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岩永善次郎、異世界と現代日本を行き来する  作者: 山口遊子


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第288話 足立と下村と火野6


 足立たち勇猛果敢の3人は、ダンジョンに2日潜り、1日図書館で勉強するというサイクルで夏休みを過ごしていった。ダンジョンに入る冒険者の数は少しずつ増えているが、ダンジョンの冒険者密度も、モンスターとの遭遇頻度もほとんど変わっていない。勇猛果敢のダンジョン収益も平均して1日当たり30万円ほどになっている。


 足立と下村も夏休みの宿題は既に終え、1学期の復習と2学期の予習に取り掛かっていた。




 今日は夏休み最終日。


 ロッカールームで装備に着替えた勇猛果敢の3人が武器の受渡し所前に集合した。各々の武器を係から渡してもらったところで、足立が下村と火野に、


「今日は夏休み最終日だから、俺たちも大蜘蛛とゴーレムを借りてみないか?」と、提案した。


「「賛成」」


「大蜘蛛とゴーレムで15万円だから、一人5万円か。ダンジョンを出てから精算な」


「「了解」」


 足立が自動販売機そっくりなフィギュアレンタル機にカードをかざし、数量ボタンを一度押し、次に確認ボタンを押したら、取り出し口に、大蜘蛛の銀色のフィギュアが上から落っこちてきた。下村がそれを手にしたところで、足立が隣のゴーレムのレンタル機の数量ボタンを一度押し、確認ボタンを押した。


 これも、取り出し口に落ちてきたので、足立が取り出した。


 下村は手にした大蜘蛛フィギュアを眺めて、


「精巧にできてるなー」


 火野もそのフィギュアを覗き込んで、


「不思議よね。これが大蜘蛛の大きさになるんでしょう?」


「不思議だよな」


 足立は、自分が手にしたゴーレムと下村の手にした大蜘蛛のフィギュアを見比べて、


「ゴーレムは大蜘蛛に比べると、ちょっとチャチじゃないか?」


「でも、これが元の大きさに戻ったら迫力あると思うよ」と、火野。




 フィギュアをレンタルした3人は、最後に今日潜る予定の第2階層の部分地図を印刷し、無料で貸し出されているゴーレム運搬専用モンスター回収袋を6枚とゴーレム用の肩掛けベルトを1つリュックに入れてダンジョン前のゲートに進んだ。



「このフィギュアを投げれば、投げた人の命令を聞くメタルモンスターになるんだよな?」と、足立。


「だな」


「誰が投げる?」


「足立が大蜘蛛のフィギュアを投げろよ。

 ゴーレムは火野が投げるか?」


「下村がやってよ」


「わかった。

 それで、フィギュアに戻すのはどうするんだっけ?」


「フィギュアを投げてメタルモンスターに命令できる人が、自分のモンスターに向かって『エレメア』って言うのよ」


「忘れてた」


「下村、しっかりしてよ」


「ごめん」


「フィギュアゴーレムはモンスターを斃してから戻せばいいな。

 大蜘蛛も、第2階層に下りて枝道に入ったらそこで戻そう」


「了解」「そうだね」


 3人は人の流れに沿って第1階層の洞窟本道を進み、階段を第2階層に下りていった。


 第2階層に下りてすぐに枝道に入った3人は、そこから地図を見ながら何度か枝道に折れて進んでいっているうちに、前後に他の冒険者が見えなくなった。


「足立、そろそろ大蜘蛛を戻してもいいんじゃない?」


「そうだな。やってみる」


 足立がベルトの小物入れに入れていた大蜘蛛のフィギュアを取り出して、洞窟の路面に投げ出した。


 フィギュアは一瞬青く光り、元の大蜘蛛の大きさの銀色のメタル大蜘蛛になった。


「うぉー!」「凄い」「カッコいいね」


「足立、モンスターに出会ったら、モンスターと戦うようメタル大蜘蛛に命令するのを忘れるなよ」


「ああ。

 それじゃあ先に進むか。

 メタル大蜘蛛、先に進め。モンスターに出会ったら、モンスターを斃せ」


 足立の命令を聞いたメタル大蜘蛛は一度8本の脚を屈伸させて体を揺らした。


「今の、『了解』って意味じゃないか?」


「きっとそうよ」


 メタル大蜘蛛は足立たちの前を、彼らが進む速さで音もたてず進んでいった。


 10分ほど進んだところで、いきなりメタル大蜘蛛が前方に向かって走り出した。


 足立たちは何が起こったのか分からずメタル大蜘蛛の動きを見ていたら、メタル大蜘蛛は10メートルほど進んだところで止まって、そこで少し動き回ったと思ったら、すぐに止まってしまった。


 慌てて3人がメタル大蜘蛛のところまで駆け寄ったら、メタル大蜘蛛の足元に、何やら得体のしれないぬめっとしたものが広がっていた。


「これって、スライムの死骸じゃない?」


「たぶんそうだ。

 借りてきたビニール袋には入れられないから、放っておくしかないな」


「想像以上にメタル大蜘蛛強いし優秀だな」


「メタル大蜘蛛、借りてきてよかったね。わたしたちじゃスライムを見つけるの遅れてたもの」


「そうだな。こうなってくると、次回以降もフィギュアを借りないと不安になりそうだ。必要経費とすれば安いんじゃないか」


「だな」「うん」



 そこから、20分ほど枝道を進んでいたら、またメタル大蜘蛛が反応して駆けだした。


 足立たちもメタル大蜘蛛を追って駆けだした。


 メタル大蜘蛛は2匹の大ネズミと戦っていた。大ネズミが歯をむき出してメタル大蜘蛛に飛びかかっていくのだが、メタル大蜘蛛は器用に躱し、前足で一撃を加える。結局20秒ほどで2匹の大ネズミは動かなくなった。


 どこをどう攻撃したのか分からないが、大ネズミの死骸はほとんど傷んでいなかった。


「これなら、最高査定だな」


「ほんとに有能ね」


 足立と下村で大ネズミの死骸をモンスター回収袋に詰めて、下村がゴーレムフィギュアを路面に投げ出した。


 フィギュアは青く一瞬光り、銀色のゴーレムがそこに立っていた。


「うおー」「でかい」「すごい」


「フィギュアの時はチャッチかったけど、こうなるとそうでもないな」


「このメタルゴーレム、荷物運びに使っているけど、戦わせればメタル大蜘蛛なんかよりよほど強いって話じゃない。実際本当に強そうよね」


「うん。そうだな」


「見てても仕方ないから、そろそろメタルゴーレムに肩掛けベルトをかけて、荷物を掛けてしまおうぜ」


 肩掛けベルトは肩から被せるようにたすき掛けのベルトで、最後に胴の周りのベルトを締めてメタルゴーレムに固定する。


 肩掛けベルトの各所にはフックが取り付けられているので、適当なフックに大ネズミの死骸を入れたゴーレム運搬専用モンスター回収袋を掛けてやった。ゴーレム運搬専用モンスター回収袋にはゴーレムの肩掛けベルトのフック用に補強された孔が空いているので簡単に引っ掛けることができる。この回収袋の孔とベルトのフックは100キロまで耐えられることになっている。


「メタルゴーレムも便利だなー。もっと早く借りとけばよかったな。

 それじゃあいくか。メタルゴーレム、俺たちの後をついてこい」



 現在位置を地図で確かめて、3人は洞窟を進んでいった。先頭がメタル大蜘蛛でその後を足立と下村、そして火野、最後にメタルゴーレムが続く。





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