第345話 ダンジョン経由ショートカット
防衛省で、フィギュアとポーションを卸した俺は、華ちゃんとエヴァを連れてマンションに跳んだ。
転移で現れるのに、ここの玄関は3人でギリギリだな。
「アスカ3号。俺だ。華ちゃんとエヴァを連れてきた」
すぐにアスカ3号が玄関口までやってきた。
靴を脱ぎながら、
「アスカ3号、エヴァは知ってるよな?」
「もちろんです」
どこの段階でのアスカ1号をコピーしたのか忘れたが、たしかエヴァに言われて最初のコピーを試したので、その時のレシピで作ったアスカ3号はその時点のアスカ1号の記憶を持っているはずだ。従って、アスカ3号がエヴァのことを覚えていて当たり前だった。
カーテンは閉まったままだったが、居間の中は電気を点けなくてもそれなりに明るかった。
居間の入り口の電話台の上に電話機と、モデムが置いてあった。
「電話工事は終わってたんだな」
「はい。30分ほど前に作業が終わり、工事の人は帰りました」
モデムの本体のランプが緑色に光っているので問題ないのだろう。試しに受話器を取ったらちゃんとつながっているような音がした。
居間の奥にパソコン台として置いていた机の上にはちゃんとパソコンが設置されていた。キーボードの先にモニター。机の脇にはプリンターが置いてあった。そしてプリンターの上にはパソコンの入門書が3冊ほど置いてあった。
「おっ、アスカがセットアップしたのか?」
「コードは繋げていますがユーザー名とパスワード等の設定があるためセットアップはまだです」
「そんなのがあったのか。
それじゃあ、ユーザー名はIWANAGA、パスワードは何がいいかな? 忘れちゃだめだから、忘れにくいものとなるとやっぱりあれだよな。Isshin4でいこう」
ユーザー名とパスワードを紙に書いてアスカ3号に渡してやった。
「了解しました」
アスカ3号がマウスを動かしたら、モニターが点いた。
そこで、アスカ3号が、画面にキーボードからユーザー名とパスワードを入力した。アスカ3号の指先の動きは俺でも追えないくらい速かった。
その後、アスカ3号は、画面の指示に従ってセットアップを進めていき、5分ほどでセットアップが終了した。
「OSとワイファイのセットアップは終了しましたが、これからシステムのアップデートが行なわれます。
何分かかるかは不明です」
スマホも買った時は何やら時間がかかるから、似たようなものなんだな。いずれにせよ、アスカ3号は既にわが岩永家におけるパソコンスキルの第一人者だ。
作業が終わるのを待っていても仕方ないので、
「アスカ3号が作業しているあいだに、俺は部屋の中を少しラシクしておくから、華ちゃんはエヴァにスマホの使い方を教えてやってくれないか」
「はい。
部屋にワイファイが入っているので、まずはワイファイの設定から」
華ちゃんがエヴァが今日貰ったスマホを説明しながら操作して、エヴァに使い方を教え始めた。
俺もあとで設定してもらお。
俺はまず、システムキッチンの開きの棚に小型の鍋類や、グラス類、食器類を並べてやり、引き出しに箸にナイフやフォーク、布巾などを入れておいた。
次にアイテムボックスの中から、屋敷で使っているベッドを寝室に使えそうな部屋に置いてその上に寝具を置いてやった。
エヴァにお金を渡しておけば、すぐそこのスーパーで足らないものがあれば揃えるだろう。
アスカ3号はパソコンの前で文字通り固まっている。パソコンのセットアップって大変なんだ。アスカ3号がいてくれなかったら俺じゃできなかったな。
なかなかパソコンの更新が終わらないようだが、そろそろ昼だ。俺のスマホも華ちゃんにワイファイ設定してもらったので、マンションにいる限りはデータを使わないはずだ。ケチケチしても仕方がないのだが、できる倹約をしないのはタダのバカ者だしな。
「パソコンのセットアップだか更新がなかなか済まないようだから、俺たちは簡単に昼にしよう」
ということで、久しぶりに台所と食堂の間のカウンターでハンバーガーを食べることにした。
「久しぶりに食べるとなんだかおいしいな」
「そうですね」
「おいしいです」
部屋の中は暖かいので、俺はコーラで華ちゃんとエヴァは炭酸水だった。
食べ終えて、しばらくしたところで、
「マスター、システムのアップデートが終了しました。これで使えます」
「アスカ3号、ありがとう。
エヴァ、時間があるようなら、アスカ3号にパソコンの使い方を習った方がいいな」
