第333話 勇猛果敢4
現在、第1、第2、第3ダンジョンについては、第6階層、第7階層の階段下り口周辺の部分マップが追加公開されており、救護隊も第7階層まで出動することになっている。民間保険も第7階層まで利くように見直しが始まっている。
善次郎がオストラン王国の都オストランで公務をこなしていたころ、勇猛果敢の3人は第2ダンジョンの第3層の枝道の中を進んでいた。先頭はメタル大蜘蛛、その後に盾とメイスを持った足立と下村、そして火野、最後にメタルゴーレム。と続いている。
火野はピストルクロスボウから、大型のクロスボウに乗り換えていた。それまでのピストルクロスボウは武器販売所で販売価格の3割ほどの値段で下取りしてもらえた。
ダンジョン内で、ダンジョンアニマルと呼ばれる、豚、ニワトリ、七面鳥、牛が発生するようになった関係で、冒険者たちの収入も底上げされてきており、勇猛果敢の3人の収入もまた増えている。ニワトリ、七面鳥などでは先行するメタル大蜘蛛が簡単に斃してしまうため、3人の出番はまずない。
ケイブ・ボアーのような突進力のあるモンスターについては、メタル大蜘蛛では歯が立たない。そのかわり、弓術スキルを得た火野のクロスボウはケイブ・ボアーほどの大きさのある的を外すことはなく、一撃で倒すこともあり、最低でも突進力を大きくそぐことができる。
足立と下村の盾で突進力のなくなったモンスターを余裕で受け止め、メイスを叩きつけることで簡単に斃せるようになっていた。
大物狩に手間をかけたくないのなら、メタルゴーレムで最初から斃してしまってもいいが、メタルゴーレムではオーバーキル気味になってしまい、買い取り価格が下がるため、勇猛果敢ではケイブ・ボアーまでなら、メタルゴーレムを使わないようにしている。勇猛果敢の3人はまだ出会ったことはないが、ケイブ・ウルフが現れた場合は、メタルゴーレムがいるなら迷わずメタルゴーレムを使うようダンジョン協会では奨励している。
一行が洞窟内を進んでいると先頭のメタル大蜘蛛が反応して、前方に駆けだした。
足立たちもメタル大蜘蛛の後を追っていく。その後をメタルゴーレムが付かず離れず追いかける。3人のキャップランプの光が捉えたのはメタル大蜘蛛を蹴散らして、突進してくるケイブ・ボアーだった。
「来たぞ!」
「撃つわよ」
火野が一歩横に移動して射線を確保し、クロスボウを構えケイブ・ボアーに狙いをつけ、ボルトを発射した。ボルトはケイブ・ボアーの額に深々と突き刺さり、ケイブ・ボアーは数歩進んでそこで倒れた。
メタルゴーレムにケイブ・ボアーの前足を持って宙づりにするよう命じて、3人がかりでビニールシート製の袋の中に宙に浮いたケイブ・ボアーの後ろ足を突っ込んで、それからゆっくりケイブ・ボアーを下に下ろさせて袋の中に入れる。
クロスボウボルトは、たいてい深々と突き刺さっているので、最近は抜き取らず、そのまま買い取り所に出している。
「さーて、これで150キロ近く収穫があったから、帰るか」
「うん。次はゴーレム2体にしないか?」
「そうね。もう1体借りたとしても、少なくとも10万以上は稼げると思うからそうしましょうよ」
「じゃあそうしよう」
3人は、そこまでで引き返し始めた。帰り道の途中、昼食のお握りや調理パンを食べ、午後1時過ぎにはダンジョンを出た。電動台車にその日の成果を乗せて、買い取り所に持ち込んだ。
その日の査定は、ケイブ・ボアー70キロ、ダンジョン豚70キロ、大ネズミ9キロと10キロ。メタルゴーレムの運搬重量は150キロということだったが、10キロ程度の超過は問題なかったようである。
どれも最高査定で、それぞれのキロ単価が15000円、18000円、10000円となり、合計で250万、フィギュアモンスターのレンタル料15万円を差し引いて235万円。一人あたり77万の収入ということになった。ダンジョンオープン時から比べればダンジョンモンスターの買い取り価格はかなり下がっているが、このところ下げ止まっている。
1カ月に4回ダンジョンに潜っている彼らだが、2学期に入り3カ月間で一人あたり600万円を超える収入を得ていた。3人とも日曜にダンジョンに潜っている関係で、無駄遣いする暇もなく、ほぼ全額貯金して、高校を卒業してから大学に進んだあとの費用は親に頼らないつもりでいるようだ。
シャワーを浴びた3人はロッカールームの前で待ち合わせて、今日も反省会のためド〇ールに向かった。3人とも、防具を詰めたかなり大きなリュックを背負っているので、見る人が見れば冒険者とすぐわかる。
「火野が今のクロスボウを使うようになって、俺たち最近、盾を構えてるだけで終わることが多くなったな」
「二人が、しっかり盾を構えてくれて、わたしが仕損じてもカバーしてくれると分かっているから、わたしも安心してクロスボウを撃てるのよ。だから気にしないでよ」
「まあな」
「それはそうと、来週から期末テストじゃない、どう?」
「いちおうちゃんと勉強してるから、何とかなるんじゃないか? 火野はどうだ?」
「1学期はマズかったけど、今回は多分いい成績がとれると思う」
「さすがだな。
試験は何とかなるとして、冬休みはどうする?」
「冬休みは2週間しかないけど、クリスマスに年末年始とイベントがあるじゃない」
「うん」
「ダンジョンは年中無休だし、ダンジョンに潜る人の数はさすがに減るでしょうから稼ぎ時じゃないかな?」
「ということは、夏休みと違って、稼ぎまくるってことか?」
「無理する必要はないけど、俺はこのところ、ダンジョンに潜っても全然疲れないしな」
「俺も」「わたしも。不思議よね」
「二人もそうなら、冬休みは正月三が日だけダンジョン休みにするか?」
「でも、宿題はやっぱり出るんじゃないか?」
「じゃあ、冬休みになったら3人で図書館に集まって速攻で宿題を済ませてからダンジョンに入るか」
「それでいこう」「そうしよ」
ダンジョン協会では、各冒険者のダンジョンへの出入りの日時を記録しているのは当然だが、そのほかに、ダンジョン免許証に振り込んだ成果の買い取り金額も集計している。更に、ダンジョン免許証間の金銭の移動も把握している。要は、冒険者個人がいくら稼いだのかかなり正確に把握していた。
その中で、高校生と思われる3人がダンジョン協会内で注目されていた。足立たち3人である。
もちろんこういったデータは個人情報であるため公開されていない。




