第320話 アスカ3、レベルアップと……。
朝食時になって、2階でまだ寝ていたアキナちゃんをエヴァが食堂に連れてきた。
「みんな、おはようなのじゃ」
「「アキナちゃん、おはよう」」
アキナちゃんが席に着き、エヴァも席に着いたところで、
「「いただきます」」
「タートル号に乗っておったはずじゃのに、屋敷のベッドの上で寝ておった。不思議なこともあるもんじゃ」
テーブルを囲むみんなが半分笑っている。
「世の中不思議だらけってことだ。
とにかくタートル号は明け方前に都に着いたから、これでいつでも都に跳んでいけるようになった。
アキナちゃん、都に出発するときは教えてくれ」
「了解なのじゃ。
しっかし、わらわが寝ているあいだに都まで行ってしもうたとは、さすがはゼンちゃんじゃ。爺にこのことを教えてやって、都に出発する日をいつにするのか聞いてくるからしばらく待ってほしいのじゃ」
「食事が終わったら、アキナちゃんを神殿に送っていくよ」
「ゼンちゃん、すまんな」
「なに、大したことじゃない。
アキナちゃんが午前中いないとなると一心同体はお休みだから、今日は何をするかな?」
「なら、アスカを連れて街中を歩いてみませんか?」と華ちゃん。
「うん?」
「アスカの戦闘能力が高いことは分かっていますから、知らない人が大勢いる街中でちゃんと行動できるか確かめておいた方が良くないですか?」
「なるほど。それはあるな。
だけど、街中でずーと無口だと逆に目立ちそうだな。アスカが口をきいてくれれば扱いやすいんだが」
「アスカって、本当に話せないんでしょうか?」
「いくら超高性能といってもゴーレムはゴーレムなんだから、話せないだろう」
「今は話せなくても、コアに十分DPが貯まれば、話せるようレベルアップできないでしょうか?」
「あれから何日か経つからDPがある程度貯まってるはずだし、レベルアップならDPが安く済みそうだから、アキナちゃんを昼前に迎えにいって、午後からでも試してみるか?」
「そうしましょう」
朝食が終わったところで、アキナちゃんを連れて神殿の大ホールに跳んだ。いつ頃迎えに来ればいいかアキナちゃんに聞いたところ、1時間後ということになった。
いったん屋敷に戻った俺は、リサにお茶を淹れてもらって、一休みしてからアキナちゃんを迎えに神殿に跳んだ。
約束の時間より少し早かったがアキナちゃんが大神官の爺さんと一緒に大ホールで待っていた。
「ゼンジロウ殿、いつもありがとうございます。馬車は2台の予定です。
式は年末の休みの前日ですので、その3日前に都に着ければと考えています」
「じゃあ、26日の昼過ぎにここに迎えに来ます」
大神官が頭を下げる中、俺はアキナちゃんを連れて屋敷に戻った。
昼食の後のデザートを食べ終え、腹の調子が落ち着いたところで、華ちゃんだけ連れてコアルームに跳んだ。コアルームは当然安全なので二人とも普段着のままだ。
アスカをアイテムボックスから排出して、コアに手を置いた俺は、
「この超高性能美少女ゴーレム、アスカだが話せるようレベルアップできるかな?」
「可能です」
「それじゃあ、やっちゃってくれ。
まてまて、忘れてた。日本語と、ニューワールドの言葉が話せるようにな」
「了解です」
「じゃあ、やってくれ」
「はい。5分ほどで終了します」
たった5分でバイリンガルになるのか。英語も覚えさせることができたら英会話学校の先生に成れるな。
……。
「完了しました」
アスカはさっきから立ったままだったが、作業は終わったようだ。
「アスカ、何か話してくれるか?」
試しに、アスカに何か話すように言ったのだが、こういった質問は逆に難しいよな。とか思っていたのだが、ちゃんとアスカは、
「アスカです。マスター。
ご用があれば何でもおっしゃってください」と、答えてくれた。丁寧語だか尊敬語だかわからないがちゃんと日本語が話せた。ニューワールドの言葉で同じことをしゃべらせたらこっちも淀みもなくすんなり話せた。声は誰かに似ていたのだが案の定思い出せなかった。
「コア、ありがとう」
「どういたしまして」
「簡単にレベルアップできたようで何よりだ。これならどこにでも連れ出せる。今着ている服はダンジョン用の戦闘服だから、普段着を用意しないといけないな」
「岩永さん、アスカは私と同じサイズだから、わたしの服を貸してあげます」
「当面はそれでいいけど、華ちゃんの服が少なくなるだろ?」
