第274話 ゴーレムバス2、ゴーレム馬
ゴーレムバス2型は、そこそこのできではあったが、客を選ぶバスだった。これでは一般向けのバスとして事業展開は難しい。
自室に戻った俺は、ベッドに横になって天井板の木目をぼんやり見ながら、振動問題の解決方法を考えるべく無い知恵を絞ってみた。かけらもないものを絞ると、必要じゃないものが絞りだされるのが世の常なのだが、俺の頭は世の常を凌駕していたようで、なんとか使えそうなアイデアをひねり出すことができた。
ゴーレムバスで振動が大きいのは足が4つしかないのに人の乗り込む場所が大きすぎることで揺れの振幅が大きくなることが原因の一つだ。それと、対角線上の2本の足が同期して動くことで対角線を軸にした揺れが発生することがもう一つの原因だ。もともと4本足だったら、ここまで揺れずに済んだのだろうが、もともと2本足のゴーレムではこれが限度なのだろう。
この解決法として、人の乗る場所を小さくすることがまず1つ考えられるが、それでは運搬手段としてのバスとは言えない。
次の解決策としては足の数を2本増やして6本にし、移動時の足の動きの対角線を>型と<型とが交互になるよう足を動かせば揺れはある程度解消するはずだ。
とはいえ、ゴーレムには自由になる手足は4本しかないので、勝手に足を増やしたところで増やした足がちゃんと動くはずはない。そこで俺は、2体のゴーレムを前後に合体させることを思いついたのだ!
前のゴーレムのまたぐらに後ろのゴーレムが頭を突っ込んでるイメージだ。前のゴーレムは4本足。後ろのゴーレムは腕で前のゴーレムにしっかり掴まって、足は2本。合体ゴーレムは6本足の昆虫のようなものになる。
俺はイメージを固めるため、またまた粘土細工で合体ゴーレムを作ってみた。
気持ちは合体ゴーレムなのだが、粘土で作った模型の見た目は、足が6本の弁当箱なので、ほとんど意味がなかった。
さっそく錬金工房の中で、合体ゴーレムを作ってみよう。
まずは、2体のゴーレムを作り、構想通り1体目のゴーレムを四つん這いにして、そのまたぐらに2体目のゴーレムの頭を突っ込んで、そのゴーレムが手を伸ばして前のゴーレムの腰を掴んだ形に組み合わせてみた。
そいつを少しずつ変形させていき、最終形態である、昆虫型に持っていった。揺れの比較をするため今回の胴体も長細い弁当箱型である。
「出でよ、ゴーレムバス3型」
楽園に戻って、アイテムボックスからゴーレムバス3型を広場に出してみた。
「ゴーレムバス3型、伏せ!」
ゴーレムバス3型に乗り込んだ俺は、前回と同じように一番前に立って横板に手をかけて、
「立て、それからゆっくり前進!」
思った通り、今度はほとんど揺れずにゴーレムバス3型は歩いていった。
「ゴーレムバス3型、駆足!」
かなりの速さで駆足を始めたゴーレムバス3型だが、多少の揺れはあるものの乗ってる俺が気になるほどの揺れはなかった。
ここで『止まれ』と言うと、急停止してしまうので、
「ゴーレムバス3型、少しずつ速度を落として止まれ」と、命令したところ、急停止することなく止まってくれた。
これなら大丈夫だ。あとはバスの中を乗り易く改造していけば客を選ばない一般大衆バスとして事業展開できるはず。
バスの出入り口だが、乗客に横板を乗り越えろ。とは言えないので、扉は必要だろう。座席もあった方がいい。決まったところを往復するだけのシャトルバスなので運転手は不要だな。
そこまで考えたのだが、もともとゴーレムバスを作ろうとしたのは、イワナガ運送の従業員を作業場に運ぶ足を作ることだった。
