第296話 ダンジョン・コア3、第17階層、大猿戦
ピョンちゃんのおかげで第17階層への階段を最短距離で見つけることができた。
50段ほどの階段を下りた先の部屋は上の階の部屋と同じく30メートル四方の石組の部屋で、正面と左右の壁に一つずつ、3つの扉が付いていた。グリーンリーフの面々が罠を全て解除したようで部屋の中に異常はなく扉にも罠はないようだった。
右手の壁の扉の脇に窪みが見えたので、なにがしかのアイテムも回収済みのようだ。
華ちゃんの頭の上に乗って階段を下りてきたピョンちゃんが迷わずその扉の方に飛んでいったので、俺が扉を開けた。
扉の先は両側の壁に扉の並んだ通路だった。その通路に向かって華ちゃんがグラビテーを発動させたところ何も反応がなかった。ここもグリーンリーフの面々が通過した後なのだろう。
第16階層の時と同じようにグラビテーを発動させつつピョンちゃんを先頭に俺たちは通路を進んでいき、石室を通り抜けて新たな通路に出てを繰り返し、ここも2時間ほどで第18階層へ続くと思われる石室にたどり着いた。
石室の手前にも、石室の扉にも罠があったところを見ると、グリーンリーフの面々はここまでやってきていないのだろう。
華ちゃんが罠を解除した扉の先は、ここも同じく30メートル四方の石室で、正面の向こう側には下り階段が見えた。そして階段の手前に大型のモンスターがデンと立っていた。
大猿?
大猿の体高は高さ3メートルのゴーレム1号と同じくらいだが、ゴーレム1号と比べると胸が厚く、腕が長くて足が短い。しっぽは見えないので類人猿、ゴリラの類かもしれない。
大猿は、扉を開けた俺の顔を一瞥しただけで襲ってはこなかった。
こいつは俺たちのことを舐めてるみたいだ。
「華ちゃん、試したいことがあるから攻撃を少し控えてくれるか」
「はい。何を試すんですか?」
「あいつ、俺たちのことを舐めてるみたいだから、101匹蜘蛛ちゃん大行進でやっつけてやろうと思うんだ」
「あの猿かわいそう過ぎませんか?」
「あいつ、メチャクチャ強くて101匹の蜘蛛を全滅させるかも知れないぞ」
「そうかなー」
「わらわも101匹蜘蛛ちゃん大行進を見たいのじゃ」
「わたしも見たいです」
賛成多数で、101匹蜘蛛ちゃん大行進を始めることになった。まずフィギュア大蜘蛛を錬金工房で101匹作った。フィギュアの大きさは3センチほどだが101個も手で持てないので台所用のザルを作って、その上に101個のフィギュア大蜘蛛を乗せて、ザルを両手で持って101個のフィギュアを石室の中にぶちまけてやった。
広がるようにぶちまけたつもりだったのだが、フィギュア同士の足が絡まったのか、うまい具合にフィギュアは広がってくれなかった。そのせいで、石室の床が一瞬青く染まったあと、101匹のメタル大蜘蛛が折り重なってうごめく銀色の小山ができてしまった。
「お前たち、正面の大猿を斃せ!」
俺の命令で小山が崩れながら動き出し大猿を囲んだ。
初めのうち大猿は余裕で突っ立って、腕を振り回しメタル大蜘蛛を薙ぎ払い吹き飛ばしていたが、足の動きが一瞬止まった隙に何匹もの大蜘蛛が大猿の脚から這い上がり、前足を叩きつけたり、噛みついたりして少しずつ、しかし確実に大猿を弱らせていった。
大猿はガーとかギーとか大声を出しながら両手で体に取り付いたメタル大蜘蛛を払いのけたり引きはがして投げすてるのだが、すぐその後を別の大蜘蛛が取りついてしまう。メタル大蜘蛛からはただガサゴソと体が触れ合う音が出るだけだ。
だんだん動きの鈍くなった大猿が、ガーーー! と、声を張り上げ、そのままどさりと床に倒れた。大猿はメタル大蜘蛛にたかられて全身が覆われているのでどういった状態なのか今一分からなかったのだが、床には血のようなものがどんどん広がっている。
「エレメア」
俺がキーワードを唱えたら、メタル大蜘蛛はその場でフィギュアに戻った。
フィギュアをアイテムボックスに回収したところ100個あった。1匹だけ大猿に破壊されたようだ。
メタル大蜘蛛が取り付いていた大猿は血だまりの中で赤い何かになっていた。
俺の後ろから、「うわー」とか、「ひどい」とか声が聞こえてきたような。
「ちょっとやり過ぎだったけど、集団戦法の有効性が証明された。まさに『戦いは数』だったな」
「岩永さん、これからは普通に斃しませんか?」
「ゼンちゃん、わらわもそう思う」
「お父さん」
「ピヨン」
ある意味作戦は失敗したのかもしれない。兵器は強ければいいってものではないことを俺は悟ってしまった。
赤い何かを放っておくわけにもいかないので、床に広がった血も一緒にアイテムボックスに収納しておいた。素材ボックスに突っ込んでいたら、何かの肉のコピーを作る時の原材料になると思うが、類人猿を原材料にしてしまうのも抵抗があったので、素材ボックスには入れず、ただのアイテムボックスの中に収納しておいた。どこかで役に立つかもしれないが、アイテムボックスの肥やしになるのだろうな。
階段前のモンスターを排除した俺たちは、階段を18階層に向けて下りていった。
第18階層の最初の部屋も30メートル四方の石室だった。華ちゃんがデテクトアノマリーを唱えたら、右側の壁が赤く点滅し、部屋の壁に全部で3つあった扉も全部点滅した。床については今回は異常はなかったようだ。
「壁の点滅は何かのアイテムだろうが、残しておいてやろう」
「そうですね」
「そろそろいい時間だから、昼食にしようか」
いつものようにブルーシートを床に敷いて、ヘルメットと手袋を取っただけで、俺たちは車座になって昼食を食べ始めた。今日の昼食もハンバーガーだが、マ〇クではなくモ〇バーガー製のハンバーガーだ。ちょっとお高いぶんパテなどが高級な感じがする。俺の街にあったことを思い出して何種類か購入したものだ。
俺はチリソースのかかったホットドッグ、華ちゃんはエビカツバーガー。キリアは無難にチーズバーガー、アキナちゃんはロースカツバーガーだった。俺はホットドッグ1本では足りなかったので2本食べた。3人はあとフレンチポテトを食べただけだが、デザートのアイスはしっかり食べている。アキナちゃんは俺たち3人が食べたアイスを一つずつ全部で3個食べてしまった。
「しかし、ピョンちゃんを連れてきて大正解だったな」
「ピョンちゃん、エライ!」
華ちゃんが肩に乗ったピョンちゃんを褒めたので、ピョンちゃんがピヨンと鳴いた。
「午後からも、この調子で頼むぞ」
「ピョンちゃん、お願いね」
俺が頼んでも何も反応はなかったが、華ちゃんがお願いしたらピョンちゃんは「ピヨン」と鳴いた。こいつはオスなのか?




