第335話 ダンジョンの出入り口とコマと言語
横浜の中華街の中で華ちゃんと中華を食べた。
お土産にブタまんと月餅を買って帰った。買ってきたブタまんはそうとう大きいので、朝食として食べてもいいし昼食として食べてもいい。どちらもコピーした上リサに渡しておいた。
屋敷に帰って、コタツに入り、オストランのことを考えていた。
なんであれ、オストランを発展させていくには、日本と交流していくことが不可欠だ。本格的な交流には俺抜きでの往来が不可欠だ。
日本の第2ダンジョンと俺たちのダレン南ダンジョンは一方通行だが繋がっている。双方向に行き来できるようにしたとしても、楽園を通らなくてはならない。
俺とすれば楽園は外部に開放したくないし、楽園を開放したとしてもその先にはそれほど大きくない扉もあれば罠もある。となると、どこか別の場所を探す必要がある。日本にできたピラミッドの出入り口から直接こっちのダンジョンの出入り口につながってくれていれば万々歳なんだが。
待てよ。コアを含めてダンジョンはどう見ても異空間に存在しているが、ピラミッドを含めてダンジョンの出入り口は現実空間に存在している。コアの能力でピラミッドができたわけだろうし、ダンジョンの出入り口としてピラミッドを作れるとコアも言っていた。コアに頼めば、日本国内というかあっちの世界じゃなくてもニューワールドの好きなところにピラミッドを作れるんじゃないだろうか?
これが可能なら、この世界と地球を繋ぐ『ゲート』を簡単に作れることになる。とはいえ、可能と分かったとしても、いきなり新しくピラミッドを作ることはできないから根回しは必要だよな。
風呂に入るまでまだ時間もあるし、コアルームに跳んでその辺りをコアに確認しておこう。
コアルームに跳ぶと、メタルバジリスクが相変わらず用もないのに部屋の中を徘徊していた。この無駄なエネルギーを電気に変えることができれば相当役立つのだが。ゴーレムの自転車発電ではあまり意味はないから、ちゃんとした発電方法があればいいのに。
それはそれとして、先に用件を済ませてしまおう。
「コア、このダンジョンの出入り口だが、ニューワールド側にも作れるのか?」
「このコアルームと空間的に繋がっている必要がありますが、出入口はどこにでも作成可能です」
「空間的に繋がるとは?」
「出入り口はこのダンジョンにつながっている必要があります。いきなり出入口だけ独立に作れません」
「なるほど」
「また、溶岩の中や海の底など極端な環境下で出入り口を作ってしまうと、ダンジョン自体が大きなダメージを受けることになります」
海の底なんかに作れば水没するだろうしな。
「そういった極端な場所に作ってくれとは頼まないから安心してくれていい」
「マスター、すぐに作りますか?」
「まだいい。その時は頼む」
「了解しました」
「あとコアに聞いておきたかったことは、……、
そうそう、コマって分かるか?」
「はい。分かります」
「ゴーレムでも何でもいいんだけど、いつまでも回り続けるコマってできるかな?」
「ゴーレムでコマは製作可能です」
「じゃあ、直径10センチくらいのゴーレムコマを作ってくれるかい? 軸だけは丈夫にな」
「はい」
シーーーー。
足元からこすれるような音がすると思ったら、俺の目の前の床の上でコマが高速で回っていた。
回っていると手で持てないので、止めたいのだが、どうすればいいか? いちおうダンジョンマスターの俺がコアに命じて作ったゴーレムだから俺の命令は聞くだろう。
「止まれ」
コマの回転がだんだん遅くなり、最後にその場で倒れてコロコロ転がって停止した。何はともあれ、これでダンジョン内限定だが発電機の目途が立った。
床で転がって止まってしまったゴーレムコマを拾い上げて、軸の上を持って床の上のゴーレムコマを置いて、
「ゴーレムコマ、回れ!」
コマが回り始めたので指を離し、
「最大速度で回れ!」
そう言ったら、
シューーーー!
毎秒何回転しているのか分からないが、ものすごい速さでゴーレムコマは回り始めた。
回っているままアイテムボックスに収納したらどうなるのか試しに収納してみたら、回転したまま収納できた。
そのコマをアイテムボックスから床の上に排出したら、収納した時と同じ高速回転していた。
今まで動いているものを意識して収納したことはないので考えたこともなかったが、運動量だか運動エネルギーはアイテムボックス内で保たれているようだ。
コマができたが、現状このゴーレムは俺の命令しか聞かないはずなので、
「俺以外の者が、回転、停止と言ってもその命令を聞くように」と、命令してから収納した。本格的発電装置に組み込む場合は、回転、停止だけでは不十分なのだろうが、今はこの程度で十分だろう。
後なにかあったかなー?
