第276話 白鳥の騎兵隊
エヴァとゴーレム白馬の試乗をしたところ、見た目はアレだったが思った以上に優秀だった。フィギュア化すればさらに優秀になるだろうが、フィギュア化してしまうと銀色のメタル白馬になってしまい、ビニールの柔らかさが損なわれると思うので、あえてフィギュア化はしないつもりだ。
ゴーレム白馬を一心同体の正式装備にしたいところだが、華ちゃんは嫌がるだろう、ということは、俺でも簡単に予想できる。キリアとアキナちゃんは喜びそうだが、華ちゃんの機嫌を損ねるわけにはいかないので、正式装備化は諦めるしかなさそうだ。
ゴーレム馬はこんなところで、次はゴーレムバスだな。
とりあえずのものは作ってはいるが、形状などもう少し詰める必要もあるし、乗り心地なども確認しなければならないところが沢山ある。いっそのことゴーレム白馬を連結すればいいだけなのだが、どうしたものか?
俺がコタツ改め座卓でミカンを食べながら思案していたら、華ちゃんが俺の向かいに座って、
「エヴァちゃんが言っていましたが、岩永さんがゴーレムの馬を作ったって。
わたしも乗ってみたいし、他のみんなも乗ってみたいんじゃないかな?」
「大きさはポニーだし、エヴァも問題なく乗れたからいいんだけど、華ちゃん、ホントに乗る?」
「え、ええ。何か問題でも?」
「見た目がちょっと、アレでアレなんだよ」
「???」
「それじゃあ、ちょっと見てみる? 玄関ホールで出してみせるから。ダンジョンの外だから動かないけど、見た目だけは伝わるから」
俺と華ちゃんは靴を履いて、居間から玄関ホールに出た。ピョンちゃんは華ちゃんが現れたので、ピヨン、ピヨン鳴いたが、華ちゃんの肩には止まらなかった。私服の時は結構痛そうだからピョンちゃんも遠慮しているらしい。
「それじゃあ、俺のトルネード号を出してみせるから」
「名まえまであるんですか?」
「ダンジョンの洞窟の中で乗っかって駆けてたら気持ちよくって思いついたんだ。
トルネード号!」
俺たちの前に白馬トルネード号が現れた。
「これは、何というか、幼児用の、アレですか?」
「そう見えても仕方ないかも。俺の造形センスのなせる業。かな?」
玄関ホールに何とも言えない雰囲気が漂う中、さっきまでどこにいたのか分からなかった子どもたちが集まってきた。
「あっ! ゴーレム馬だ」と、エヴァ。
「カッコいー!」「乗りたーい」「さすがはお父さん」「わらわも乗りたいのじゃ」
思った通り子どもたちには大好評だった。そのかわり、華ちゃんは、危険を察知したのか何も言わず居間の方に去っていった。
「ここじゃあ、動かせないから、楽園にいってみるか」
「「はーい」」「いくのじゃー!」
俺はトルネード号をしまって、5人を連れて楽園へ飛んだ。跳んだ場所は草は生えているが木は立っていない楽園の壁際だ。
「まずはエヴァのゴーレム馬」
それから順にみんなにゴーレム馬を作ってアイテムボックスから地面の上に置いてやり、それぞれのゴーレム馬に主人を教えてやった。
「伏せ!」
「「伏せ!」」
全員のゴーレム馬がその場に伏せた。シンクロしてて実に気持ちいい。
「みんな、馬にまたがって馬の頭の横から出ている横棒をしっかり掴む。足は、足かけの上な。
そしたら『立て!』」
「「立て!」」
「最初は、ゆっくり歩くところからの練習だ。みんな俺についてきてくれ」
「「はい」」「うひひ」
俺は子どもたちを引き連れて、ゆっくり楽園の壁際を歩いていった。
しばらくゴーレム馬を歩かせた後、後ろを振り向いて、
「少しスピードを上げるからな」
時速にして15キロくらいまでスピードを上げて軽く駆足した。後ろから5頭のゴーレム馬の足の音が聞こえる。振り返ると俺を先頭にいつの間にか一列縦隊になっていた。白鳥の親子のようにも見えるが、見ようによっては騎兵隊にも見える。そうなると『白鳥の騎兵隊』だ。
ドシ、ドシ、……。
蹄じゃないから、パカパカとはいかないようだが、そこはご愛敬だ。
壁際を走っていたら、プールまでやってきてしまった。いったん内側に回って、泉も越えてまた壁際に沿って走っていく。爽快だ。
楽園を壁沿いに一周したところで、馬を止めて休憩だ。
ゴーレム馬をその場に伏せさせ、みんなが馬から下りたところで、アイスクリームを配ってやった。
「楽しかったー」「気持ちよかったー」
「みんなが馬に乗っているところを絵にしようか?」と、イオナ。
「それは良いのー。そうじゃ! また神殿の壁画をイオナに頼むのじゃ!」
「アキナちゃん、任せて。もう目に焼き付けているからいつでも描けるよ」
俺たち騎兵隊の雄姿が壁画になるのは嬉しいが、もし、日本から何も知らない人間がやってきて、神殿の壁画を眺めたら、腰を抜かすんじゃなかろうか? だとしても『もし』は所詮『もし』どまりだ。誰も日本からやってくるはずないから気にしても仕方ない。召喚魔法陣もダメになってるしな。
イオナのために買った美術本の中に馬の絵もあるだろうから、その馬に乗っている俺たちの姿を想像して描いてもらえばカッコいい絵になるはずだ。イオナならそれくらい朝飯前のハズだからな。
アイスを食べ終わった俺たちは楽園をもう1周してから屋敷に戻った。
屋敷に帰ったときには、いい時間だったので、俺は風呂に入り、一心同体の機動力を高めるため華ちゃんをどうにかしてゴーレム馬に乗っけられないか考えてみた。確かに女子高生がアレに乗ってはしゃいでいる姿は、俺でさえドン引きだしな。
馬車ならいいかもしれないが、洞窟内の路面がガタガタなので車輪はNGだ。
やる気になれば洞窟の路面を削って平べったくできないこともないが、面倒だし、素人が平べったく削った結果妙に斜めだったりしても元に戻せるわけでもないので、止めた方がいい。
となると、凸凹に強い足がついたゴーレムバスしかないか。華ちゃん専用の一人乗りのゴーレムバスだな。幌馬車を3騎の騎兵隊が守るのか。それもいいな。
2型だか3型で開発が停止したままのゴーレムバスの開発を急ぐとするか。




