第297話 ダンジョン・コア4、角笛と第19階層
午後からもピョンちゃんのおかげで簡単に第19階層への階段が見つかった。前回同様30メートル四方の石室の中で、階段の前にはやはりモンスターが鎮座していた。
大猿戦のおかげで101匹蜘蛛ちゃん大行進はみんなから控えるように言われたので、今回は華ちゃんに任せることにした。
そのモンスターだが、勝手知ったるバジリスクだった。俺としたら、メタルバジリスクで怪獣大決戦を見たかったのだが、第2の肉塊ができ上ることは目に見えているので提案はしなかった。
「いきます。グラヴィティー。
ファイヤーアロー」
華ちゃんがグラビテーで身動きできないようにしてその後眉間にファイヤーアローを撃ちこんで終了してしまった。
アイテムボックスに収納した今回のバジリスクは全長で20メートル近くあったので一番大きなバジリスクだ。
部屋の中に罠はなかったが、バジリスクのいた場所に宝箱があった。
階段前のモンスター排除の手間賃として回収した宝箱に華ちゃんがノックを唱えたら簡単に蓋が開いた。
宝箱の中に入っていたのは、角笛?
「鑑定します。鑑定。
角笛。これも見たまんまでしたね」
「こんなところで見つかったところをみるとマジックアイテムなんだろうな。
呪いがかかっている可能性もあるから、念のためエリクシールを垂らして解呪しておこう」
俺はアイテムボックスからエリクシールを取り出し、一滴角笛にたらしたら、角笛が青く光り、ゆっくり光がおさまった。
「この角笛、呪われていたようだな。これで大丈夫だろうから、試しに吹いてみるか」
口に咥える部分は銀色の金属製で角笛本体は象牙色。指をあてる孔はないのでただ吹くだけの角笛だ。
俺のゲームとラノベ知識からすると、角笛を吹いたらファイヤーボールが飛び出すことも十分考えられるので、角笛の口は誰もいない壁に向けて、
「吹いてみる」
ブッ、ブーー。
音だけはしたが、少なくとも俺の感覚では何も起こらなかった。
「何か変化あったかな?」
「何もなかったような」
「気づきませんでした」
「わらわも何も気づかんかったが、何かの合図かもしれんぞ。例えばモンスターを呼び寄せるとか」
誰もなんの変化も認識できなかったとなると、アキナちゃんの言った、モンスター呼び寄せは確かにありそうだ。とはいえ、ここは階段はあるとはいえ、いちおう閉ざされた石室の中。モンスターが急に現れることはないだろう。
「階段を下りたら通路かどこかで試してみよう」
角笛をアイテムボックスにしまったところで無意識にコピーしようと複製ボックスに入れてコピーを試していたのだが、コピーできなかった。神殿の鑑定球並みのレベルの高い魔道具のようだ。
第19階層への階段の下り口で手順通り華ちゃんが、階段内に異常のないことを確かめて、それから俺たちは階段を下りていった。
階段を下りた先は、上の階と同じく30メートル四方の石室で、正面と左右、それぞれ1つ扉が付いていた。3つの扉全部と、右側の壁には赤い点滅があった。
ピョンちゃんは迷わず左の扉の前に飛んでいき、そこで床に下り立ったので、華ちゃんは右側の壁の点滅は無視して、扉の罠を解除した。
俺が開いた扉の先は、いつものような石造りの通路で、通路の左右には扉が並んでいた。
華ちゃんが通路に向かってグラビテーを唱えて罠を一斉作動させた。そのあとピョンちゃんが俺たちを先導して飛んでいこうとしたところで、華ちゃんがピョンちゃんを呼び止めた。
「ピョンちゃん、ちょっと待って」
「じゃあ、角笛を試すから」
ブッ、ブーー。
間の抜けた音が通路に響いた。
モンスターが現れるにしても、ある程度は時間がかかるはずなので、俺とキリアは得物を構え、華ちゃんはいつでも魔法を放てるよう右手を上げて、それぞれ何かが現れるのを待った。
アキナちゃんは右手の手袋を外して、なんとか背中を掻こうとしていた。鎧の上からなので結局断念した。
俺はアキナちゃんがかわいそうだったので、ヒールポーションを1本作って「それ飲めば、おそらく痒みが止まるから」と、言って渡してやった。
アキナちゃんは、ヒールポーションを押し頂いて、
「ありがたや、ありがたや」
そう言って瓶の蓋を開けてポーションを飲み干した。アキナちゃんは目を細めて、
「ほー、痒みがとれたのじゃ。あな嬉しや」
よかった、よかった。
そうやって待っていたら3分ほどしたところで、通路の先の方、暗がりの中に2つずつ並んだ無数のきらめきが見え始めた。
「きたぞ。101匹蜘蛛ちゃん大行進で迎撃したいが」
「止めましょう」と、華ちゃん。
「はい」。素直に返事をする俺。
現れたのは大ネズミの群れ。何匹いるのか分からない。
大ネズミの先頭が5メートルくらいまで迫ったところで、華ちゃんが、ひとこと。
「グラヴィティー」
それで、大ネズミは通路の上で伏せ状態で身動きできなくなった。
グラビテーを真面目に発動していたら、大ネズミでは一撃で潰れてミンチになっていたと思うので、相当手加減したグラビテーだったのだろう。
動きの止まった大ネズミの頭部に華ちゃんがファイヤーアローを撃ちこんでいく。頭が吹き飛んでいないところを見ると、これもかなり威力を抑えたファイヤーアローなのだろう。
「岩永さん、死んだ大ネズミが邪魔なので、収納していってください」
「はい」
後はもう流れ作業で、大ネズミの一群はきれいさっぱり通路上にはいなくなった。アイテムボックスの中の新たな大ネズミの死骸の数は101匹だった。
「アキナちゃんが言った通りの効果があったけど、雑魚ばかりで面白みに欠けるな」
などと、バチあたりな感想を正直に述べてしまった。
「ゼンちゃん、もっと広いところなら、スゴイのが現れるかも知れんぞ」
そうかもしれないが、通路の広さも石室の広さも限られているので、それほど広い場所がない。
残念だが、この角笛、お蔵入りかもな。
「そのうち広い場所もあるかもしれないから、先に進むか」
ピョンちゃんが先に立って飛んでいきその後を俺たちが続いていく。




