第307話 ダンジョン・コア9、美少女ゴーレム2。
床の上に広がっていたドラゴンの血はコアに命じて片付けさせ、コアルーム防衛用に全部で6体メタルバジリスクをコアルームの中に放しておいた。この部屋に侵入者が現れるとはとても思えないが、もし現れたとしても、侵入者がバジリスクを見たら驚いて逃げるだろう。念のため101匹蜘蛛ちゃん大行進も出したかったが、華ちゃんの、それは止めておきましょう。のひとことで取りやめた。
超高性能美少女ゴーレムの創造に2時間かかるということだったので、俺たちは、コアの乗った台座の前で例のごとくブルーシートを敷いて、ヘルメットと手袋をとって車座に座り込み休憩に入った。
みんなに飲み物を渡したあと、今日はたこ焼きを配った。
爪楊枝にたこ焼きを突き刺してフーフー息を吹きかけて口の中に入れ、ホーホー言いながらたこ焼きを食べる。
「ゼンちゃん、死んでおったとき、どんなじゃった?」
「死んでたんだから全然覚えていないけど、夢を見ないで目が覚めたような感じだった」
「それはそうであったな。わらわも石にされていた間のことは全く覚えておらんからの。すごく痛い思いをして石にされたと思うたら、目が覚めた。そんな感じじゃった。
後で爺が、ゼンちゃんが呪いを解いてくれたと教えてくれたんじゃがの。
ゼンちゃん、あの時は、ありがとうなのじゃ」
「そうだったな。なんか大昔のような気がするが、あれからまだ1年ちょっとしか経っていないんだものな。
足が石化して、キリアに足をちょん切ってもらった時より、今回の方が楽だった」
「岩永さん、死んじゃったほうが楽だったなんて言っていると、バチが当たりますよ」
「それはそうだった」
話をしているうちに、5年歳をとったはずのアキナちゃんにはまるで違和感がなくなった。不思議なもので最初から今の顔だったような気もしてきた。
「話は変わりますが、最初のゴーレムは一瞬でできたのに、リアル美少女ゴーレムに2時間かかるというのはそれだけ高性能になるってことですよね?」
「ダンジョン・コアが何かを創造するにはDP、ダンジョンポイントっていうのを使うそうなんだけど、実写版美少女ゴーレム創造に今使えるDPを全部つぎ込んだからな」
「なんだかすごいゴーレムができそうですね」
「ワクワクだな。
ゴーレムだからダンジョン限定になるんだろうが、ホントにそれほど高性能だったら俺たちのパーティーに入れてもいいかもな」
「そうですね」
「楽しみだなー」
「わくわくしますね」「早く見たいのじゃ」
……。
「そういえば、このダンジョン、何か名まえがあるのかと思ってたんだけど、名まえが付いていなかったんだ。
カッコいい名まえを付けてやりたいんだが、何かいい名まえはあるかな?」
「名まえなら、わらわたちのダンジョンじゃから、一心同体ダンジョンでよかろう」
「アキナちゃん、それはちょっと」と、華ちゃんが難色を示した。
「確かにダンジョンと一心同体じゃマズそうじゃものな。
ならば、ダンジョンマスターのゼンちゃんの名を取って、ゼンジローダンジョンはどうじゃ?」
「俺は構わないといえば構わないけど、それだとなんだか、全自動ダンジョンに聞こえるぞ」
「ならば、ダンジョン・イワナガはどうじゃ?」
「どっかの集合住宅の名まえみたいだな」
……。
ダンジョンの名づけは、結局結論が出ないまま見送りとなってしまったが名まえがないと少々不便なので、暫定的にZダンジョンということになった。
たこ焼きを食べ終えて、飲み物も飲み終えたのだが、まだ30分しか経っていない。
「あと1時間半、暇だな。
その間に、コアに聞いておきたいことを聞いておくか」
俺はコアに手を置き、
「コア、これからは、俺の頭の中に直接話すんじゃなくて、みんなにも聞こえるよう音
にして話してくれるか」
「了解しました」
「まず、日本の中に32個のピラミッドが現れて、32個のダンジョンへの出入り口ができたが、その32個は全部コアが作ったのか?」
「はい。その通りです」
「ということは、全部の出入り口は結局のところこの部屋までつながっているということか?」
「もちろんです」
「なるほど。
ここに来る前に32個似たような階層が続いていたが、あれらの大きさはどうなっている?」
「マスターの言葉で言うと、どれも直径700キロの円形をしています。50キロほどの垂直な壁で囲まれ、そこから上の天井部分は半球状になっていて高いところで地面から400キロあります」
