第300話 ダンジョン・コア7、大空洞
とうとう300話。読者の皆さま、ありがとうございます。今回も思いついたことをだらだら書いていただけでここまで来ちゃいました。
大空洞の中に転移して周囲に異常のないことを確認した俺は、華ちゃん用にゴーレム列車の先頭車両を1つと、白鳥の騎兵隊用にゴーレム白馬を3頭地面の上に出した。
各々乗った人間の命令を聞くよう俺が命令している。
「それじゃあ出発だ。
ゴーレム白馬、伏せ!」「「伏せ」」
「ゴーレム列車、伏せ」
4体のゴーレムがそれぞれ伏せたところで華ちゃんがゴーレム列車に乗り込み、俺たち3人はゴーレム白馬に跨り、頭の両側から出ている横棒をしっかり掴んだ。華ちゃんは先頭車両の横板の上を掴んでいる。
「「立て!」」
ゴーレムたちが立ち上がった。ゴーレム列車はそれほど高くないが、ゴーレム白馬はそれなりに高い。
「それじゃあ、華ちゃん、ピョンちゃんに下り階段を探させてくれ」
「はい。
ピョンちゃん、昨日のように下り階段を探して。
あと、周囲も警戒してね」
「ピヨン、ピヨン」
ピョンちゃんが、俺の予想通り、大空洞の中心方向に向かって飛んでいった。俺たちはピョンちゃんの後を追って走り始めた。
草原の草むらの中を軽快にゴーレムたちは駆けていく。
すぐにピョンちゃんは戻ってきてまっすぐそのまま進んでいる俺たちの頭上を警戒のため回り始めた。
風を頬に感じて俺たちは大空洞の中心方向に向かっていく。ピョンちゃんも俺たちの頭上でゆったり舞っているので方向はこのままでいいはずだ。
ときおり華ちゃんがデテクトアノマリー、デテクトライフを唱えるのだが反応はない。
そうやって、1時間ほど進んでいたのだが、まるで景色は変わらない。後ろを振り返るとどこまでも高く、どこまでも広がる大空洞の壁がかすんで見えた。前方にも壁があるはずだが、何も見えず青空のような空間が見えるだけだった。どうも直径で100キロとか何となく思ったのだが、100キロでは済まないような感じがしてきた。
いったん停止して、ゴーレムから下り一休みした。
みんなにペットボトルで飲み物を配って、
「ここ、広すぎだな」
「モンスターは出てきませんね」
「小鳥は飛んでおったが、どう見てもただの鳥じゃった」
「わたしも、鳥は見ました」
「ここも、楽園みたいにモンスターはいないのかもな」
飲み物を飲み終わったところで、ペットボトルを回収し、ゴーレムに乗り込んで出発しようとしたところで華ちゃんが、
「岩永さん、すっかりゴーレムに慣れてしまいましたが、一度だけ乗ったことのあるあの自衛隊の自動車に乗った方が良くないですか?」
「あっ! タートル号のことをすっかり忘れていた。道路があればタートル号の方が断然速いと思うけど、この荒れ地を進むとなるとどうかな?
