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岩永善次郎、異世界と現代日本を行き来する  作者: 山口遊子


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第317話 美術館と焼肉


 今回のコンクールは美術コンクールなので、西洋画だけでなく日本画はもちろん彫刻や書なども館内に展示されている。


 美術館前でのテレビ局のインタビューを無難にこなしたイオナを連れて、俺たちはまずイオナの絵が飾ってある西洋画のコーナーに回っていった。そこに美術雑誌の人がいるはずだ。


 さすがは総理大臣賞と文部科学大臣賞をとった作品が並べられているだけあって、かなりの人がイオナの2枚の絵を眺めていた。



「総理大臣賞のこの『楽園』。どこかルソーを思わせる幻想的なところもあるが、幻想を超えた神秘性と写実を兼ね備えたところが評価されたんだろうな」


「確かに。おまえの言う通りだ。そういう意味ではルソーを超えたと言ってもいいんじゃないか」


「こちらの文部大臣賞を取った『若さ』。子どもとも大人ともつかないモデルの、この退廃的な目は、ただの画家では描けないぞ」


「まさに天才だな。画壇に彗星が現れたなどと評した男がいたが、これは彗星というより超新星だ。岩永イオナはまだ13歳という話だから、ピカソを越えていくんだろうな」


「おまえなら、彼女の絵に号いくら付ける?」


「総理大臣賞と文部科学大臣賞。これだけで号100万。話題性で50万。今後の期待で50万。今のところ200万だな。20歳になるころには500万いくと思うぞ」


 ……。


 イオナの絵の前で、なんだか妙に専門家風な解説をするおじさんの二人組がいた。号いくらというのはおそらく絵の大きさ当たりの値段なのだろう。おじさんたちは画商か何かなのか?


 おじさん二人組の横顔を見たら、どこかで会ったことがあるような気がした。


 どこで会ったのか思い出そうとしたが、いつもと変わらず全く思い出せなかった。おじさんなんぞを思い出しても仕方がないので早々に思い出すことは放棄してしまった。


 俺がそんなことを考えているあいだに、おじさんたちは移動していった。




 時刻がちょうど14時になったのだが雑誌社の人が現れない。忙しくなって来られなくなったのかと思っていたら、


 雑誌社の人らしい人とカメラマンが駆けてきた。


 保護者然とした俺に名刺を渡して、イオナにインタビューだか取材を始めた。今回はさすがに美術雑誌の記者からの取材だけあって、取材はかなり専門的な内容だったと思うが、やはり、絵を始めてまだ1年も経っていない発言には魂消たまげたようだ。


 最後にイオナの絵の前の人だかりに移動してもらい、イオナが自分の絵の脇に立ったところをカメラマンが写真に撮って取材は終わった。


 コンクールの申込書に写真撮影は許可すると書いてあったので、はるかさんは例のデジカメを持参していたので、はるかさんも雑誌社のカメラマンと一緒になって写真を撮っている。


 イオナへの取材の後、雑誌社の二人は礼を言いながら奥の方に移動していった。まだ取材を続けるのだろう。


 インタビューが終わったところで、俺たちもじっくりイオナの絵を鑑賞した。


 鑑賞したといっても、美術的センスのカケラもない俺なので、素晴らしいというくらいの感想しかなかった。



 その後、俺たちは美術館を一回りして屋敷に戻った。


 午後からみんなで出かけた関係で、今日の夕食は外食にすることにしていた。ダレンの街の高級レストランでもよかったが、ここのところ食べていない焼肉が食べたくなったので、俺の街の隣り街の商業ビルに入っているちょっとお高い例の焼き肉屋にいくことにした。


 早めに風呂に入った俺たちは、再度日本用お出かけ服に着替えて、商業ビルに跳んだ。



 焼き肉屋では、前回同様個室を取ってもらった。はるかさんとアキナちゃんはこの店は初めてだ。


「ここは高級すぎていままで怖くて入れなくて、今日が初めてです」と、はるかさん。


「なんだか店の中からいい匂いが漂ってきているのじゃ」と、鼻をクンクンさせながらアキナちゃん。5年分歳をとったはずなのだが、若干見た目が変わっただけで、中身は全く変わってないようだ。当たり前か。


 みんなで席に着いて華ちゃんが中心となってメニューを見ながら店の人にどんどん注文していった。驚いたというか、もう日本でも普通なのだろうが、モンスターの肉もメニューに入っていた。


 ダンジョン・ボアー、ダンジョン・ラットの各部位がどれも特上肉並みの値段でメニューに載っていた。ダンジョン・ラットは大ネズミのことだろう。さすがに焼き肉屋だけあって蜘蛛や昆虫系はおいていなかった。


「だいたいこんなところかな。ダンジョン産のお肉はどうします?」と、華ちゃんが聞いてきたので、


 特にダンジョン産の肉が食べたいわけでもなかったので、


「モンスターは、いいんじゃないか?」


「そうですね」


 俺とはるかさんとリサはビールを飲むということで、固まって座っている。華ちゃんと子どもたちはソフトドリンクだ。


 まずは乾杯だ。


「それじゃあ、まずはイオナの総理大臣賞と文部科学大臣賞受賞をあらためて祝って『乾杯!』」


「「かんぱーい!」」


「「イオナ、おめでとう」」


「ありがとう」


 乾杯の後はテーブルの上に並べられたお皿の上の肉をどんどん網の上に並べていく。今回は忘れないように品目ごとに皿ごとコピーしているので、屋敷で好きな時に高級焼き肉を高級っぽく堪能できる。


 ……。


「みんなでいろいろな肉を食べて楽しいのじゃ!」


 アキナちゃんはご機嫌で肉を食べているのだが、食べているのはいろいろな肉ではなく牛のいろいろな部位だけどな。


 どんどん食べていって、一度網を代えてもらったらみんなの食べるペースが落ちてきた。


 それでも、それなりの量の肉を食べ、最後にパインシャーベットで締めた。もちろんこれもコピーしている。


「お腹がきつい人?」


 みんな手を挙げたので全員にヒールポーションを配って、もちろん俺もポーションを飲み、瓶を回収して少し落ち着いたところで席を立ち会計を済ませた。


 店をでてから人の少ない階段の踊り場に回って屋敷に帰った。




二人組のおじさんと言えば、そうあの二人です。次の出番はおそらくエンディングの人物紹介か。

次話より、成王編となります。


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