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岩永善次郎、異世界と現代日本を行き来する  作者: 山口遊子


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第289話 足立と下村と火野7


 夏休みの最終日。


 大ネズミとの戦闘を終えた足立と下村と火野のチーム勇猛果敢は、前後に冒険者の姿が見えない中、メタル大蜘蛛を先頭にメタルゴーレムを殿しんがりとして、第2ダンジョンの第2階層の枝道を進んでいた。


 そうやって30分ほど進んでいたら、メタル大蜘蛛がまた反応し、前方に向けて速度を上げた。


 足立たちは、武器を構えてメタル大蜘蛛の後に続く。


 すぐに洞窟の先から足音が響いてきた。


「でかいヤツがくる」


 足立と下村は左手の盾をしっかり構えた。


「ゴーレムを前に出した方がいいんじゃない」と、ピストルクロスボウを持った火野が下村に声をかけた。


「そうだった。

 メタルゴーレム、前に出て、モンスターがやってきたら、戦え」


 殿しんがりで3人のあとをついて歩いていたメタルゴーレムが速度を上げて足立たちの前に立った。


 メタル大蜘蛛は30メートルほど先で、モンスターと接触したようだが、相手に弾き飛ばされてしまった。壊れてはいないようで、すぐに足立たちに向かって突進を続けるモンスターを後ろから追いかけた。


 3人のヘッドライトの光の中でモンスターの姿がはっきり見えた。そして独特な鼻息も聞こえてきた。


「あれはケイブ・ボアーだ!」


 ケイブ・ボアーは足立たちにとって初めてのモンスターだったが、他のモンスター同様防衛省のダンジョン関連サイトや、SNSなどでケイブ・ボアーの画像や映像は何度も見ているので簡単に識別できる。


 ケイブ・ボアーが先頭のメタルゴーレムから15メートルまで近づいたところで、火野がピストルクロスボウの引き金を引いた。


 クロスボウから放たれたボルトはケイブ・ボアーの眉間に当たったが、弾かれてしまった。


「だめ、効かなかった」


 火野はそう言いながらも第2撃を放つため素早くコッキングしボルトをピストルクロスボウにつがえようとしたところで、ケイブ・ボアーがメタルゴーレムと接触した。正確には、メタルゴーレムの右の拳がケイブ・ボアーのこめかみにヒットしてめり込み、その勢いでケイブ・ボアーは首の骨が折れたのか、首がねじれたまま吹き飛んで洞窟の壁に叩きつけられた。



「「あっ!」」


 3人はあっけにとられてしまった。


 ケイブ・ボアーが死んでしまったので、メタルゴーレムはその場で停止し、メタル大蜘蛛はメタルゴーレムの近くで停止した。


「メタルゴーレム、連れてきて良かったね」


「こんなに強いって知らなかった」


「とんでもない強さだったな」


「ところで、このケイブ・ボアー、ビニールシートに入るかな」


「どうだろう。何とか入りそうだけど、ファスナーを閉じるのは無理かもしれない」


「何キロくらいあると思う?」


「100キロはないと思うけど、7、80キロはあるんじゃないか?」


「回収袋は100キロまでだから、なんとかメタルゴーレムに吊り下げられるな」


 回収袋を広げ、3人がかりでケイブ・ボアーの死骸を袋の中に突っ込もうとしたがうまく入ってくれない。


「しっかし、こいつ重たいなー、100キロ近くあるんじゃないか?

