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岩永善次郎、異世界と現代日本を行き来する  作者: 山口遊子


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第339話 東京見学1


 防衛省での会議の後、ダンジョンガールズをフィギュア化して届けておいた。


 翌日。


 午前9時5分前、俺は単身オストラン神殿の大ホールに跳んで、巫女服を着たブラウさんとローゼットさんを連れて屋敷の玄関ホールに戻った。華ちゃんとリサが玄関ホールで待っていてくれている。


「ここがうちの玄関です」


 ピヨン、ピヨン。俺が連れてきたのが女性二人だったから、ピョンちゃんはあざとく反応したようだ。


「鳥?」


「楽園オウムのピョンちゃんです」



「それじゃあ、さっそくですが、2階に行って服を着替えてください」


 華ちゃんとリサが二人に着替えてもらうため、2階のアスカたちの部屋に案内していった。冬物の衣服も姿見と一緒にその部屋の中に用意している。二人の今日着る洋服は、そのまま着替えず神殿に帰そうと思うので、二人の巫女服は紙袋に入れてもらうよう華ちゃんに頼んでおいた。


 思ったより早く二人は冬物の洋服に着替えて、紙袋を持って2階から下りてきた。俺は二人から紙袋を預かってアイテムボックスの中に収納しておいた。間違ってコピーしてしまうとややこしくなるので、間違わないよう注意している。



 俺一人で女性二人を案内するのは不安だったので、華ちゃんにも同伴してもらうよう頼んでおいたのだが、


「わらわもな」


 アキナちゃんがちゃんと余所行きを着て俺の隣りに立っていた。


「トイレの使い方だけ、二人に教えておいた方がいいから、華ちゃん頼む」


「はい」



 全員の準備の整ったところで、忘れないうちにブラウさんとローゼットさんに昨日コアに作らせた日本語のスキルブックを渡して、


「日本語のスキルブックです。

 これを両手で折るかして壊せば、二人とも日本の言葉が話せて読み書きできるようになります」


 二人は渡されたスキルブックを両手で折った。スキルブックは二人の手の中で砕けて粉々になってこぼれ落ちて消えてなくなった。


「どうです? 何か変化を感じましたか?」


「よくわかりません」


「今わたしの話した言葉が日本語です。ハハハ」


 二人は相当驚いていた。


「問題ないようなので、これからは日本語で話します」


 どうせならタクシーに乗って近くで街並みを眺めながら移動した方がいいと思い、東京駅の八重洲側に跳ぶことにした。


「今日は、日本の都、東京に二人を案内します。最初にいくのは、東京駅といって機能的には馬車の駅を大規模にしたものなんですが、乗合馬車の代わりに、機械で動く列車という乗り物を利用するための施設です。そこから、列車ではなく箱馬車代わりのタクシーという乗り物に乗ってスカイツリーという名の塔に案内します。

 それじゃあ、転移」



 時刻は9時20分。通勤の人混みもだいぶ少なくなってきた時間帯と思うが、それでも大勢の人が駅に出入りしていた。


 いつものように、いきなり現れた俺たちに誰も注意は向けてこなかったようだ。


「見ての通り、ずいぶん人がいます。東京だけで1200万人、人がいます」


「今は1400万人近かったような」と華ちゃん。


 人口の話を二人にしたが、二人とも俺たちの説明など聞いていなかったようで、東京駅を振り返って見上げてみたり、バスの発着を眺めていた。


「これから、タクシーに乗ってスカイツリーに向かいます。だいたい2、30分で到着します」


 二人を促してタクシー乗り場に並んだ。人数が5人なので、タクシーは2台必要になると思ったのだが、運よくミニバンタクシーがやってきてくれて、5人一緒に乗り込むことができた。日本の冬の方がオストランの冬より寒いので二人はタクシーを待って寒い思いをしたと思うが、タクシーの中は暖房されていたので、落ち着いたことだろう。


 俺が運転手さんの後ろの席で、俺の後ろがアキナちゃん、華ちゃんとブラウさんとローゼットさんの3人は最後列に座り、華ちゃんが二人にシートベルトを取り付けてやった。


 アキナちゃんは座席に座ってシートベルトをちゃんと装着しておとなしくしている。同業者がいるのでさすがのアキナちゃんでも少し意識しているのかもしれない。とはいえ、いつものニヨニヨ笑いだけは変わらないようだ。


 シートベルトをした二人は、タクシーの窓から何も言わず外を眺めている。道の広さ、車の数、信号、道の両脇のビル。驚く物ばかりだと思う。


 20分ほどでスカイツリーの下にタクシーが止まり、そこから建物の中に入っていった。タクシーから降りた二人は、一度スカイツリーを見上げた後、華ちゃんと一緒に黙って俺の後をついてくる。言葉もないのかもしれない。


 いきなりエスカレーターを使うのは危ないと思い、チケット売り場のフロアまでエレベーターで上った。


 チケット売り場では、少し人が並んでいたがすぐに捌けて人数分のチケットが買えた。


「陛下、先ほど紙?をチケット売り場で出され、チケットと一緒に貨幣が帰ってきましたが、あの紙がお金なのですか?」


「紙幣といってこの国のお金なんです。比較的高額なので硬貨を持ち運ぶより便利です。

 紙なので国がその気になれば、いくらでもお金を発行できるんですが、デタラメに発行してしまうと、物の値段が無茶苦茶になるので、加減して発行しているようです。丈夫な紙なんですがそれでもそのうちボロボロになるので、古い紙幣は集めて処分して、新しい紙幣と交換もしているようです」


「なるほど」


 そこから展望台いきエレベーターの入り口に入っていき、並ぶことなくエレベーターに乗ることができた。相変わらずブラウさんとローゼットさんは無口だ。


「急に高いところに上るので、耳が少しおかしくなるかもしれないけど、口を半分開けていれば多分大丈夫なはず」


 結局、二人がどうなったのかは分からなかったが、エレベーターは地上350メートルの天望デッキに到着した。


 展望窓まで二人を連れていき、そこからの景色を眺めて、


「ここから見渡せるのが関東平野という平野なんですが、関東平野だけで数千万人の人が住んでいます」


「関東平野にはたしか4千万人だったと思います」と、華ちゃんが補足してくれた。


「オストランの人口はおおよそ3千万です」


 江戸時代の日本の人口が3千万くらいと聞いたことがある。これから、発展していけばどんどん人口も増えていくのだろう。



 一回りして、上の天望回廊まで上がって一回りしてから、スカイツリーの見学を終えた。


「さて、昼はなににしよう?」


「わらわは、とんかつじゃな。そのために付いてきたのじゃから」



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