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岩永善次郎、異世界と現代日本を行き来する  作者: 山口遊子


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第329話 祝宴


 この国の政治をよく知っていて、都の中で一番信頼できるブラウさんを宰相に任命してやった。俺が王さまとしてやり遂げた最初の仕事だ。


 国を発展させてくれと注文を付けたのだが、やや漠然とした注文だったと思う。ただ、国を発展させるということが、俺自身のなかで何も見えていないから、具体的なことが何も言えないんだよな。ダンジョンマスターとしてダンジョンを発展させるためには、日銭ひぜにとしてのDP(ダンジョンポイント)を稼いでいくという具体的な目標があるから色々とアイデアも湧いて出たが、国となると全くアイディアが湧いて出てこない。


 結局、記念式典も戴冠式も良きに計らえということで、一応会議は終わった。


「ブラウさん、今日はこれくらいにして、わたしたちはバレンの屋敷に帰ってもいいかな? 屋敷のみんなも心配しているだろうし」


「うちわでの祝宴の用意をしていましたが、陛下のご都合でしたら致し方ありません」


 ちょっと悪いし、もったいないな。


「それなら、うちの連中を連れてきてもいいですか? 前回同様わたしを含めて9名なんですが」


「もちろんです。祝宴は2時間後の13時を予定していますので、そのころお戻りください」


「了解しました。

 大ホールに13時少し前にうかがいます。

 それじゃあ、われわれは屋敷に帰ろう」


「「失礼します」」「それではブラウ殿」



 俺は3人を引き連れて屋敷の玄関ホールに跳んだ。ホールから居間に入ると、居間の中にみんな揃っていた。


「善次郎さん、無事お帰りになったということは試合に勝ったということですよね?」と、はるかさん。


「はい。試合は思った以上に楽勝でした」


「ということは、王さまに?」


「なっちゃいました」


「なっちゃったんですね」


「そういうことです」


「「えーーー!」」「「すごーーい!」」


「わたしたち本当に王女さまなの?」「キャーーー!」


 残っていたエヴァたち3人の子どもたちが大騒ぎを始めてしまった。なぜかアキナちゃんとキリアまでその中に入って騒ぎ始め、コタツを置いたカーペットの周りを回り始めてしまった。才能と精神年齢は関係ないらしい。


「午後1時からオストラン神殿で祝宴を開いてくれるそうだから、今日の昼食は抜いて、それまでにみんな着替えておいてくれ」


「「はい」」



 まだコタツの周りをお祭り騒ぎのように回っている子どもたちは放っておいて、俺と華ちゃん以下3名は着替えのために2階に上がった。華ちゃんの肩の上にはピョンちゃんが知らぬ間に乗っかっていた。



 余所行(よそい)きに着替えて居間に下りていくと、誰もいなかった。子どもたちもちゃんと着替えに2階に上がったようだ。


 時間つぶしにコタツに入ってミカンを食べていたら、華ちゃんが最初に居間に下りてきて、俺の向かいに座った。ピョンちゃんはいなかったので玄関ホールにいるのだろう。


「岩永さん、ダンジョンマスターになったと思ったら今度は王さま。凄いことになってしまいましたね」


「うん。何でだろうな?」


「何だか、岩永さんを中心に世界が回ってる。そんな感じもするんですよね」


「華ちゃん、それこそ中学2年生のかかる妄想病だよ。俺の周りで世界が回っているなら、もっと俺は自由でなんでもできてるはずだぜ」


「岩永さんは相当自由で何でもやってしまっているように傍から見えるんですけど」


「あれ? 俺十分自由だし、好きなことなんでもやってるし、満足しているし、幸せのような。いやいや、それはないから」


「そうかなー?」



 そんな話を華ちゃんとしていたら、そのうちみんながコタツに揃った。


「みんな揃ったことだし、時間は早いけど、遅れるよりはいいから向こうにいっておこう」


 みんなが靴を履いて、俺の手をとったところで、オストラン神殿の大ホールに跳んだ。



 少々時間は早かったが、大ホールには巫女さんが待っていてくれたようで、すぐに祝宴の会場に案内してくれた。


 案内された会場は、天井からはシャンデリアが何個も吊り下げられていて、かなり大きな広間だった。


 広間の中には真っ白なクロスが広げられた長テーブルがロの字型に並べられていて、席はその外側だけに並べられていた。俺たちの席らしい空席以外には神官や巫女さんたちで埋まっていた。


 今までの青い巫女服の上にキンキラの刺繍が施されたひざ丈の法服のようなものを羽織ったブラウさんの案内で、俺たち9人は上座らしき空いた席に俺を真ん中にして座らされた。


 席順は、俺の左に華ちゃん、はるかさん、リサ、ブラウさん。右にアキナちゃん、キリア、エヴァ、オリヴィア、イオナの順となった。


 俺たちが席に着いたところで、正面の扉が開き数台のワゴンが侍女たちによって運び込まれ、食器類がテーブルの上に並べられていった。


 続いて運び込まれたワゴンには飲み物のボトルがならべられていて、細長いグラスに飲み物が注がれていった。グラスに注がれた液体は薄っすら黄色で泡が立っているところを見ると、シャンパンとは言わないだろうが、そのたぐいの発泡酒なのだろう。酒の飲めない人には、ジュースが注がれているようだ。


 こういった地球とは違う世界で、シャンパンを飲みながらポテトサラダのサンドイッチとイベリコ豚のハムとチェダーチーズとスライストマトの入ったサンドイッチを食べるのが通だが、はたして、ポテトサラダのサンドイッチとかイベリコ豚のハムとチェダーチーズとスライストマトの入ったサンドイッチは出てくるか?


 発泡酒がいき渡ったところで、ブラウさんがグラスを持って立ち上がり、


「聖剣が選んだ陛下が無事、このオストランの王となられた。継世の巫女であるわたしとオストラン神殿の使命は一応果たせました。まことに喜ばしい限りです。

 陛下の御代、このオストランはますます栄えていくものと確信しています。

 ゼンジロウ王、万歳!」


 ブラウさんが、万歳と同時に手にしたグラスを一気に飲み干した。


 そして、出席者全員がグラスを掲げて、


「「ゼンジロウ王、万歳!」」


 ブラウさんと同じようにグラスを飲み干した。


 あわてて、俺以外の8人もグラスを掲げて飲み干した。アキナちゃん以下の5人のグラスにはリンゴかなにかのジュースが入っていたが、華ちゃんのグラスには発泡酒が入っていた。


 発泡酒を華ちゃんは一気に飲み干したのだが、見た目は大丈夫そうだった。



「陛下、よろしければ、ひとことお願いします」


 俺はこういった席であろうとどこだろうと嫌だとは言えない小心者なので、立ち上がり、


「みんな、ありがとう。これからみんなでこの国を発展させていこう。以上」


 簡単だが俺の気持ちを言葉にした。


 ブラウさんの拍手に続いて、出席者から拍手が起こった。とってつける必要はないんだが、反応が全くないと悲しいものな。そこで王宮の官僚たちの反応を思い出した。連中ホントにちゃんと働いてくれるのかね。




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― 新着の感想 ―
[気になる点] 官僚があまりにもやる気無かったら有能アスカゴーレム軍団に置き換わっちゃうかも… 流石にアスカ軍団でもそこまで臨機応変には動けないかな?
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