あっ! そう言えば、はるかさんは異世界語のスキルブックでニューワールドの言葉を覚えたわけだけど、元々あのスキルブックは第2ダンジョンかどこかで見つけたもの。ということはコアが作ったスキルブックということになる。ニューワールドの言葉のスキルブックがあるなら、日本語のスキルブックもあっておかしくない。
「コア、日本語のスキルブックって作れるか?」
「はい。作れます。日本語と、マスターのいうニューワールドの言語スキルブックの作成は容易です。指定スキルは通常のスキルで10万DP必要ですが、この二つの言語のスキルブックが1万DPで作成可能です。
今どちらかを作成しますか?」
「いや、まだいい」
こんなところか。言語の壁が乗り越えられるということはデカいぞ。オストランから日本への留学生用に日本語スキル。今後招へいするかもしれない日本人技術者とか教育者にはニューワールドの言語スキル。先行してはるかさんの助手を日本からリクルートすることもできる。
予想以上の収穫だ。今回の用事は終わった。
満足した俺は、屋敷に戻っていい気持ちで風呂に入った。
夕食時、情報の共有という意味で、今日コアに確かめたことをみんなに話しておくことにした。
「今日午後から一度コアのところに跳んで、ダンジョンの出入り口をここニューワールドに作れないか聞いてきたんだ」
「それで、どうだったんですか?」
「問題なく作れるそうだ」
「ということは、ニューワールドから日本のダンジョンを経由して日本に行けるってことですか?」
「うん。その逆も可能になる。出入り口はダンジョンに繋げないとならないようなので、最低でも数メートル離さないといけないけれどダンジョンから見て、隣にくっつけて作ることも可能と思う」
「それって、すごくないですか?」
「すごいと思う。トンネルを抜けるとそこは異世界でした。しかも歩いて数歩ってことになる。出入り口の大きさも自在だから、トラックの行き来も、レールを敷けば列車の行き来も可能になる」
「繋げちゃうんですか?」
「さすがに今はしないけれど、将来的には繋げるつもりだ」
「いきなり進んだ文化が流れ込んで、この国というかニューワールドが混乱するってことはないでしょうか?」
「俺がダンジョンマスターで、この国の王さまなわけだから、そういったことが起こらないよう頑張るつもりだ」
華ちゃんと俺が話をしているあいだ、他のみんなも考えているようで、みんな黙って話を聞いていた。
「それと、たまたま思いついて言語のスキルブックを作れないかコアに尋ねたら、日本語とここの言葉のスキルブックは1万DPで作れるそうだ。10個、20個なら問題なく作れる。
はるかさんの助手を日本でリクルートしてもいいかもしれません」
「おお、それはすごいです。
心当たりがないわけではないので、そのうち当たってみます」
「お願いします。当面この屋敷のはるかさんの部屋で暮らしてもらうことになるか。だとすると女性じゃないとマズいか」
「心当たりは女性ですからだいじょうぶです」
「なら、安心ですね。
あともう一つ。
ゴーレムコマを作ったんだ」
「コマって回して遊ぶコマですか?」
「うん。そのコマなんだ。ゴーレムだからすごい速さでいつまでも回るんだよ」
「それって、もしかしたらモーター?」
「そう。ダンジョンの謎パワーでモーターみたいにクルクル回る。ダンジョン内限定だけど、普通に自動車なんかも作れるかもしれない。まあ、乗り物ならゴーレム白馬もあるし、そういったもので十分なんだけど、そのコマを発電機に繋げれば、電気が手に入る。ゴーレムだから俺の錬金工房の中で大きさは自由自在だ。本格的な発電機を作るには日本のちゃんとした技術者に製作依頼しないといけないけど、できないことはないだろう。
まだまだ先の話だけど、ニューワールドに電気を引けるかもしれないと思ってな」
「あの大空洞の中に大型の発電機を設置した発電所を作れば、そこからニューワールド側に十分な電気を引けるし、空洞の開発も進みそうですね」
「大空洞じゃなくても、ダンジョンにつながっていさえすれば発電所専用の空洞を作ることもできるし、その空洞を出入口近くに作れば電線が短くて済むしな。
ゴーレム発電機の試作品ができたら、パイロット的にそれをダンジョンに設置して、ここに電線だけ通るくらいの小型のダンジョン出入口を作ってしまえば、ダンジョン産の電気がここで使えるようになるはずだ」




