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岩永善次郎、異世界と現代日本を行き来する  作者: 山口遊子


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第34話 エアコン注文


 一時ジーゼル発電機を買おうかと迷ったが、結局ガソリンエンジンで間に合わせてしまった。外付けタンク2個でガソリン100リットル、本体タンク2個で約30リットル。計130リットル同じ物置に中に入っているので危険物的にはマズいのかもしれないが、そこは火気には十分注意するということで良しとする。内部タンクだけのカタログ上の運転時間から逆算して、燃料が130リットルあると、3日半発電できる勘定になるが、ほとんど負荷のかからないような運転だろうから1週間程度運転できそうだ。


 発電機から物置小屋の入り口の上までコードを伸ばし、そこから延長コードで母屋まで引っ張った。発電機の切り替え時は面倒だが発電機のコードを差し替える必要がある。


 母屋へは壁に孔を空けて電線を引き入れた。ここまでやってしまうと、電線を各部屋まで引きたくなってくる。


 電線を壁の中に通したいが今さらそれはできないので、電線は壁を這わすか床の隅を這わすしかない。ただ電線を這わすのは見てくれも悪ければ危なっかしい。たしか、ケーブルモールとか言って電線を中に入れて保護する資材があったような気がする。おもて面は全面が蓋になっていて電線を簡単に中に入れることができ、裏面には粘着テープが貼ってあり壁や床にぴったり貼り付けることができるので、壁や床の隅にケーブルを這わすのに都合がいい。


 思いついてしまった以上、何とかしたい。急遽俺は服を着替え、ホームセンターに跳び、ちょっと大きめのケーブルモールを買ってきた。まっすぐなもの、直角に曲がった物など数種類購入している。


 屋敷に戻った俺は、ケーブルモールを複製ボックスに入れてどんどん錬金工房でコピーしていき、屋敷の中に貼っていった。


 ケーブルモールを貼り終わったあと、順番に電線を入れていった。ところどころにコードタップを挟んでコンセント代わりにしている。とはいっても電線を引いたのは居間と食堂と台所、それに俺の部屋だ。風呂場にも引きたかったがしろうとの電気工事で感電でもしたらマズいのでそれはやめておいた。



 明日は室内用の照明を何個か買ってこよう。


 主な場所に電線を這わせたらいい時間になったので、先に風呂に入った。子どもたちが俺の後に続いて風呂に入りそのあと夕食になった。



 その日寝る前。廃車を5台も素材ボックスに突っ込んでいるわけだから、その中から金が抽出されて楽に金が錬成できるかと思っていたのだが、錬成1回目でも疲れはいつもとほとんど変わらなかったので、2回目は諦めた。


 その代わり、久しぶりに『ピロロン!!』が鳴った。


『錬金術スキルの熟練度が一定値に達しました。スキルポイントが1付与されました。残スキルポイントは25です』


 いまのところ、欲しいスキルがあるわけでもないので、心地よい疲労感の中、俺はそのまま眠りに就いた。



 翌日。朝の日課を終えてしばらく居間でまったりして時間を潰し、ホームセンターに転移した。照明器具を買うためだ。おそらく売っている製品はあまり聞かないメーカーものだろうが、今の世の中、安かろう悪かろうでは商売が成り立たなくなるので、製品の品質自体は悪くないだろう。使う前に一度コピーしておくので、万が一壊れたとしても、いつでもコピーに取り換えられる。


 天井から吊るすタイプの照明器具は部屋全体を照らすにはいいが、俺の屋敷の部屋には天井に取り付け金具がついているわけでもないので、床に置いてそのまま使えるスタンド型の照明器具を何種類かカートに入れておいた。


 他にも何か電気製品はないかとそこらを見て回ったところ、まず目についたのが電子レンジだ。これは買いだな。店の人に持ち帰るからと言って倉庫から持ってきてもらい、カートに乗っけた。次に目に付いたのはIHヒーターだ。料理するならガスが便利なのだろうが、ガスボンべを俺がコピーで作ったとしても、元となるのは炭素と水素なので結構大量の木炭などの炭素が必要になる。そういうことでIHヒーターの据え置き型を見たのだが、どれも容量が大きくて今の電力では厳しそうな感じがした。結局IHは諦め、かなりショボくはなるが湯沸かしポットだけ買うことにした。



