第273話 ゴーレムバス1
アニメで動物がバスになったのがあったことを思い出した。
あんな感じのバスがあればいいのだが。ゴーレムがなー、ゴーレム、ゴーレムしすぎなんだよなー。
そういえば!
ゴーレムはもちろん俺の錬金工房で簡単にコピーできる。ということは俺の芸術的感性のおもむくまま、変形できる。だけど、問題は、俺の芸術的感性はあらぬ方向におもむいちゃうんだよなー。それでも、あのバスくらいのものならできそうな気がする。あれができれば、ダンジョン革命だよな。バスに足がついていればダンジョンの階段だってへっちゃらだし。
俺の芸術的感性が妙な方向に爆発しないように、まずは、よーく観察だ。
ということで、俺は最近御無沙汰だったビデオ屋にいって目当てのアニメを仕入れることにした。
店に入って入り口に置いてあったカゴを持って、中古アニメの棚を見て回ったのだが、目当てのアニメは置いてなかった。
目的は果たせなかったがせっかくビデオ屋にきたので適当にカゴの中にアニメに限らず中古の映画を入れていき、精算して、ビデオ屋をでた。
うーん。どうしたものか?
いきなり錬金工房の中でゴーレムをいじくりまわしてもうまくいくはずはない。まずは粘土を使って模型を作ってみよう。
でき上った模型を見ながら錬金工房でゴーレムを変形していけば、俺の芸術的感性は暴走しないでちゃんとしたゴーレムバスが作れるはずだ。
粘土はフィギュア美少女の時に一度作ったのでいくらでも用意できる。
屋敷に戻った俺は自室に引きこもり、粘土作業用にポスターフレームを床に置いて粘土を一心にこねていった。
20分ほど粘土をこねていたら、粘土に体温が移って、少しだけ温かくなってきた。そろそろいいんじゃないか?
まずはバスの本体部分になる長四角を作ってみた。そこに、足を取り付ければもう完成だ。
アニメだと足の数が沢山あったが、ゴーレムに足をたくさん生やしてしまっていいものか? と、疑問に思った。足があっても動いてくれなければ無意味どころか邪魔なだけだからな。多少揺れは大きくなるだろうがやはり無難なのは4本足までだろう。
ということで、粘土をコロコロして円柱を作り、バス本体の裏側に取り付けてみた。うーん。ナスビに楊枝を4本刺したお盆のお迎えとまではいかないが、どこからどう見ようと見てくれが悪い。足が長すぎるところが特におかしい。そもそも、これだとバスに乗ること自体が無理そうだし、ダンジョンの天井につかえそうだ。
しかし、足を短くしてしまうと、速度が出ないし、階段を下りようとしたら腹がつかえてしまうか前足か後ろ足が宙に浮いてしまう。
で、結局カメの足をイメージしてそれなりに長い足を膝部分で折り曲げて進み、要所、要所で膝を伸ばすことを考えた。足の取り付け場所は、裏側ではなく、側面にしてみた。
でき上ったゴーレムバスは、甲羅が長四角になったカメのような感じになった。
安定感もあるし、見た目はそれほど悪くない。
俺は、そのお手本を見ながら錬金工房の中でゴーレムをいじりまわし、なんとか、ラシイものを作り上げた。
実際にどんなものになるのか確認するため、楽園の真ん中の広場に跳んでみた。
「出でよ、ゴーレムバス! 」
アイテムボックスの中から楽園の広場に取り出したゴーレムバスを正面から見ると四角い本体に小さな赤い目玉が2つ付いているのだが、かわいいのか不気味なのか意見が分かれるところだろう。
イメージ通りのゴーレムバスだったのだが、イメージが悪すぎたようだ。
そもそも、人が乗るべき空間がどこにもなかった。これではただの変なカメゴーレムだ。
それでも、ちゃんと動けるか試してみたところ、それなりに動き回ることはできたので、開発の方向性は問題ないことが分かった。
カメゴーレムをアイテムボックスにしまって、いったん屋敷に帰った俺は、自室で再度ゴーレムの形状について考えることにした。
人の乗り込む場所をどう確保するかが課題なのだが、そもそも、ダンジョンの中では雨風の心配がないわけで、屋根など必要ないわけだ。極論すれば、バスから落っこちなければそれで十分なわけである。
となると、かなり形状は簡単になる。正月に正方形の重箱もどきを作ったが、形状的にはあれを長四角にして、足を4本側面に取り付ければいいだけだ。
再度粘土で模型を作り、イメージを固めた俺は、錬金ボックスの中で、ゴーレムを変形させてゴーレムバス2型を作り上げた。
アイテムボックスの中に納まっているゴーレムバス2型は俺のイメージ通りではある。次はダンジョン内で実際に動かしてどんな感じになるか確認しなくてはならない。
再び楽園に跳んだ俺は、ゴーレムバス2型をアイテムボックスの中から中央広場に出してみた。
見た目は1型とさほど変わりはないが、今度は弁当箱を細くしたような胴体に乗り込むことができる。
「ゴーレムバス2型、伏せ!」
ゴーレムバス2型を地面に伏せさせ、弁当箱の横板を乗り越えて俺はバスの中に乗り込んだ。
バスは幅1.5メートル、長さ5メートルくらいなので、一人で乗るには大きいが、それほど大きくはない。
バスの一番前に立って、正面の横板に手をかけた俺は、
「ゴーレムバス2型、立て!」と、命令した。
カメの足が伸びて、バスの床の高さは地面から60センチくらいになった。これくらいならダンジョン内のどこを通ろうと頭を天井にぶつけることはないはずだ。ただ、立ち上がる時ぐらりと揺れた。横板をちゃんと掴んでいなかったら、ひっくり返ったかもしれない。
「ゴーレムバス2型、ゆっくり前進!」
ゴーレムバス2型は4本足で歩き始めた。のっしのっしと歩くのだが、先端部に立っている俺の位置は上下左右にかなり揺れる。横板にしっかり掴まっていないと、立ってはいられないほどだ。
そこは改良の余地はあるのだが、歩行はおおむね良好だった。
「ゴーレムバス2型、駆足!」
今度は、スピードを上げてみた。
がっくんがったん、がっくんがったん。
とんでもない揺れでこれでは5分も乗っていられない。
「停止! 停止!」
あまりの揺れに耐えかねてゴーレムバス2型を停止したのだが、はずみで俺は横板から飛び出すところだった。
シートベルトがないと危険だ。というか、駆足そのものが危険だ。
自動車メーカーの自動車開発の困難さの一端を垣間見てしまった。