「じゃあ、教えてもらいます」
「アスカ3号、エヴァにパソコンの使い方を教えてやってくれ。まずはパソコンのメール。文字の打ち方、それから検索方法だな。
アスカ3号はそういったアプリを使えるよな?」
「はい。本を読んで使えるようになりました。
それでは、エヴァさん、まずはブラウザーから」
「はい。よろしくお願いします」
「お任せください。……」
「アスカ3号、思った以上に優秀でしたね」
「これなら、エヴァの秘書も務まるな」
「それは、いい考えかもしれませんね」
「アスカ3号はここの管理人だけど、エヴァがこっちにきた時はエヴァの秘書でいいな。
しかし、毎日エヴァを送り迎えするのは少し大変だなー。
この部屋とニューワールドの屋敷を繋げられないかな。それこそ、小型のピラミッドをここと屋敷に作って」
「それができれば最高ですね」
「エヴァが勉強中だから、ちょっとコアルームに跳んでそういったことができないか聞いてみるか。華ちゃんもいくかい?」
「わたしはここに残っています」
「分かった、じゃあ行ってくる」
玄関で靴を履いてコアルームに跳んだ俺はコアに向かって、
「家の中にもダンジョンの出入り口を作ることはできるのか?」
「もちろん可能です」
「なんと。
俺のバレンの屋敷の居間と俺の街のマンションの居間にダンジョンの出入り口を作って、最短でその二つを繋げたいんだがどうだ?」
「位置を正確に教えていただければ、すぐにでも出入り口を設置可能です」
「どうすれば、正確な位置をコアに教えられる?」
「わたしの上に手を置き、出入り口を作りたい場所を思い描いてください」
「分かった。その前に、驚かないように屋敷とマンションにいる連中にこのことを話してくるからちょっとだけ待っててくれ」
「はい」
俺はコアに待ってもらって屋敷の居間に跳んだ。居間の中にはアキナちゃんとピアノを弾いているオリヴィアがいたので、アキナちゃんに、
「今から居間のそこの壁にダンジョンの入り口を作るから驚かないでくれ」
アキナちゃんはきょとんとした顔をしていたが、まあ、いいだろう。
「それじゃあな」
そういって、今度はマンションの玄関に跳んで、そこから居間に向かって、
「華ちゃん、居間の壁にダンジョンの出入り口を作るから驚かないでくれ」
『はーい』
これで良し。
再度コアルームに跳んだ俺は、コアに手を当て、屋敷とマンションでダンジョンへの出入り口を付けてもらいたい場所を頭に描いて、
「出入り口を作ってもらいたい場所はここだ」
「了解しました。
二つの出入口はZダンジョンのどこに繋げますか?」
「そうだな、このコアルームの隅の角に繋げることはできるか?」
「可能です」
「コアルームに直接は入れないように周りを囲むことも可能かな?」
「可能です」
「じゃあ、それで頼む」
「出入り口の大きさはどうしますか?」
「そうだな、人、一人が通れればいいだけだから、高さ2メートル幅1メートル、待てよ荷物を持ち運ぶこともあるかもしれないから、幅は1.5メートルで頼む」
「了解しました。製作してよろしいですね?」
「頼む」
「できました」
「サンキュウ」
俺はさっそくマンションの玄関に跳んで靴を脱いで廊下に上がって居間に入ったら、思っていた場所に揺らぎができていた。
「ここに作っちゃったけど、これだと靴を履いたり脱いだりするのが大変だったな。
出入口は玄関の空いている方の壁にした方がいいな」
華ちゃんたちが何か言う前に俺は玄関に戻って靴を履き、コアルームに跳んで位置修正を頼んだ。
「修正できました」
「サンキュウ」
再度マンションの玄関に跳び、そこの壁にできたゆらぎの中に入って見た。
揺らぎの先は2メートル四方の金色の部屋で、左手と俺の背中に黒い板が見えた。
左手の黒い板に入っていったら、その先は屋敷の居間だった。
「ゼンちゃん、これはビックリじゃ。この先はダンジョンなんじゃろ?」
「そうなんだが、ここから入って右手に見える黒い板の中に入れば、その先はマンションの玄関だ」
「ほう。わらわもちょっといってみる」
アキナちゃんはそのまま揺らぎの中に入っていったので、俺もゆらぎの中に入ってその先の黒い板の中に入ってマンションの玄関に出た。
転移できる俺からすればあまり意味はないのだが、これは画期的だ。あと壁は2つ残っているからもう2カ所繋げてもいい。やる気になれば部屋を大きくすればいくらでも出入り口は作れる。そうしたらどこに出るのか看板が要るな。