 その電気製品のコーナーを回っていたらエアコンコーナーに出た。今のところ向こうの屋敷の中は暑くもなければ寒くもないのでエアコンは不要だ。しかしこれからどうなるか分からない。そう考えると、エアコンが欲しくなってきた。とはいえ、俺の屋敷の部屋は家庭用エアコンを取り付けるような造りにはなっていないので、専門家に工事させなくては無理がある。


 屋敷の周りの塀をかさ上げして周囲が見えないようにして、数人の専門家を向こうに転移させて仕事させるか? なにか罪を犯すわけでもないし、中古車屋のおっさんみたいに気にしない人間もいるわけだから、妙な細工などしなくても何とでもなるような気がしてきた。


 それなら、ここでエアコンを買ってついでに工事もやってしまうか。


 これまで使ったことはなかったが工事依頼コーナーがたしかここにあったはず。


 そう思って探したら、すぐに見つかった。


 係の人に、


「エアコンを買いたいんですが、家にはエアコン取り付け用の孔もないし壁に取り付け用の補強板もないんですが大丈夫ですか? 工事で済むなら工事を頼みたいんですが」


「孔あけ作業とエアコンの取り付けですね。エアコンの取り付けは無料ですが、その他の工事の費用は作業員2名の派遣代金として半日で2万円と使用物品の実費、それに消費税がかかります。

 エアコン本体はどうされます?」


「ここで買うのでそのまま取り付けてください」


「かしこまりました。こちらが当店で扱っておりますエアコンになります。この中からお選びください」


「居間と食堂と俺の部屋だから、

 この大きいのが1台とこの2台でお願いします」


「こちらの大きいものは、200V用ですがよろしいですか?」


 昨日の配線は100Vだった。発電機は200Vでも使えたはずなので、200V用のケーブルを買って居間まで引くか。


「大丈夫です」


「それでは、代金は合計で44万3千円となります。エアコンの代金は前払いになりますが、カードでお支払いですと、こちらのカードが当店で使用できるカードです」


「現金で払っておきます」


 アイテムボックスに入れていた万札を45枚取り出して店の人に渡し領収書とお釣りをもらった。


「それでは、この用紙に住所をお書きください」


 俺はアパートの住所を書いておいた。小さなアパートに3台のエアコン、しかも中の1台は大型エアコンだ。不審に思うかもしれないが、その先を考えれば少々の不審は吹っ飛ぶはず。


 おそらく作業員はワゴン車か軽トラックで荷物を積んでやってくるだろうから、ワゴン車ごと向こうに転移して作業してもらっちゃえ。


「市内ですので、最短で、……。ちょうど明日は空いていますね。エアコンの在庫もありますし最短で明日お伺い出来ます」


 係りの人は、俺が住所で書いた『~アパート』は気にならなかったようだ。


「それでは明日でお願いします」


「作業員が2名10時にお宅にお伺いします。

 エアコンの取り付け用の孔の場所などはその場で作業員に指示してください」


「了解しました」


 気付けばエアコンを購入していた。文明生活にまた一歩近づいた。



 俺は、200Vのケーブルを買うため電線売り場に回った。一度コピーしてしまえば長さ調節は錬金ボックスで可能なので、購入するケーブルの長さは適当でいいだろう。


 レジでカートに入れた物品の支払いを済ませたところで、カートごとホームセンターの外に出て、荷物を収納してやった。


 これでここでの用事も終わったので、このまま屋敷に帰ろうかと思ったら、すぐ近くにハンバーガーのファーストフード店があったのを思い出した。


 俺は今日の昼食はハンバーガーセットにしてやろうと思い立ってその店に向かった。昼までまだ時間があるが、ハンバーガーはアイテムボックスに入れておけば温かいままだし、コーラは冷たいままだ。


 カウンター越しに笑顔スマイルのお姉さんに向かい、


「持ち帰りで、ダブルハンバーガーセット6つ。飲みものはコーラで。

 追加で、ハンバーガー6つ。ポテトは中でいいから。それとケチャップも忘れずに」


「かしこまりました」


 精算を終えてしばらくして出てきた紙袋2つに入れられた注文の品を受け取って俺は店を出た。



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宇宙SF『宇宙のスカイスフィア』

https://book1.adouzi.eu.org/n5730hv/

2022年9月16日より投稿(公開)開始しました。よろしくお願いします。

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