何だよそれ、地球で400キロ上空って言えば宇宙空間じゃないか。まあ、いいけど。
「じゃあ、俺の言う第2ピラミッドってわかるかな?」
「わかります」
「それと、俺たちのダンジョンって分かるか?」
「分かります」
「それで、第2ピラミッドの近くで俺たちのダンジョンと繋がっているところがあるだろ?」
「はい。認識しています」
「あそこは、俺たちのダンジョンから、こっちへの一方通行じゃないか」
「そうですね」
「あれって、双方向にできるかな?」
「いまはDPが不足しているのでできませんが、DPが貯まれば可能です」
「そうなんだ。ところで、DPはどうすれば貯まるんだ?」
「外部からダンジョン内に侵入した者がダンジョンで活動することで貯まっていきます」
「なるほど。
今32個あるピラミッドだけど、増やしたり減らしたりできる?」
「増やすにはDPが必要ですが、減らすためにはDPは必要ありません」
「なるほど」
「先ほど、マスターのいう『俺たちのダンジョン』との接続を双方向にするためのDPが貯まりました。接続しますか?」
「今はいい」
「了解しました」
華ちゃんたちは俺とコアとの会話をじっと聞いている。と思ったが、じっと聞いているのは華ちゃんだけで、キリアとアキナちゃんは二人でおしゃべりをしていた。
「後は、スキルブックだけど、作れるかい?」
「はい、スキルによっては作れないものもありますが、ほぼ可能です」
「魔術スキルのスキルブックを作れるかい?」
「可能です。
スキルブックは発見時の状況によりランダムにスキルが付与されます。
ランダムスキルの場合は1万DP、指定スキルの場合は通常のスキルで10万DPのコストがかかります。いま魔術スキルのスキルブックを作りますか?」
「華ちゃん、どうする?」
「全然困っていないので、今じゃなくてもいいです」
「もう少しDPが貯まって余裕ができてからにするか。そういえば、鑑定はレベルアップした方がいいんじゃないか?」
「そう言えばそうですね」
「コア、鑑定のスキルブックは作れるかい?」
「鑑定のスキルブックは作れません」
「そうなんだ」
「はい。申し訳ありません」
「できなければ仕方ないけど残念だな」
……。
コアとの会話も一段落して、ブルーシートの上でまったりして、そろそろ2時間経った頃だと思ったら、いきなり俺の目の前、ブルーシートの上に白いプラグスーツ姿の美少女ゴーレムが立っていた。
「うおぉー。びっくりしたー。
さっきのアニメ顔よりこっちの方が断然いいな。ゴーレムだから話はできないんだろうが、なかなか精悍でカッコいいな」
「今度は本物ですね!」
「凄いのじゃ。まるで人間なのじゃ!」
「お父さん、さすがです」
「いい時間になったから、そろそろ帰るか。
その前に美少女ゴーレムをしまっておこう」
人間としか見えない美少女ゴーレムをアイテムボックスの中にしまうのは多少抵抗があったが、明日以降性能を試したいので、ちゃんと収納しておいた。
ブルーシートを片付け、みんなが俺の手をとり、俺が華ちゃんの肩に乗るピョンちゃんの翼に手を添えて屋敷の玄関ホールに転移した。
玄関ホールの止まり木にピョンちゃんを止まらせたのだが、楽園オウムになったと思われるピョンちゃんがダンジョンの外で衰弱しないか心配だ。多めに楽園イチゴと楽園リンゴをエサカゴに入れておけばいいと思うが、どうだろう。
今日はいろいろなことがあり、気持ちだけなのだろうが、少々疲れたので「俺は先に風呂に入ってくる」。そう言って、すぐに風呂に入った。
風呂から上がって、子どもたちも風呂に入って、その日の夕食になった。
話題はもちろん今日の冒険だ。
ドラゴンとの戦いの中、ピョンちゃんが死んでしまったが、楽園オウムとして蘇ったこと。
そして俺がドラゴンのために一度死んでしまったこと。俺を生き返らせるためにアキナちゃんが奇跡を起こしたこと。
その結果アキナちゃんは5歳、年を取ったこと。俺がこのことを話すまで、リサをはじめ屋敷にいたみんなは気付いていなかったようだ。
そして、俺がダンジョンマスターになったこと。
「……。そういうわけで、ダンジョンマスターになったんだ。
それで、最後に美少女ゴーレムをコアに作らせた。
そうとう高性能なゴーレムのはずだから、明日性能を試そうと思う」
その日の夜、俺はベッドに横になり、また今日のことを思い出していた。
ダンジョン王に俺はなる! じゃなくって俺はダンジョン王になってしまったわけだ。




