第304話 決戦、金色のドラゴン!
日本のピラミッドの数ですが、38個のところを間違えて32個と書いていました。それで、結局38個を改めて32個にしました。申し訳ありません。
大穴の底で昼食を済ませ、デザートのアイスを食べた俺たちは、後片付けをして、穴の壁にただ一つ取り付けられた金色の扉を開けることにした。
デテクトアノマリーで扉には罠が仕掛けられていないことは確認済みだ。
「これで最後だから、触手の塊とは違う大物が現れるかも知れない。各人注意な」
扉に近づいていったところ、扉の上の方に銘板が掲げられており、短く文字が書かれていた。
「アキナちゃん、頼む」
「発音はできんが『こころせよ』と、言う意味じゃ」
「最終ボスが現れる可能性があるな」
「念のため、わらわがみんなに祝福を与えておこう」
アキナちゃんの祝福を受けて俺たち3人の体が山吹色のオーラに包まれた。
「それじゃあ、わたしから、ヘイストとストレングス、そしてデクスティリティー」
華ちゃんの魔法も加わり体が軽くなった上に、ぽかぽか温かくなってきた。
「開けるぞ」
扉を開けた先はこれまで通りの30メートルほどの金色の通路だったが、通路には何もいなかった。そして、通路の突き当りはこれまでと違って、大扉ではなく普通の大きさの扉だった。
通路に向かって華ちゃんがデテクトアノマリーをかけたところ、今開けた扉のすぐ先の床の真ん中が赤く輝いた。華ちゃんがそこに向かってトラップ確認のアイデンティファイトラップを唱えたが罠ではなかったようだ、念のため、ノックをかけてみたが反応はなかった。
「如意棒で突いてみるから、みんな後ろに下がっていてくれ」
俺が如意棒の先で赤く反応している床を小突いたら、通路の突き当りの扉が向こうに向かってバタンと開いた。
扉を開けるプレッシャープレートだったようだ。自動ドアなら、ドアのすぐ近くにセットしろよ。
「扉が開いたから進もうか」
俺の後から華ちゃんが通路に入ったら、いきなり正面の扉がバタンと閉まった。華ちゃんの位置は赤い床のまだ手前だ。俺はそこで、赤い床を如意棒で小突いてみたが、正面の扉は開いてくれなかった。
「華ちゃん、いったん下がってくれるか?」
「はい」
華ちゃんが通路から出て大穴の底に戻ったところでもう一度赤い床を如意棒で小突いたら、正面の扉が開いた。
「一人じゃないと、」
ダメみたいだな。と言おうとしたら、急に正面の扉がバタンと閉じてしまった。
この扉には、時間設定があるのか。
現在俺は、華ちゃんのヘイストとアキナちゃんの祝福を受けている。
ならば、その時間で突き切ればいいだけだ。
再度如意棒で赤い床を小突いて、そこから一気に駆けだした。
あと5メートルというところで扉がバタンと閉まってしまった。
「今のでダメだったか。まだ5メートルもあるということは惜しいって感じじゃないな。
おそらく、砂時計はこの廊下を突破するためのアイテムだったんだろう。あれを使えば簡単にこの廊下を突破できるものな。
だが、俺には転移という強い味方があるのだよ。すでに向こうの扉の先は目に焼き付けている。転移!
そらな。簡単に突破できた」
俺は華ちゃんたちのところに戻って、みんなで揃って向こう側に跳んでやった。ヘーイ、ザマァーみろ!
俺たちが今立っているのは、大空洞ではなく、金色の部屋だった。部屋の広さは100メートル四方。天井の高さもそのくらいある。ここまでくると部屋というよりこれも一種の空洞か。
そして、部屋の真ん中には金色の小山が。
「あれって、丸くなって寝ているドラゴンに見えるんだが」
「そうみたいです。ドラゴンが目を覚ます前に撤退しますか?」
「そうだな、みんな俺の手を取ってくれ」
みんなが俺の手を取ったところで、ピョンちゃんに手を当てて転移しようとしたら、華ちゃんのヘルメットの上に止まっていたピョンちゃんがいきなり飛び立った。
そのままキラキラのエフェクトを残して、あれよあれよという間に、ピョンちゃんは寝ていたはずのドラゴンに突っ込んでいった。
バシッ! とぶつかった音がした。
ドラゴンにぶちかましをかけたピョンちゃんは何ともなかったようで、その後舞い上がって、ドラゴンの上で旋回し始めた。
ピョンちゃんにぶちかましをかけられた当のドラゴンは、首をもたげて俺たちの方に目を向けた。
やったのは俺たちじゃないんだ! というわけにもいかない。
ピョンちゃんを転送してこのまま逃げ出してやろうとしたが、転送は発動しなかった。もちろん転移も発動しなかった。開け放していたはずの入り口の扉も気付けば閉まっていた。いつぞやの状況に似ているが、ドラゴンから鼻息のようなものも聞こえるし、今度のドラゴンは生々しい。
こうなってしまうと、ガチのバトルしかないのか?
「華ちゃん、転移できない」
「仕掛けますか?」
どうしようかと迷っていたら、こっちを向いたドラゴンが口を開き始めた。なんだか口の中が光っているように見える。ブレスがくるんじゃないか?