ということは、最初から、ゴーレムが人一人を負ぶってダンジョンの中を駆けていってもよかったわけだ。馬のような形のゴーレムを作って、それに跨っている分にはそれほど揺れもないだろう。馬の形そのものは俺の造形力では難しいが、馬そっくりに作る必要など何もない。似てればいいだけだ。気持ちは埴輪の馬だな。はに〇くんのお供の馬の名まえは忘れたが、アレで十分だ。
俺はゴーレムバス3型をアイテムボックスにしまって、その場で埴輪の馬型ゴーレムを錬金工房で作り始めた。
古代人をバカにする気はないが、さすがに埴輪の馬程度俺にも簡単に作れるだろう。
そう思っていた人物がここにおりました。
埴輪の馬くらいと思っていたのだが、俺の造形力はその『くらい』を超えることもできなかったようで、四つ足の何かができ上った。
『鹿も四つ足、馬も四つ足』という言葉が頭の中をよぎったが、世の中四つ足なら何でも馬ということはない。それなら机も馬だし、テーブルも馬だ。
と、屁理屈をこねてみても目の前の造形がラシクなるわけではない。
俺が創り上げたゴーレム馬の形状は、強いて言えば、4本足の生えた白鳥だ。座り心地や持ち手があった方がいいだろうとか凝ったつもりであれこれ考えているうちにでき上った造形だ。
とはいえ、乗れればいいと言えば乗れればいいのだから、試しに乗ってみることにした。ダンジョン内を駆けまわることを想定しているのでゴーレム馬の大きさはいわゆるポニーだ。それでも、鐙もなければ鞍もつけていない裸馬に飛び乗れるわけでもないので、
「ゴーレム馬、伏せ!」
伏せた態勢のゴーレム馬は見ようによってはモロ、オマルだ。それでも俺は、ゴーレム馬にまたがり頭の横から左右に伸びた持ち手をしっかり握って、
「ゴーレム馬、立て!」
ゴーレム馬はすくっと立ち上がった。背中に跨った俺の目の位置が結構高くなった。
「ゴーレム馬、ゆっくり前進」
ゴーレム馬が歩き始めた。揺れはほとんどない。これなら、と思い、
「ゴーレム馬、駆足!」
ゴーレム馬が駆けだした。それなりに揺れるが、持ち手をしっかり握っている関係でそれほど気にならない。鐙があればさらに乗り心地が良くなりそうだ。
気持ちよく楽園の広場を駆け足で回っていたのだが、そのうち尻が痛くなり始めた。石でできたゴーレム馬なんだから痛いのが当たり前だ。尻の下に座布団を敷いてもいいし、鐙とセットで鞍のようなものを取り付けてもいい。
今日の俺は冴えていたらしく、そこでまたまた素晴らしいアイディアが閃いた。
ゴムっぽい材質の何かでゴーレムを作れば柔らかゴーレムができるはずだ。以前、フィギュアでゴーレムを作った時は大失敗だったと思ったが、アレを変形してやれば柔らかゴーレム馬ができ上るはずだ。
あのビニールゴーレムはアイテムボックスに入れていたはずだがどこにあるかな?
意識したらすぐに見つけることができた。さすがはアイテムボックスレベルマックスだ。
さっそく錬金工房の中でビニールゴーレムを変形してゴーレム馬を作り上げた。最初のゴーレム馬は石の色で灰色っぽい色だったが、今度のゴーレム馬はところどころに赤いラインは入っているが真っ白だ。見ようによらなくても白鳥に近づいてしまった。
俺は心を鬼にして、ビニールゴーレム馬に乗ることにした。
同じように『伏せ』からビニールゴーレム馬に乗ったところ、尻の塩梅もいいし、持ち手の握り具合もなかなか良い。そのまま広場をぐるりと駆けてみたが、尻が痛くなることはなかった。これならこのまま加工しなくても、製品として世に出せる。
こいつをまずは4体作って、一心同体の正式装備にしてもいいかもしれない。AAランク冒険者パーティーがダンジョンの中を颯爽と騎乗して一般冒険者の横を走り過ぎていくわけだ。宣伝効果抜群だ。バスなんかより需要がでそうだ。




