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岩永善次郎、異世界と現代日本を行き来する  作者: 山口遊子


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第277話 ゴーレム列車。


 ゴーレム白馬の形状に難があるため、華ちゃんが騎乗する可能性は限りなく低い。


 エヴァのイワナガ運送の第10階層進出のためには、ゴーレム白馬で十分だが、イワナガ運送の事業を人へ展開するためにはゴーレムバスはなくてはならない。



 イワナガ運送が第10階層に進出するのは、北のダンジョンの近くに建設中の宿舎ができ上り、新たな作業員を雇ってからの話なのでまだまだ時間はある。しかし、『光陰矢の如し』の言葉通り、あっという間に時間は過ぎていくので、気を引き締めていく必要がある。



 例のごとく風呂に入って、湯舟に浸かり、ゴーレムバスについて考えてみた。


 現在のゴーレムバスはゴーレムを2体合体させた3型だ。とりあえず人が乗っても問題ない性能だと思うが、運用形態などを踏まえてもう少しちゃんと考えた方がいいだろう。


 まず、速度の問題。ゴーレム白馬は入り口から第10階層まで1時間ほどで到着できるが、ゴーレムバスで複数の冒険者を乗っけて時速20キロは厳しいような気がする。時速15キロまで落とせば、1時間20分。余裕を見て1時間半。ちょっと長いがそれほどでもない。


 乗客数はどうするか?


 せめて10名は乗せたい。横幅はあまり取れないから10人で一列。幅を1メートルにして、一人当たり、いくら大きなリュックを持っていたにせよ縦1メートルもあれば十分だろう。


 1メートル四方のボックス席だ。乗客は1メートル幅の座席に座り、リュックは膝の上に置く。


 そうなると、ゴーレム2両連結じゃなくて、3両連結だな。こうなるとゴーレムバスじゃなくってゴーレム列車だ。それでもいいな。1両当りボックス席3つ。3両編成で9人か。まっ、良いか。


 値段はエヴァが最終的に決めればいいが、第5階層から、第1階層までの荷物運びは重さ10キロあたり銅貨5枚だ。荷物が30キロで、武器、防具それに衣類を含むのでかなり軽めの見積もりだが冒険者の重さを70キロとすると、合計100キロ。これに10キロで銅貨5枚を当てはめると銅貨50枚。誰がどれほど荷物を積み込もうが銅貨50枚に設定してやれば悪くないはずだ。9人乗ってくれれば、銅貨450枚だ。


 第5階層での荷物運びは、冒険者がやってきた順に荷物を運んでいたが、ゴーレム列車はそういった意味では小回りがきかないので発車時間を決めていた方がいいな。


 冒険者が第1階層から第10階層まで歩くとなると3時間以上かかる。ゴーレム列車に乗れば1時間半で到着する。1時間半の時間の価値が銅貨50枚か。帰りの便は混むかもしれないが行きの便は空くかもしれない。その時は値段を下げるなりすればいいか。従業員を雇う費用さえ賄えれば十分だし、バレンダンジョンの冒険者たちの収入が増えていけば、利用客もどんどん増えるだろう。


 出入り口は各ボックス席に作る。フックの付いたロープで十分だろう。


 だんだんと形が見えてきたぞ。


 湯舟から上がって体と頭を洗って、再度湯舟に入った俺は、肩まで浸かって100まで数えて湯舟から上がり、湯舟のお湯を入れ替えて風呂を出た。



 翌日。


 俺はゴーレム列車開発のため、無い知恵を絞ることにした。


 まずは基本単位となる車両だ。


 車両はゴーレム2体を連結して3人分の長さ3メートル。ゴーレムバスの時は、2体のゴーレムの連結に後ろのゴーレムの2本の腕を使ったが、今回は2体のゴーレムを完全に融合してしまうことにした。車両は前方に連結用の2本の腕、側面に足が6本という形になる。


 1両目だけは二本の腕が余ってしまう。


 これの問題点は、普通の電車と違って前後がはっきりあるので、折り返すときはぐるりと回る必要があることだ。第1階層にあるダンジョン出入り口の空洞は狭くはないが広くもないので、冒険者の密度から考えると、かなり邪魔かもしれない。そこはネックではある。あの空洞を拡幅できないわけでもないからそこは何とでもなるか。


 各車両には1メートル四方のマス席が3つ並んだものを作った。どのマスも壁の高さは80センチにしている。


 ダンジョンでは基本右側通行なのでマスの左側は出入り用に空けている。


 これで車両の準備ができたので楽園の中央広場に跳んで、先ほど錬金工房の中で作った車両を並べてみた。


「2号車は1号車の後ろにつかまって、3号車は2号車の後ろにつかまれ」


 各車両の後方には左右に出っ張りがあり、後ろの車両から伸びる腕でその出っ張りを掴むことで車両は連結する。


 3両の車両が連結し、9人乗りのゴーレム列車が完成した。先頭車両の前の方には2本の腕がついていて、両側から9本の脚が出ているので18本足の芋虫のようでもあり、9個の個室マスが一列に並んでいるので不気味さがほのかに香るジェットコースターにも見える。


「ゴーレム列車、伏せ!」


 ゴーレム列車が膝で足を折りたたんで、伏せの姿勢をとったところで俺は先頭のマスに入りマスの後ろ30センチ幅で高さ50センチほど盛り上げて作った座席に腰を下ろした。


「ゴーレム列車、立て!」


 立ち上がったゴーレム列車だが、路面からの床の高さはそれほどでもないので安定感はある。


 ただ、椅子に座っていると、前の仕切りの縁を手で掴むためには腰の位置を前に移動しないといけなかった。リュックなどの荷物を膝の上に乗っけていたら、リュックが邪魔で横壁を手で掴むのが難しい。


 それでも、一応ゴーレム列車を動かしてみたが、動きはスムーズで妙な振動もなかった。


 これなら、出入口辺りをちゃんと作り込めば、でき上りだ。


 マスの出入り口はロープを取り付けてしまおうと思っていたが、壁の高さを椅子の高さと同じ50センチにすれば荷物も落ちないしゴーレムを変形するだけなので簡単だ。椅子の部分だけ正規の壁の高さにしておけば人も座っていて安心だ。



 いったん俺はゴーレム列車(・・・・・・)を収納し、出入り口の加工を施して、再度広場に出してみた。


 これはなかなか、いいんじゃないか?


 一度乗り込んでみたところ、出入り口の50センチを乗り越えるのは何も問題なかった。座席に座ったところ、前の壁との距離が気になったが、座席の右なり、左なりに寄って横の壁の縁に掴まっていれば問題ないようだ。


 細かい修正はあるだろうが、これでいちおう完成だな。


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― 新着の感想 ―
[一言] 地球の製品も流用すればいいもの作れるのにな。いいサスペンションとかタイヤとか
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