第278話 メタルゴーレム列車
ゴーレム列車ができ上った。ゴーレム白馬は座り心地などを優先してビニール感を残すため敢えてフィギュア化せず、メタルゴーレム馬にしなかったが、ゴーレム列車はちゃんとした座席はあるので、少々座席が硬くても問題ないだろう。一人でフィギュアメーカーの部屋に跳んでいくと危険だといって怒られるので、次回一心同体でダンジョン探索をするときついでにいってフィギュア化してやろう。
俺は、目に付いた楽園イチゴと楽園リンゴを摘み取って、屋敷の玄関ホールに帰った。居間からピアノの音が聞こえてきたが、オリヴィアが演奏しているのか華ちゃんが演奏しているのか分からなかった。
止まり木用の横木に止まっていたピョンちゃんの下に置いているエサカゴの上に楽園イチゴと楽園リンゴを数個ずつ置いてやった。ピョンちゃんは、華ちゃんがやってきて食べさせてくれるのを待っているのか、そっぽを向いていた。
居間に入ると、オリヴィアがピアノを弾いて、アキナちゃんは座卓に座ってみかんを食べていた。
どこにいくとも言わずに楽園にいっていたのだがいちおう、
「ただいま」と、言ったら、
オリヴィアがいったんピアノを弾くのを止めて「お父さん、お帰りなさい」と、言ってくれた。
「オリヴィアはピアノを弾いてていいから」
「はい」
座卓でミカンを食べていたアキナちゃんは、
「おっ! ゼンちゃんじゃ。見ないと思っておったらどこかにいっておったんじゃな?」
「楽園にいって、今度はゴーレム列車を作ってきた」
「列車というのは、車が沢山付いてスゴク大きくて長いアレか?」
「俺の作ったのはかなり小さいし、ゴーレムだから車輪の代わりに足が生えてるけどな」
「見てみたいものじゃが、そろそろ昼食の手伝いの時間なんでわらわは台所にいかんと」
「わたしも」
アキナちゃんとオリヴィアが昼食の手伝いに居間から出ていってしまったので、居間の中には俺しかいなくなってしまった。
靴を脱ぐのが面倒だったので、久しぶりにソファーに座っていたら、しばらくしてエヴァが昼食の準備ができたと知らせてくれた。
食堂に入ると、はるかさんがまだだったが、他は全員揃っていた。
学校はもう終わっているはずなので、はるかさんがくるのを待っていたら、すぐにはるかさんもやってきた。
「遅れてすみません」
「わたしもさっきっ食堂にきたばかりだから。
それじゃあ、いただきます」
「「いただきます」」
今日の昼食はハムステーキと温野菜、それにカボチャのポタージュスープだった。
食べながら、エヴァにゴーレム列車が一応完成したことを伝えた。
「お父さん、ありがとうございます。
宿舎はまだだけど、そろそろ作業員の目途を立てておかないといけませんね」
「そうだな。当てはあるのかい?」
「はい、わたしたちの先輩がまだ何人もいますから」
「なるほど。そいつは心強いな」
「はい」
「岩永さん、どういった感じの列車なんですか?」
「見てもらえれば分かるけど、1メートル四方のマスを縦に9つ並べた芋虫チックな列車だ。マスが大きいのは大荷物を持っても乗れるように1マス1人を考えて作ったんだ。
ゴーレム馬と違って、ちゃんとした座席だから、硬くても平気なのでフィギュア化してメタルゴーレム列車にしようと思っている。
こんどダンジョンの探索をするときフィギュアメーカーの部屋に寄ってフィギュア化してやろうと思う」
「それでしたら、明日探索を再開しましょう」
「うん。じゃあ、キリアもアキナちゃんもそのつもりでな」
「はい」「わらわも早く見たいので了解なのじゃ」
「そう言えば華ちゃん、俺たちの機動力なんだが」
「あのゴーレム馬には乗りません」
俺が話をする前に断られてしまった。
「確かにほんのちょっと変な形だけどな」
「機動力を高めるなら、ヘイストでも十分じゃありませんか?」
「確かに」
華ちゃんの言うようにヘイストなら機動力が高まるうえ、動きや反応さえも高速化される。俺たちの場合アキナちゃんの5割増し効果まである。そう考えると、俺の今までのゴーレム馬の開発は無駄だったのか!?
