第314話 ダンジョンマスター2。勇猛果敢3
華ちゃんのアイディアを聞いた俺は、忘れないうちにと思って、その場でコアルームに跳んでいった。
コアルームではメタルバジリスクたちが用もないのにノシノシと徘徊していた。実に頼もしい。
別にコアに手を置く必要はなかったが、何となくコアに手を置いて聞いてみた。
「……。こんな感じのモンスターを作ることはできそうか?」
「可能です。作り出すコストはこれまでのモンスターと比べればかなり軽くなるので数を揃えることも容易です。
第1階層から第5階層、今から変更しますか」
「変更はそのうち指示するからそのタイミングでやってくれ。
今までのモンスターもある程度は残しておいてくれ。ケイブ・ボアーがいきなり1階層に出たんじゃけが人続出だから、ケイブ・ボアーは3階層以降とするか。そのかわりケイブ・ボアーはちょっと多くてもいいからな」
ケイブ・ボアーの供給が滞ってしまうと焼き肉屋が困るからな。
「了解しました」
「豚もデカい豚はデカいから、運搬のことを考えると大きくても150キロまでだな。
第6階層からは、牛も欲しいな。乳牛じゃなくて肉牛な。大きさはやっぱり150キロくらいまでだな」
「了解しました」
「あとはそうだなー。10階層からはそいつらを2倍まで大きくしたのを出してみるか」
メタルゴーレム1体だけだと150キロを超えて持ち歩いたらバランスが悪くて歩きづらくなるけど、2体使えば300キロ以上運べるはずだからな。
食用ガエル、ブタ、ニワトリ、七面鳥、それに牛がモンスターかと聞かれればモンスターではない。ダンジョン・アニマルとでも名付けておけばいいな。
「牛は赤身の牛と、霜降り、2種類な」
「了解しました」
コアに注文を付けていたら、肉屋になった気分だ。
ダンジョン・アニマルで日本国内の養鶏、畜産農家が圧迫されたらマズいが、海外への輸出を中心にすればそこまで影響はないんじゃないか。
「さっきも言ったが、変更するタイミングは後日指示する」
「了解です」
いきなり、今まで見たことのない動物が現れたら食用になるのかどうか確認してからじゃないと日本じゃ売れないはずだ。
ダンジョン・アニマルの見本を先に防衛省に持っていった方がいいな。明日は週明けの会議の日だから今ここでやってしまおう。
「コア、試しに食用ガエル、ブタ、ニワトリ、七面鳥、それに牛を一匹ずつ作ってくれるか?」
「了解しました」
俺の前に現れたダンジョン・アニマルを、現れた順に如意棒で頭を潰して、アイテムボックスに収納していった。昔の俺だったら、屠殺などできるはずもない芸当だろうが、杖術スキルのおかげか、精神的抵抗はなかった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
そのころ、足立たち勇猛果敢の3人は第2ダンジョンの第2階層の枝道をモンスターを求めて移動していた。善次郎が与えたスキルブックで弓術スキルを得ていた火野は人のいないことを確認してピストルクロスボウを洞窟の先に向けて試しに撃っている。
洞窟の真ん中を適当に狙って撃っただけなので、命中力が上がったかどうかは判然としなかったが、ピストルクロスボウのコッキングレバーを引いてボルトをつがえる速さはかなり上がった実感があった。しかも、コッキングレバーを引く時かなり軽く感じられた。
「火野、試し撃ちしてどんな感じだ?」
「うまく命中するかはまだ分からないけれど、コッキングレバーも軽くなったし、矢をつがえるスピードがかなり上がったと思う」
「スキルブックか。凄いものを貰ったな」
「とにかく、このことと一心同体のことは秘密にしておかないと、俺たちに言いがかりをつけてくるような連中が現れるかも知れないし、一心同体にも迷惑がかかるからな」
「そうだね」
そういった話をしながら枝道を歩いていたら、ほどなく前方から大蜘蛛が2匹現れた。
「メタル大蜘蛛は待機させるから、火野、ピストルクロスボウを試してくれ」
「うん。いくね」
火野はピストルクロスボウをコッキングしてボルトをつがえ、接近する大蜘蛛のうち近い方を狙って発射した。ボルトは大蜘蛛の眉間の真ん中に命中し、その一撃だけで大蜘蛛はひっくり返って脚を上にしたまま動かなくなってしまった。
火野は第1射の後すぐにコッキングして2本目のボルトをつがえ、2匹目の大蜘蛛に向けて発射した。2射目のボルトも正確に2匹目の大蜘蛛の眉間の真ん中に命中し、2匹目もひっくり返って脚を上にしたまま動かなくなってしまった。
「火野、スゴイじゃないか!」
「まぐれじゃないみたいだな」
「わたしも驚いてる。スキル一つでこんなにすごいなんて」
「一心同体の人たちって、弓術のスキルは使わないからってくれたんだよな? それにZさんは確認したら弓術Lv1だって言ってただろ?」
「うん。言ってた。スキルにはレベルがあって、そのスキルレベルを確認するスキルも持ってるわけだよな」
「鑑定スキルだよ」
「鑑定スキルはおいといて、弓術Lv1ってことは、Lv2とか3があるってことだろ?」
「だろうな」
「一心同体の人たちにとって弓術Lv1のスキルが不要ってことは、もっとすごい攻撃スキルを持っていて、そのスキルレベルは少なくとも2はあるってことじゃないか?」
「そうなんでしょうね。あの感じだとLv2とかじゃなくって、4とか5かも知れないわよ」
「だよな」
「Zさんは大人だったけど、後の3人は高校生と中学生にしか見えなかったものな。それであの貫禄。やっぱ防衛省の最終兵器。日本一のチームは違ったな」
「上には上がいることが分かったし、わたしたちは上を目指すにしても地道に行こうね」
「もちろんだ。そもそも、今の収入だってとんでもない収入だしな」
「だな。
地道に行こうと言ってた後だけど、火野がレベルアップしたことだし、そろそろ俺たちも第3階層に下りてみるか?」
「そうだな。資金はたんまりあるから、第3階層できついようならメタル大蜘蛛をもう一匹借りてもいいしな」
「うん、そうだね」
この日からチーム勇猛果敢の快進撃が始まることになる。