「華ちゃんやってくれ」
「はい!」
「グラヴィティーノヴァ!」
真っ白い球体がドラゴンを包んだ。
目の前のドラゴンがラスボスかどうかは分からないが、おそらくこれまでの敵で最強クラスだ。
俺はドラゴンの反撃に備えて、アイテムボックスの中にいたメタルゴーレムを全部俺たちの前に並べ、そのあとフィギュアゴーレム1号を10個ほど作って目の前の床に放り投げ、10体のメタルゴーレムに戻ったところで、
「俺たちの盾になれ」と命令した。
メタルゴーレムたちは俺たちの前に互い違いに並んだ。これで、最低でもドラゴンの一撃は防げる。ハズだ。
「みんな、ゴーレムの後ろに」
ドラゴンを包んだ白い球体がおさまってすぐにドラゴンがブレスを放ったようだ。ドラゴンのブレスは白い光を放ち、俺たちをガードするメタルゴーレムに当たった。後ろに立つ俺たちには被害がなかったが、ゴーレムのうち前の方に立っていた5体が半分溶けて、フィギュアに戻ってしまった。すぐに俺はフィギュアゴーレムを作ってゴーレムを補充した。
これなら勝てないまでも、そう簡単にはやられないだろう。
ゴーレムが前にいるので、ドラゴンの動きがはっきりつかめないが、気配は分かる。
王水シャワーをぶっかけてやれば、さすがのドラゴンもダメージを受けそうだが、100メートル四方とは言え密室の中での王水シャワーははばかられる。
他に何かいい手はないかと考えていたら、ドラゴンの羽ばたき音が聞こえた。ゴーレムの頭越しにドラゴンが飛び立つのが見えた。
上の方からブレスを吐かれたら防ぎようがない。
マズい。
「華ちゃん、ドラゴンが飛び立って上からブレスを吐かれたらマズい。グラビテーでドラゴンを床に落としてくれ!」
「だめです。ピョンちゃんが頭上にいるから一緒に落っこちてしまいます。ピョンちゃーん、こっちに戻って!」
ピョンちゃんは華ちゃんの声が聞こえていないのか、羽ばたきながら上昇するドラゴンの頭上でピョンちゃんは回っている
ピョンちゃんの羽の色は朱色だが、今のピョンちゃんは炎をまとっているような感じで揺らめいている。
ビエーーン!
今まで聞いたことのない、耳をつんざくような鳴き声を上げて、ピョンちゃんがドラゴンに向かって逆落としに突撃をかました。
ピョンちゃんが突っ込んだのはドラゴンの翼だった。ドラゴンはしっぽでピョンちゃんを叩き落とそうとするがピョンちゃんはそれをうまく躱して、ドラゴンの翼に突っ込み大孔を空けてしまった。
それでもドラゴンは浮いていたが明らかに上昇速度が落ちて、その場にとどまるのが精いっぱいのようだ。ドラゴンの今の位置からでも、首を上げてブレスを吐かれたら危ない。
えーい。ピョンちゃんは避けると信じて石柱攻撃だ!
俺は錬金工房の中で、魔神の空洞で集めた石柱を材料に、直径5メートル、高さ10メートルの石柱を作って、ドラゴンの胴体の上にアイテムボックスから排出してやった。
石柱はドラゴンの背中に命中したらしく、ドラゴンは飛び続けることができず、床に落っこちた。石柱は落っこちた拍子に砕けてしまった。
床にドラゴンがいれば何とかなる。
俺はフィギュアバジリスクをゴーレムの頭越しにドラゴン目がけて投げてやった。
出でよ、メタルバジリスク!
金色の部屋の中が一瞬青く輝いた。俺たちからは見えないが銀色のメタルバジリスクが現れたはずだ。
「メタルバジリスク、毒は吐かないようにして、ドラゴンを斃せ!」
続けてフィギュアバジリスクを6体作って、衝立越しにドラゴンに向かって投げてやった。
メタルゴーレムの向こうからドラゴンの咆哮と、何かと何かがぶつかる音が聞こえてくる。
さらに追加で、動きは遅いが攻撃力と防御力の高いフィギュア大サソリを40個作って、床の上に放り投げ、メタル大サソリに戻してドラゴンに向かわせた。
しばらくバタバタと大きな音が聞こえていたので、更にメタルバジリスクを6体追加でドラゴンに向かわせた。衝立に使っているメタルゴーレムも大急ぎで10体ほど追加しておいた。
何度かドラゴンが咆哮し、そのたびに部屋の中が明るく照らされた後、部屋自体を振動させるような、ひときわ大きな咆哮が部屋に轟き、しばらくドサドサと動きがあったが、そのあとドラゴンの動いている気配がしなくなった。
やったか!?
メタルゴーレム屏風の横から顔をだして、様子を窺うと、ドラゴンは首をちぎられて動かなくなっていた。ドラゴンの首の付け根から血が噴き出していて、胴体は血の中で横たわっていた。
俺のメタルモンスターのうちメタルバジリスクは3体だけになっていて、メタル大サソリは10体になっていた。
ピョンちゃんはどこにいったのか見えなかった。それどころか気配もなかった。