まあ、みんなで楽園の馬場を2周したことをいい思い出にしまっておくしかないか。
いやいや、俺たちには不要のようだが、従業員用の足にすればいいから、無駄ではないな。よかった。
翌日。
俺たち一心同体は、ピョンちゃんも連れて久しぶりのフルメンバーでダンジョン探索を再開することにした。
まずゴーレム列車をフィギュア化するためフィギュアメーカーの部屋に跳んだ。そこで華ちゃんが一連の魔法をかけて安全を確認してくれた。その後、みんなにヘイストをかけてくれた。
こうして全員ヘイスト状態だと、ヘイストをかけられた本人も、周りにも全く違和感はない。
「それじゃあ、ゴーレム列車をフィギュア化します」
ゴーレム列車は全長9メートルちょっとあるが魔法陣はもっと大きいし、もっと大きなバジリスクでも問題なくフィギュア化できたので、気にすることなく、魔法陣の上にアイテムボックスから排出し、キーワード『エレメア』を唱えたら、ゴーレム列車全体が青く輝いて、光が収まったら、15センチほどの銀色の列車のフィギュアができ上った。
「できた」
いったんアイテムボックスの中に収納してちゃんとコピーし、オリジナルを手の上に出してみた。
これは、なんだか子どものおもちゃのようでもあるが、車輪の代わりに足が生えているのでキモ可愛い系かもしれない。
「ほう、これも面白そうじゃな」
「もし罠をふんづけても、ゴーレムだから安心だ。
試しにみんなで乗ってみるか。
この部屋の外に出たら真っすぐの通路だから、試運転にちょうどいいぞ」
華ちゃんも異存がなかったようで、フィギュアメーカーの部屋を出た。いちおう華ちゃんがデテクトなんちゃらをかけたが、反応は何もなかった。
手に持ったゴーレム列車のフィギュアを床に投げ「メタルゴーレム列車!」
床に当たったフィギュアが一瞬青白く輝き、銀色のメタルゴーレム列車としてよみがえった。
ゴーレム列車はメタル化して銀色になったことで、一気に引き締った感じがする。
「乗ってみよう。メタルゴーレム列車、伏せ!」
30センチほど車体の位置が下がった。
俺が先頭で、入り口を乗り越えて、順番に華ちゃん、アキナちゃん、キリアの順に乗車した。
「座席に座ったら、前の仕切りの縁を掴んでおいてくれ」
「ちょっと前が広すぎませんか?」
「リュックを持った冒険者のことを考えたんだ」
「ゼンちゃん、手を伸ばそうとしたら、座ったままでは、わらわの手が届かんのだが」
「お父さん、わたしは、手は届くけど掴めません。
それと左右が広すぎのような気がします」
「右側に寄って横の壁を掴めばいいんだが。うーん。
一人一マスは大きかったな。
じゃあ、俺の隣りにアキナちゃん、華ちゃんの隣りにキリアが座るか。
そうすると3両編成じゃなくて先頭車だけでよかったけど、試乗の今回は後ろをつけたままでいいだろう。座らずに立ったままでもいいしな」
俺とアキナちゃんも立ちあがり、後ろの華ちゃんとキリアも立ちあがって前の仕切りの縁を掴んだ。
「メタルゴーレム列車、立て!」
列車が30センチほど高く持ちあがった。
「メタルゴーレム列車、前進!」
メタルゴレーム列車は歩き始めた。目の前の通路は100メートルほど直進してそこで右折している。
揺れは全く気にならない。俺の隣りに立つアキナちゃんが身を乗り出している。
「メタルゴーレム列車、速度を上げろ」
メタルゴーレム列車が少しずつ速度を上げていった。現在6体のゴーレムがこのメタルゴーレム列車に合体しているわけだが、先頭のゴーレムに命令するだけで、ちゃんと後ろの5体が追随している。意図したわけではないが、よくできている。
速度を落として右折カーブを曲がったが、問題なかった。
「よーし、メタルゴーレム列車、ゆっくり停止」
速度を少しずつ落としてメタルゴーレム列車が停止した。
「メタルゴーレム列車、伏せ」
アキナちゃんが最初に降りて、その後みんなメタルゴーレム列車から降りた。
「どうだった?」
「二人で立っている分にはちょうどでした」
「なかなか良かったぞ」「さすがはお父さんです」
「俺たちが使う分には、先頭車両だけでいいし、出入り口が左側にしかないけど、2人で一マスに並んで乗り込むなら、右にも出入り口があった方がいいな」
先頭車両だけ使うとしても、こういった石組型ダンジョンじゃ、使い勝手は華ちゃんのヘイストの方が格段に優れているが、北のダンジョンのような分岐が少なく直線距離の長い洞窟型ダンジョンなら結構役立ちそうだ。




