第285話 足立と下村と火野5
4月に第1、第2、第3ダンジョンがオープンして4カ月。
この3つのダンジョンについて、第1階層から第5階層までの地図が防衛省によって公開されている。第1階層の公開範囲はかなり広いが、下に下がるほど範囲は狭くなっている。この地図は武器受渡し所で印刷販売されており、測量チームによる測量データにより随時更新されている。
今では一般冒険者の中からプロと称してもいいほどのチームが複数現れてきている。彼らの主戦場は第4、第5階層である。4人チームの場合一潜り当り、60万程度の収益を上げるようになっていた。月20日潜れば1200万。一人あたり月300万の収入となる。
十分な収入だが、ここにきて、どのチームも一潜り一人あたり15万で収入は頭打ちになっていた。その理由としては、成果物であるモンスターの死骸の買い取り価格が下がってきたこと以上に、運搬がネックになっていることが挙げられる。また、第4、第5階層辺りでの探索ではケガも増えてきている。どのダンジョンでもまだ行方不明者《MIA》は出ていないが、もう少し深く潜れば、おそらく行方不明者《MIA》も出るだろうと考えられていた。
そういった背景から、8月に入り、防衛省は善次郎の提供したフィギュア大蜘蛛=メタル大蜘蛛、フィギュアゴーレム=メタルゴーレムの貸し出しを開始した。
善次郎の防衛省へのフィギュアの納入価格は、フィギュア大蜘蛛は1個100万円。フィギュアゴーレムは1個200万円である。ポーションでの収益については、税金分を防衛省が肩代わりした形になっているが、ダンジョンでの収入ということで、冒険者同様、最初から非課税扱いになっている。
第1弾として、フィギュア大蜘蛛を2000個、フィギュアゴーレムを1000個納入しており、40億円善次郎の口座に振り込まれている。フィギュア大蜘蛛の納入数の実数は2020個だったが、20個はおまけとして無料にしている。
フィギュア大蜘蛛、フィギュアゴーレムの貸し出し方法は、受け渡し所の脇に設置された自動貸し出し機でレンタル数のボタンを押してカードリーダーにダンジョン免許証を当てると、1日分のレンタル料が口座から差し引かれフィギュアが貸し出し口に落ちてくる。1日あたりのレンタル料は、フィギュア大蜘蛛=メタル大蜘蛛が5万円。フィギュアゴーレム=メタルゴーレムが10万という設定価格である。
もちろん防衛省では、フィギュアレンタル開始前にプロモーションビデオを公開しており、フィギュアの使用法のほか有効性も宣伝しているため、第一線で活躍するチームはこぞってフィギュアをレンタルした。
当初フィギュア大蜘蛛2体+フィギュアゴーレム1体という組み合わせでレンタルされることが多かったが、フィギュア大蜘蛛2体だと過剰戦力だったため、フィギュア大蜘蛛1体+フィギュアゴーレム1体またはフィギュア大蜘蛛1体+フィギュアゴーレム2体という組み合わせに落ち着いた。
メタルゴーレム1体でだいたい150キロほどの荷物を運べるため、フィギュアゴーレム2体を使えば300キロ、モンスターの引き渡し価格をキロ単価5000円としても、150万。そこからフィギュア大蜘蛛1体+フィギュアゴーレム2体のレンタル料を差し引いても125万手元に残ることになる。4人のチームなら一人頭30万、月に20日潜ったとして600万の収入となる。これを1年に換算すると7200万である。
そういうことなので、メタル大蜘蛛とメタルゴーレムを連れていることが冒険者の一種のステータスとして認識されていくことになる。
勇猛果敢の3人は3日ダンジョンに潜り1日休みというスケジュールをこなしていった。
今では、第2階層を主戦場として危なげなくモンスターを狩っている。高校生の3人組だが、一潜りあたり、20万円から30万円確実に収益を上げており、もはや中堅どころと言ってもいいだろう。
3人は節約のため防具をつけたまま自宅からダンジョンに通ってロッカールームは使っていなかったが、チームに参加したのが一番遅かった火野でもすでに100万円を超える収入を得ており、少し前からロッカールームを使うようになっている。
「やっぱり、シャワーを浴びてから服を着た方が気持ちいいな」
「俺たちはサウナに入るわけじゃないから、千円は高いけど、少しくらい贅沢をしてもいいだろう」
「だな」
「火野もそろそろだろうから、俺たちもそろそろ出ようぜ」
「ああ」
ロッカールームの出入り口で待ち合わせをした3人はこれから駅前のマ○クで作戦会議という名のお茶をするつもりだ。
3人はそれぞれ、アイスコーヒーと軽いものを注文し、トレイを持って2階に上がって奥の方の空いた4人席に座った。
「足立と下村、夏休みの宿題進んでる?」
「少しずつやってる」「俺もだ」
「二人とも偉いなー」
「火野はやってないのかよ?」
「もう終わってる」
「なんだよ。だけど大したものだな」
「ダンジョンの休みに何もすることないから」
「俺もそうなんだけどな」「俺もだ」
「体を休めることも仕事だからいいんじゃない。
話は変わるけど、二人とも大学はどうするつもり?」
「そうだなー。まだどこへいこうかとか何も考えていないけど、いくつもりではある。
来年の夏休みには受験勉強で潜れなくなるかもしれない」
「俺も大学にはいくつもりだ」
「そうなんだ。てっきり二人ともプロ冒険者になるのかと思った」
「大学は今しかいけないけど、ダンジョンは大学にいっても潜れるからな」
「二人が大学に進むなら、わたしも大学に進もうかな?」
「火野は大学に進むつもりがなかったのか?」
「ダンジョン好きだし、勉強好きじゃないし。だったらダンジョンで冒険者している方がいいと思ってたんだよ。
でも、二人の言うように、大学にいけるのは今だけだものね。
ねえ、休みの日は一緒に勉強しない? 図書館で勉強すれば捗るんじゃないかな?」
「確かに。さっそくだけど、明日から図書館にいってみるか?」
「「賛成!」」
その後3人は明日の集合場所と集合時間を決めて、解散した。