 そうだ! ゴーレムにケイブ・ボアーの前足を持って引き上げさせて、後ろ足を袋に入れてから、袋を引き上げたらどうかな」


「よし、やってみよう。

 メタルゴーレム、こいつの前足を持って引き上げてくれ」


 メタルゴーレムは下村の指示通り、ケイブ・ボアーの前足を持って引き上げた。


 ケイブ・ボアーの後ろ足がわずかに宙に浮いたところで、広げた回収袋を下に突っ込んで、後ろ足を突っ込み、それから体が入るよう回収袋を広げたまま引き上げた。


「メタルゴーレム、ゆっくりケイブ・ボアーを下げてくれ」


 伸びていたケイブ・ボアーの後ろ足が膝で曲がって、ケイブ・ボアーの体も回収袋の中に入っていった。


「メタルゴーレム、ケイブ・ボアーの手を放してくれ」


 3人で支えた回収袋の中にケイブボアーが首と前足を出して収まった。ジッパーを締まるところまで締めて、


「メタルゴーレム、この袋を自分の肩掛けベルトのフックにかけてくれ」


 メタルゴーレムは回収袋を持ち上げて、器用に回収袋の孔を肩掛けベルトのフックに引っ掛けた。


「すごいな。

 さて、どうする?

 メタルゴーレムの運搬能力は150キロって聞いていたけど、いい線じゃないか?」


「少し早いけど、昼にして、引き返すか?」


「そうね。そうしましょう」


 3人は洞窟の路面にそれぞれ腰を下ろして、コンビニで買ってきたお握りを食べ始めた。3人とも飲み物は緑茶だ。


「ケイブ・ボアーは首は折れてるようだけど、良い査定になりそうだよな?」


「だな」


「キロ、2万近くいくと、150万超えるわよ」


「怖くなるほど大儲けだな。親父が給料どれくらい貰っているのか知らないけど、俺の今月の収入は親父の2倍はあるような気がする」


「だな」


「うちも」


「こうなってくると、家にお金を入れた方がいいかな?」


「そんなことすると、収入額を話すことになって、うちの親はびっくりしてひっくり返るんじゃないかな」


「ひっくり返るかどうかは分からないけれど、確かに驚くだろうな」


「まあ、家が本当に困っているなら別だけど、そうじゃなければ、二十歳を過ぎてからでいいんじゃないか」


「そうだな」「そうよね」


 3人ともお握りを2つ食べ終え、ペットボトルの緑茶を飲んで少し休憩してから立ち上がった。


「じゃあ、気を引き締めてな」


「おう」「うん」


 午前中の隊形通り、メタル大蜘蛛を先頭に勇猛果敢の一行は来た道を引き返していった。


 30分ほど歩いていたら、前方に冒険者らしき一行がいた。


 近づいてきた彼らは男女2人ずつの4人チームだった。4人とも二十歳前後に見えた。おそらく地元の大学生チームなのだろう。


 すれ違う前後で、彼らの話し声が聞こえてきた。


『2階層で、ゴーレムと大蜘蛛かよ。金持ちの道楽か?』


『ゴーレムが吊り下げてる回収袋から首が出てるのケイブ・ボアーじゃない?』


『2階層にあんなのが出るのか!?』


『わたしたち大丈夫かな?』


『ちょっとヤヴァいかもな』


『あの子たちどう見てもまだ高校生よ』


『見た目で実力は判断できないってことだな。

 ケイブ・ボアーが出ないことを祈るか、第1階層に戻るか。

 どうする?』


『ここまできたし、もうあんなのは出ないだろ』


『それもそうか』


 大学生らしい冒険者チームが奥の方に進んでいき会話は聞き取れなくなった。




 足立たちは2時間ほどで第1階層出入り口の空洞に戻ってきた。フィギュアの貸し出しが始まって以降、ダンジョン出口の脇には電動の台車が常時10台ほど置いてあり、その台車の上に荷物を載せて、買い取り所まで運搬できるようになっている。なお、ダンジョン出入り口の通行は台車が優先となる。


 メタル大蜘蛛は空洞まで戻ったところですぐにフィギュア化して、メタルゴーレムは台車に荷物を載せたところでフィギュア化している。



 今回の買い取り所での買い取り額は、大ネズミ2匹、どちらもキロ1万5千円。重さは合わせて22キロ、ケイブボアがキロ2万。重さは80キロだった。合計で193万円余り。一人頭64万円。プロチームを超える稼ぎだった。



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― 新着の感想 ―
[一言] あ、大学生達のグループの方ですね、不穏な会話してましたから
[気になる点] うー、最初の遭難者になるのかなぁ
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