると80万ほどになってしもうた。買ってもいいよな?」
「どんなものか分からないけど、別に構わないぞ」
その後、みんなのパソコンが決まったらしい。
「マスター、データ保存用にネットワーク用機器を導入してもよろしいですか?」
「もちろんだ。屋敷にパソコンを置くんだから、プリンターなんかも屋敷用にあった方がいいんだろ? 必要なものはどんどん買ってくれ」
「了解です。
それでは発注します。
代金は銀行振り込みでよろしいですか?」
「それで頼む」
8人分なのでアキナちゃんの80万円の8倍になるかと思ったけれど、みんな遠慮したのか、結局代金は500万ほどだった。
フィギュア大蜘蛛5匹、ヒールポーション5本分と考えるとずいぶん安いよな。
支払いはアスカ3号に俺の携帯を貸してやって、通販サイトの指定口座に代金を振り込んでもらった。アスカ3号、まじ優秀。
「岩永さんはパソコンを買わないんですか?」
「うん。スマホで十分」
「パソコンがあれば屋敷の中でネット対戦ゲームもできますよ!」
「俺、ゲーム下手だから、いいよ」
「そ、そうですか」
「うん」
パーツが全部揃うのが5日後だそうで、マンションに届いた順に組み立てていくそうだ。1週間後には全員にパソコンが行き渡ることになる。パソコンが揃うまでに雰囲気を味わわせるために、アスカ3号用にそろえた入門書を6セットコピーして屋敷の居間の棚に置いておいた。




