第316話 イオナ8、インタビュー
防衛省での会議を終えて華ちゃんを連れて屋敷に帰る前に、スマホをみたら親父から電話があったようだ。
いったん華ちゃんを屋敷に帰して、それから俺は実家に跳んだ。
実家の玄関の土間から奥に向かって「親父ー。俺だー。何の電話だったー」と、大声で聞いたら、
奥の方から親父が『今いくけん』と返事があり、すぐに親父が奥からやってきた。
「イオナちゃんのことで、いろんなところから取材してえと電話がかかってきちょー。
今は連絡つかんが、週明けには伝えちょく言ーて電話を切っちょーが、儂はどうすらええ?」
「親父、そいつは済まなかった。
ここのことはコンクールの主催者しか知らないはずなのに困ったものだ。とはいえ、イオナが有名になるチャンスだしなー」
俺は俺のメールアドレスを紙に書いて親父に渡して、
「今度電話がかかってきたら、ここに書いたメールアドレスを向こうに教えてやってくれ」
「わかった」
親父も面倒だったろうが、孫のためだから我慢してくれ。
「それじゃあな」
明日から一日一度マンションに跳んで、メールが来ているか確認だ。
親父の用件は一応終わったので、俺は実家から直接コアルームに跳んで全ダンジョンの1階層から14階層の階段と階段を結ぶ本道間へのモンスターが侵入しないようコアに指示しておいた。
これで、本道にケーブルを敷設して無線基地局の設置も可能になるはずだ。付随効果として、15階層より上の階層では、モンスターは階段を移動できなくなるため、いきなりケイブ・ウルフとかバジリスクといった強力なモンスターが浅い階層に現れることはなくなるはずだ。
ケーブルなどの設置は埋設した方が安全なので、建機が簡単にダンジョンを出入りできるよう出入り口の幅を2メートル、高さを1メートル拡幅することも指示しておいた。これで、でき上りの幅5メートル高さ3.5メートルとなった。ピラミッド周辺にはすでに施設が建っているのでピラミッドの大きさを変えず出入り口の大きさだけ大きくした関係で結構見た目は悪いと思う。
出入口は大きくしてやったが、大型機械がダンジョンを出入りするためには、揺らぎの前のダンジョン免許証読み取り機を移動させる必要がある。まっ、それくらいは大したことないだろう。
次の会議までには、サンプルとして渡したダンジョン・アニマルの分析結果が出るはずなので、週末あたりからダンジョン・アニマルを発生させていくよう指示もしておいた。
週が明ければ、新しいモンスターであるダンジョン・アニマルの情報が広まっているはずだ。すぐに効果が表れるはずはないが、少しでも冒険者の数が増えればウハウハだ。
翌日。
メールがきていないか朝からマンションに跳んだ。そこでスマホをみたら、3件メールが来ていた。テレビ局2社と美術雑誌社1社だった。
メールの中身はどれも取材依頼だった。あとでイオナの都合を聞かなければいけないが、基本取材は受ける方向でいいだろう。
ということで、屋敷に戻った俺はイオナを見つけて取材のことを話しておいた。
「いつでもいいです。お父さんが決めてください」
「分かった。
面倒だから、同じ日にまとめて取材してもらうよう連絡してみる」
今日は、はるかさんの授業が終わる午後からみんなで美術館にいくことにしているから、できればその流れで取材してもらえばいいが、向こうにもスケジュールがあるだろうから無理かもな。それでもダメもとで、取材を申し込んできた先に同一文面で返信しておいた。
『本日、午後2時ごろXX美術館の受賞作まえにおりますので、その際取材を受けます。取材先は複数のこともありますのでご了承ください。
岩永イオナ
保護者、岩永善次郎拝』
書き方はよく分からないが、こっちは素人なのでこんなのでいいだろう。
送信!
