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岩永善次郎、異世界と現代日本を行き来する  作者: 山口遊子


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第326話 成王3、成王の試合


 オストラン神殿での晩餐をたらふく食べて、お腹いっぱいになってしまった。大事な試合の前日なのだが、あまり気にせずアルコールも相当飲んでしまった。食後みんなお腹いっぱいだったので、ブラウさん含めみんなでヒールポーションを飲んでおいた。食後にヒールポーション1本、どうですか? と、ブラウさんに勧めた時は、かなり驚かれた。



 試合当日。


 朝食を部屋で食べ、少し落ち着いたところで、俺たちは戦闘服に着替えた。


 華ちゃんは漆黒のメイスを下げ、キリアはフレイムタンを佩いている。俺の如意棒はまだアイテムボックスの中だ。


 午前8時少し過ぎたところで、扉がノックされ、侍女に馬車の準備ができたと知らされた。


 その侍女の案内で神殿の大ホールを横切り正面の通りに並ぶ5台の馬車の2台目の馬車に俺たちは乗り込んだ。天気は曇り。雲はそこまで低く垂れこめてはいないので、少なくとも試合中に雨が降ることもないだろう。


 1台目の馬車にブラウさんたちが乗り込み、3台目以降には神殿の神官や巫女が乗っているという話だった。そして、馬車列の後ろには赤い服を着た神殿兵たちが50人ほど徒歩で続いてくるそうだ。通常王宮内に武器を持った神殿兵などは入れるわけはないのだが、今回のような王権を賭けた成王の試合だけはオストラン神殿の神殿兵も王宮に武器を持って入ることが許されているということで、これはエドモンドⅠ世時代王国の法として定められていたものだそうだ。



 9時20分前に馬車は王宮正門前に到着した。


 そこから歩いて王宮の中に入っていく。その時戦闘服姿のアスカ1号と普段着姿の2号もアイテムボックスから取り出し、俺の左右を警戒するよう指示しておいた。これで飛び道具で狙撃されたとしても大丈夫だろう。


 アスカたちがいきなり俺の両脇に現れたことで、ブラウさんは転移を使える双子の女性が現れたと思ったようだ。


「いえ、この二人は、人に見えますがゴーレムなんですよ。生きものじゃないので、わたしのアイテムボックスに入れて持ち運ぶことができるんです」


 これには、ちゃんと驚いてくれた。



 門の中にはおびただしい数の兵隊たちがいたが、ブラウさんを先頭にして俺たちが試合場に向かうと、道を空けた。


 宮殿の手前の広場にしつらえられた試合場は地面の上に白い線を引いただけの簡単なものだったが、周りには多くの人が集まっていた。


 試合場の宮殿側は一段高くなっている上にテントが張ってあり、並べられた椅子に派手な服を着た男女が座っていた。王宮関係の高位者なのだろう。その反対側にはテントは張っていなかったが席は設えられていた。その席は神殿関係者おれたち用の席だよな。


 試合場の広さは20メートル四方。その中に15メートルほど離して二つ椅子が置いてあった。宮殿側の椅子には試合相手、イシューン・トレゾーが立てた槍を片手で持って座っていた。ブラウさんによるとイシューン・トレゾーの歳は40前後という話だった。肉体的には下り坂だろうが、技や駆け引きといった点では脂の乗り切った年齢かもしれない。


 イシューンの鎧はこげ茶色の革鎧に見えたが、胸には金属板が埋め込まれているのが見て取れた。ヘルメットは磨き上げられた板金製のハーフヘルメットで、ヘルメットの縁から背中にかけて鎖帷子くさりかたびらのような直垂ひたたれが垂れ下がっており、頭頂部にはウルト〇セブンのようなトサカが付いていた。


 試合場に入る前、華ちゃんが思いつく限りの強化魔法をかけてくれ、アキナちゃんも祝福してくれた。その後、華ちゃんは自分たちに魔法をかけ、アキナちゃんも華ちゃんとキリアに祝福した。


 準備が整った3人とアスカ2体は、ブラウさんたちと一緒に席に着いた。アスカたちにも華ちゃんは魔法をかけたのだが、効果があるのかどうかは試していなかったので今のところ分からない。アキナちゃんはアスカたちには祝福していなかった。


「じゃあ、いってくる」


「岩永さん、頑張ってください」


「軽い気持ちでな」


「お父さん、頑張って」


 俺は、ゆっくり試合場の中に入っていき、椅子に腰かけた。如意棒はまだアイテムボックスの中に入ったままだ。得物を見せないのも作戦のうちだからな。俺が手ぶらに見えるので、相手も少し戸惑っているんじゃないか?


