第313話 ダンジョンマスター1
美術コンクールの記念パーティーでは、適当なところで抜け出して、俺たちはイオナともども屋敷に帰った。
翌日。
今日から美術館でイオナの絵が飾られるのだが、初日は混みあいそうな気がしたので、見送ることにした。その代わり、俺一人早朝日本に跳んで、駅売りの新聞を買ってきた。
買ってきた新聞をめくっていくと、美術コンクールの受賞者名が、集合写真と一緒に文化面に載っていた。写真の中のイオナは一番前の列の真ん中だった。イオナの顔写真は載っていなかったが『日本の西洋画壇に超新星!』。との見出しで、イオナの2枚の絵が解説されていた。
新聞はアイテムボックスに入れてコピーしたので、いくらでも新品で見ることができる。あとで親父のところに置いてきてやろう。
朝食の片付けが終わったところを見計らってみんなを居間に呼び、コタツの上に新聞を広げてイオナの雄姿を見せてやった。
「この写真を日本の何百万の人が見るんだ。凄いことだぞ」
「「イオナ、すごーい」」
「うん。これからも頑張るね。お父さんありがとう」
「ああ」
俺はイオナの写った写真が見えるよう新聞の文化面を開いて大きな額縁に入れ、絵画部屋の壁に飾ってやった。その後、俺は新聞を渡すため親父のところに跳んでいった。
「本当にイオナちゃんはすごえんだなー」
「親父の孫だ」
「ああ、そうだな。こらぁ額に入れて飾っちょかなならんな」
親父もすごく喜んでくれた。俺と同じことを考えたようだ。家の周りには額縁を売っているような店は当然ないので、絵画部屋で飾ったのと同じ額縁を親父に渡しておいた。
「おっ! すまんな」
この程度では親父は驚かなくなったようだ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ダンジョンマスターになったからか、不思議なことに俺の中にダンジョンを発展させたいという意欲というか欲望というかそんなものが生れてきたような気がし始めた。
実家から屋敷に戻った俺は、日本のダンジョンマスターとして、これから何をなすべきか考えておくことにした。
ダンジョンを発展させるためにはDPが必要ということだし、DPはダンジョンの中で冒険者が活動することで増えていくという。
普通のダンジョンというものがあるのかどうかは分からないが、日本に現れたダンジョンを含め普通のダンジョンでは、冒険者のニーズを何となく推し量って、冒険者を呼び込む仕組みを作っているのだろう。
ダンジョン利用者の立場に立って俺がダンジョンを適切に経営していけば、効率よくダンジョンが発展していきダンジョン利用者も満足していくはずだ。
言い方を変えれば、ダンジョン利用者を満足させることでダンジョンが発展していくに違いない。
ダンジョン利用者としての俺の不満は、まずは電波がダンジョン内では届かないことだ。無線の基地局があればいいのだが、通信用も電源用のケーブルもない。ケーブルを引いて機械を設置したとしても、放っておくといつモンスターに破壊されるか分からない。
ならばせめて階段から階段までの主要道はモンスター進入禁止にしてしまえばいい。モンスターの知能が低すぎて、ダンジョンマスターの意向に沿わなければ問題だが、さすがにそんなことはないと思いたい。
後は、ダンジョンへの出入り口が狭すぎて、ダンジョンの中に大型機械が入らない。これなんかは出入り口を大きくするだけだから簡単にできるはずだ。ついでにバレン北ダンジョンのように、主要通路を拡幅してついでに床は凸凹のない道路にしてしまうのもアリだな。バレンのダンジョンでは俺が工事をしたが、コアに頼めば簡単だろうし、大型機械が入るなら防衛省だかダンジョン協会かどこかで工事をする可能性もある。
そのうち大空洞に直接出入りできる出入り口を日本のどこかに作れば、地下都市も夢じゃなくなる。アニメでは第2なんちゃら市とかあったが、広さからいって第2日本だな。少なくとも地震と台風はないから、第1日本より住みやすくなりそうだ。
日本のダンジョンを改造することを考えていたら楽しくなってきた。
待てよ、いちおう俺はダレン南ダンジョンを攻略したはずなのだが、あそこにコアはなかった。南ダンジョンだけ特別な可能性がないわけではないが、南ダンジョンはダレン北ダンジョンと繋がっていて、ダレン北ダンジョンの延長線にダレン南ダンジョンがあるのかもしれない。ダレン北ダンジョンだって、どこかのダンジョンの延長線のダンジョンの可能性がないとは言えない。
日本のダンジョンのように下に潜っていけばいずれ同系統の全てのダンジョンが繋がって1つのコアが見つかるかもしれない。またまたやる気が出てきたな。次回からのダンジョン探索にはアスカもいるし面白くなりそうだ。
「華ちゃんはどう思う?」と、コタツの向かいに座っている華ちゃんに聞いてみた。
「えっ? 何でしたっけ?」
楽園オウムに戻ったピョンちゃんを肩に乗せた華ちゃんはそっちに夢中で俺の話を聞いていなかったらしい。いやまて、そもそも俺は今、華ちゃんに話していたのだろうか? 今となっては霧の彼方。どっちにしても華ちゃんが何も知らないという事実は変わらない。
「ほら、俺って日本のダンジョンマスターになっただろ。ダンジョンを発展させることは俺の義務だと思うんだよ。
ダンジョンを発展させるために何をすればいいかってこと」
「人がたくさん入ればいいって話でしたから、入りやすくすればいいんですよ」
「それはそうだけど。具体的には?」
「危険度をぐっと下げて、ダンジョンに入ったらある程度の利益が保証される。
そうなれば、冒険者人口はかなり増えると思います」
「そうか。深いところは本当の意味でのプロに任せて、浅いところは今よりもっと難易度を下げた上、モンスターの遭遇率を上げるってことだな。
だけど、今じゃメタル大蜘蛛を日本の冒険者は使っているから、ちょっと難易度が下がりすぎないか?」
「初心者ではフィギュアのレンタルは厳しいんじゃないですか? 特に高校生くらいの冒険者だとなおさら」
「確かにそうだな」
「ニーズから言えば、動物型のモンスターの肉が一番でしょうから、ケイブ・ボアーじゃなくてダンジョン・ピッグくらいでちょうどいいんじゃないでしょうか?」
「だけど、それだけだと代わり映えしないぞ」
「あとは、食用ガエルとか、ニワトリなんかも。七面鳥もいいかも?」
「そいつらをある程度大型化して、ダンジョンって接頭語を付ければいいものな」
俺はダンジョンのハード的なことばかり考えていたが、こういったソフトテクアプローチはいいな。
よし! 善は急げだ。覚えているうちにコアに指示してしまおう。