そしたら、10分も経たないうちにいずれも取材にいくという返信が届いた。よほどニュースがないのか、イオナの2賞同時獲得がスゴイのか。やっぱ後者だろうな。
午後から、俺たちは9人揃って六本木の美術館に跳んだ。時刻は13時30分。美術館からちょっと離れたところから正面玄関に向かったら、途中にテレビ局の大きな車が2台並んでいた。テレビに録画されるのか?
俺とイオナは一緒に歩いていて、残りの7人は俺とイオナの後ろをついて歩いている。
テレビ局の自動車を横に見て美術館に入ろうとしたら、いきなりテレビ局の腕章を付けたお兄さんに呼び止められた。
「N〇Kのものです。
岩永イオナさんの保護者の方でしょうか?」
「はいそうです」
「こちらが岩永イオナさんですね」
「はい」
イオナの写真は授賞式で撮られていたから、マスコミにイオナの顔かたちが知られているのは当然だな。美術館の中に入る前にインタビューした方が他の人に迷惑にならないと思ったのだろう。
「それでは、インタビューさせていただきます。よろしいですね?」
「はい。よろしくお願いいたします」と、イオナが答えた。
大きなビデオカメラを背負ったカメラマンとアナウンサーだかレポーターがやってきて、イオナのインタビューが始まった。
「今回のXX展で総理大臣賞と文部科学大臣賞の同時受賞を果たされた岩永イオナさんです。年齢は弱冠13歳。
岩永さん、総理大臣賞と文部科学大臣賞の同時受賞おめでとうございます。
このコンクールが始まって以来の快挙ですが、今のお気持ちは?」
「大変うれしいです」
「この受賞で誰が一番喜んでくれましたか?」
「一番はお父さんです。もちろん家族のみんな、それとお爺さんも喜んでくれました」
「なるほど。
岩永さんは何歳から油絵を始めたのでしょうか?」
「えーと、始めたのは今年の年明け?くらいですから、12歳だったと思います」
「えっ!? 絵を始めてまだ1年も経っていない?」
「そういえばそうでした」
「では、それまで何か絵に関係するようなことをやっていらしたとか?」
「その前は去年の暮れから一週間くらい色鉛筆で絵を描いていました」
「そ、そうなんですね」
事実だから仕方ないが、絵を目指している人が聞いたら怒り出しそうだな。
……。
その後は、無難な質問が続き、イオナはそつなく答えていた。最初のころイオナは口数が少なかったが、ちゃんと受け答えしていて感心してしまった。それも日本語だから恐れ入る。才能の塊だったってことだな。
最後に俺にマイクが向けられた。
「お父さまは、イオナさんの受賞を聞いてどうでしたか?」
「いいところまでいくのではとは思っていましたが、まさか応募した絵が二つとも大層な賞をとるとは思っていませんでした」
そう無難に答えたところで、後ろにいたハズのアキナちゃんが俺の横に立って、
「わらわはイオナの姉妹なのじゃが、最初からイオナは賞を取るとわかっていたのじゃ」と、マイクに向かって言い切ってしまった。
普通に聞けばかなりイタい発言だが、アキナちゃんは色が白い上にプラチナブロンドなので北欧風超絶美少女の発言だったものだから、レポーターが食いついてしまった。
「イオナさんの絵のどのようなところが良かったと思ったのですか?」
「それはわらわにしか分からないところなのじゃ」
「なるほど。
それではイオナさん。これからの活躍をお祈りします」
レポーターはアキナちゃんに話を振ったものの、話にならなかったので、そこでインタビューは終わった。
N〇Kのインタビューの後は引き続き民放からのインタビューがあった。こちらはお昼のニュースショウの中継だそうで、スタジオのキャスターとのやり取りとなった。そんな番組など一度も見たことはないはずだが、これも無難にイオナはこなした。ここではアキナちゃんは口を出さなかった。見ればアキナちゃんの両肩には華ちゃんの左右の手が乗っていた。
マスコミが放っておかないのではないかと言う感想をいただいたので、急遽1話挿入しました。