 そう思って相手を見たら、目を閉じていた。ドンマイ。


 9時になると都中の鐘が鳴るそうなので、それが試合の合図になる。どこかに司会がいて口上を述べるということはないようだ。


 すっかり忘れていたがここでイシューンを人物鑑定してみた。


 スキル:槍術:Lv3、体術:Lv1、刺突:Lv1


 槍術のマックスレベルはおそらく杖術と同じで5だろうが3だった。体術レベルが1というのが気になるが、まさかタックルをかましてくることはないだろう。相手を過小評価する必要はないが、これならいけそうだ。俺は比較的落ちついて試合開始を待った。


 試合開始に備えて前方を見ていたらいきなり試合場の地面が数カ所うっすらと赤く点滅し始めた。こいつはおそらく華ちゃんの唱えたデテクトアノマリーに反応した罠だ。華ちゃんが離れた位置から解除してくれているみたいで、その赤い点滅が一つずつ消えていった。


 試合場の周りの観客がざわめいている。王宮側の席に座っていた数名が立ち上がって何事か後ろに控えていた兵士に向かって指示を出したようで、その兵士は引っ込んでどこかに駆けていった。


 何かが始まるかもしれない。気を付けるに越したことはない。今の俺の体感時間は、アキナちゃん効果の下でダンジョンを探索している時の2倍近くに引き延ばされている。実質3倍だ。


 相手もヘイストなどで加速している可能性は十分あるが、3倍ということはまずないだろう。


 3倍加速中のため、なかなか試合時間にならないのは少し誤算だったが、そこは仕方がない。


 それでも時間になったようで、方々から鐘の音が響いてきた。引き延ばされた時間の中で予想通り鐘の音は低く、くぐもって聞こえた。


 試合相手が席を立ったところで俺も席を立った。


 俺たちが立ち上がったところで、テニスの試合のボールボーイのような感じで椅子が試合場の外に運び出された。


 立ち上がった俺はいきなりアイテムボックスから如意棒を取り出した。


 相手の表情は読み取れなかったが、俺の得物は聖剣だろうと考えていたはずだ。それが長物だったわけだから、少しは驚いたのではないだろうか。



 俺は両手で如意棒を中段に構えてゆっくり前に出ていく。対戦相手のイシューン・トレゾーも槍を構えて前に出てきた。イシューンは筋骨隆々という感じではなかったが、上背があり俺よりも10センチは背が高そうだ。


 俺の如意棒と相手の槍の長さはほぼ同じに見えるので、相手の間合いは脚と手を含めた上半身の長さの差分、俺より15センチは広そうだ。単純にやり合えば俺の方が不利だが、たぶんスピードで圧倒できる。



 お互いに接近していったところ、まだ間合いの外側にもかかわらずイシューンが槍を突き出してきた。その突きは地面を突いたもので、穂先で砂をすくって俺目がけてかけてきた。そして同時におもいっきり踏み込んで、槍をすくい上げながら俺の腹あたりを狙って突き出してきた。


 目つぶし攻撃を予測していたわけではないが、飛んでくる砂粒は余裕で躱すことができた。


 思った以上にイシューンの突きの速度は出ていなかった。


 まだ、小手調べだろうからそんなものなのだろう。


 目つぶしの砂を上体と頭を反らせて躱した俺は、やや浅いイシューンの突きを軽く如意棒を合わせて反らし、その動きに合わせて如意棒を半回転させながら踏み込んだ。


 こちらも小手調べで別にどこかに当てるつもりなどなかったのだが、俺の如意棒は相手の槍の石突きの手前に当たってしまった。


 たったそれだけでイシューンの槍のその部分が折れ飛んでしまった。


 相手はあっけにとられた顔をしたが、俺もあっけにとられてしまった。


 俺の気持ちはあっけにとられたままだったのだが、そんなことはお構いなしの俺の体が勝手に動き、一歩踏み込みながら、如意棒をさらに半回転させて、後ろに引こうとしていた相手の槍の穂の付け根を軽くはたいた。


 そしたら、その部分で槍が折れて、穂先が飛んでいった。観客席に飛びこんでいったらケガ人が出たかもしれないが、その手前で地面に転がった。


 俺は、飛んでいった穂先を目で追っていたのだが、またまた体が勝手に動いて、気が付けばイシューンの喉元に向けて如意棒を突き出していた。そこでイシューンは、穂先と石突きをなくしてもはや槍とはいえなくなった木の棒を放りだして『降参!』と大きな声を上げた。



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