「アスカに着せる服を岩永さんがコピーしてくれれば、いいんだけど」
華ちゃんに限らず全員の服は一度俺のアイテムボックスに入れて運んでいるので、全てコピー済みだ。いつでも好きな時に好きな大きさでコピーを作ることができる。もちろん下着もだ。すでにばれているかもしれないが、俺から衣服のコピーについては触れないようにしている。しかし、リクエストがあった以上、俺は当然リクエストに応えるわけだ。
「じゃあ、袋に一式入れて渡してくれればそれを丸ごとコピーするよ」
「はい」
これでコアルームでの仕事は終わった。華ちゃんとアイテムボックスにしまわないままのアスカを連れて屋敷の玄関ホールに戻った。
アスカ用の普段着を用意するといって華ちゃんはすぐに玄関ホールから2階に上がっていったので、俺は居間で待つことにした。
居間にいたのは、いつものようにピアノを弾くオリヴィアだけだった。みんな自分の時間は有効に使っているらしい。と思っていたら、アキナちゃんが俺の横に立っていた。いつの間に俺の横にやってきたのか、まったく気付かなかった。恐るべし。
華ちゃんがアスカ用の衣服を用意してくるのをなぜかアキナちゃんと居間で待っていたら5分ほどで大きな紙袋を3つ手した華ちゃんが居間に下りてきた。
「余所行きも入ってますから、これだけあれば、当分大丈夫でしょう」
「了解」
俺は受け取った3つの紙袋をそのままコピーして、紙袋を3つ華ちゃんに渡し、残った3つをアスカに渡した。
「華ちゃん、アスカを連れていって、服を着替えさせてやってくれ」
「はい」
二人は紙袋を持って2階に上がっていった。
「アスカの最初の格好で街を歩けば注目の的間違いないと思うのじゃが」
「俺もそう思うが、注目されすぎてもな」
10分ほどして華ちゃんとアスカが居間に現れた。二人とも同じ服を着てくるものと勝手に思っていたが、違う服だった。当たり前か。
「華ちゃんの服がよく似合ってるな。というか、華ちゃんのスタイルがフィギュアなみってことか。それはそれですごいな」
率直な感想を口にしたら、華ちゃんが顔を赤くした。おじさんがあまりあからさまに女子の容姿についてコメントしない方が良かったのかもしれない。
まっ、今さらだな。
「それじゃあ、試しにアスカを連れてデパートにでも行ってみるか。というか、今度みんなでこの国の都に見物にいこうと思っていたから、ここ用の余所行きを作っていた方がいいか」
「日本用の余所行きでもよいのではないか? 見た目は明らかに日本物の方がカッコいいのじゃから。わらわたちが、この国のファッションリーダーになるのじゃ!」
ファッションリーダーがなんだかわからないが、確かにこっちの服は全体的に地味であまり色も良くはない。日本から衣料品を輸入したら飛ぶように売れるかも知れない。この世界の産業を破壊したいわけではないのでそんなことはしないが、着て歩くくらいならいい刺激にはなるだろう。
とか考えていたら、知らぬ間にエヴァが俺の隣りに立っていた。アキナちゃんの時と同様、全く気付けなかった。俺って、アサシンなんかに狙われたらいちころなんじゃないか?
まあ、如意棒を持って戦闘モードになってしまえばそんなことはないと思うが、いつも戦闘モードってわけにはいかないものな。
そうだ! というほどではないが、アスカはおそらく寝る必要はないだろうから、俺が寝ている間のボディーガードにしてもいいし、最初のゴーレム構想である、屋敷の警備員として使ってもいい。
「お父さん、アスカってコピーできないんですか?」
俺がまた黙ったままで妙なことを考えていたら、エヴァに話しかけられた。
「おっ。
超高性能ゴーレムは勝手にコピーできないと思っていたから試していなかった。
アスカ、ちょっと収納するからな」
「はい」
「うわっ! アスカが本当に喋った」「驚いたのじゃ!」
エヴァとアキナちゃんが、アスカがちゃんと返事したので驚いた。
そう言えば、アスカが話せるようになったことをみんなに言っていなかった。そのうちみんな知るから、あらためて俺からみんなに説明しなくてもいいだろう。
それはそれとして、アスカを収納して複製ボックスに入れ、コピーを試したところ、
「できてしまった」
アスカをコピーしてしまったのだが、コピー疲れはほとんど感じなかった。ということは、本当の意味で量産可能ということだ。いいのかそれで!? 俺がその気になったら、101人アスカちゃん大行進だってできてしまうぞ。