どんな感じか、試すだけ試してみるか」
ゴーレムたちをアイテムボックスに収納し、タートル号を取り出した。
「出でよ、タートル号!」
アキナちゃんはタートル号を初めて見るので、驚いていたが、それでも日本で何度も自動車を見ているし、タクシーにも乗っているのでそれほどでもないはず。
「これは、自動車ではないか? この前、塔に登った時に見た自動車とはかなり趣が違うようじゃな」
「普通の自動車は硬くて平べったい道路の上じゃないとうまく走れないんだが、このタートル号は、ここみたいな荒れ地でも走れるんだ」
俺は後ろに回って扉を開けてやり、
「キリアとアキナちゃんは後ろに乗ってくれ。シートベルトはしっかり締めて、走り出したらかなり揺れると思うからどっかに掴まっていた方がいいぞ」
キリアとアキナちゃんが乗り込んでシートベルトを締めるのを見届け俺は運転席に、華ちゃんは助手席に乗り込んでシートベルトを締めた。ピョンちゃんは華ちゃんの膝の上で抱かれておとなしくしている。
エンジンをかけてメーターを見ると、燃料はほぼ満タンだった。
「出発!」
荒れ地だけど、車輪が大きいせいか揺れても振動はそこまでひどくはなかった。
「少しずつスピードを上げていくからな」
時速20キロまでは、揺れが面白いのか、後ろの荷台に座ったアキナちゃんが歓声を上げていたのだが、時速20キロを過ぎて、時速30キロを過ぎたあたりから、振動で座席から尻が浮いたりし始めて、歓声は上がらなくなり、時速40キロで、後ろの荷台のシートに座っていたキリアとアキナちゃんから悲鳴が上がり始めた。
さすがにこれでは進めないので、その場で停止して、
「やっぱり、車は厳しいな」
みんなタートル号から降りたところで、ゴーレムをとりだし、タートル号はアイテムボックスにしまって今まで通りゴーレムに乗って進むことにした。
ゴーレムに乗り換えて1時間。景色は少し変わって、草原の中には灌木だけではなく林のようなものも見え始めてきた。前方に丘が見え、わずかに上り坂になってきた。後方の壁は青くうっすらと見える。
そこから30分。何個目かの丘の上から前方を望むと大きな湖が見えてきた。湖の向こう岸は丘の上からでは見えなかった。
「湖のほとりで昼にしよう」
そこから30分。丘を下ってさらに進んで、やっと湖の岸辺にたどり着いた。向こう岸はかすんで見えない。どれだけ広い湖なのかは分からない。まさか海ってことはないだろう。
俺たちがたどり着いた岸辺は白い砂浜で波打ち際に20センチほどの波が打ち寄せていた。
ゴーレムから降りて、砂浜の上に立ち、少しだけ水を手のひらの上に転移させて舐めてみたところ、海水ではなく真水だった。
砂浜の上にブルーシートを敷いて、手袋とヘルメットだけ取って、湖に向かって横一列で座った。
「何食べる?」
「わたしは、このまえ岩永さんが食べていたチリドッグかな」
「わらわは、うな重じゃ」
「それなら、わたしもうな重」
華ちゃんにはチリドッグと炭酸水、アキナちゃんとキリアには、うな重に割りばし、寿司屋で買った魚偏の漢字が並んだ湯呑に緑茶パックをいれて、お湯を注いだものを出してやった。
俺はうな重もうまそうだが、牛丼と緑茶にしておいた。こうなれば何でもアリだな。
太陽が見えるわけではないが青空のもと、ダンジョンの中の湖のほとりでうな重はいけるかも知れない。外の季節は秋の真っ盛り。気温も下がってきているのだが、ダンジョンの中は一年中快適な温度と湿度だ。湖畔のそよ風が気持ちいい。
「この湖沿いに進むしかないな」
「水もあるし、太陽は見えないけど、これだけ明るければ、農業はできそうですよね」
「害虫とか植物の病気もなさそうだもんな。
虫は見なかったから、虫で受粉するものはダメかも知れないけど、稲なんかは何とかなりそうだ」
「針葉樹の林も雑木林もあったし、これで地下資源でもあれば、ここに国ができちゃいますね」
「確かに」
食後のデザートを食べて、足を延ばして一休みして、後片付けをした俺たちは、それぞれゴーレムに乗って大空洞の中心方向に向かっていった。
湖を左手に見ながら左回りに俺たちは進んでいった。途中休憩して2時間経ったところで、ピョンちゃんが少し方向を変えたので、そこから少しずつ湖から離れていき、30分ほどで湖は見えなくなった。その後30分ほど進んでその日の探索というより移動を終了した。直線ではなかったが、今日の実移動時間は6時間。時速20キロとして120キロ。周囲を見わたしてもどこにも大空洞の壁は見えなかった。
翌日。
屋敷から完全武装した俺たちは、昨日の大空洞を最後に後にした場所に転移した。
ゴーレムに各自乗って、ピョンちゃんの示す方向に駆けていく。
結局その日も、実移動時間6時間。約120キロを踏破した。これで、壁から240から250キロ中心部に向かって移動したことになる。もちろん周囲を見わたしてもどこにも大空洞の壁は見えない。
そして3日目。
午後から1時間半ほど進んだところで小休止して、そこから1時間。
前方に金色のピラミッドが見えてきた。




