第270話 足立と下村3
初めてのダンジョンでの実入りで装備を整えた上、5万円ずつ貯金のできた足立と下村は週明け二人そろって学校に登校した。
二人が教室に入ったのは始業の15分前。教室の中には半分ほど生徒が登校しており、友達と雑談したりしていた。
教室に入って早々、足立と下村にむかって、あまり仲の良くない男子生徒がニヤニヤ笑いながらダンジョンでの成果を聞いてきた。残りのクラスの連中も、足立と下村の答えを待っているようで、それまでクラスメイト同士の雑談を止めて聞き耳を立てていた。
「足立と下村じゃないか。今日も仲良く登校して。
ところで、二人してダンジョンはどうだった?」
二人はダンジョンの一般オープン初日にダンジョンに入ることをクラスメイト達に告げていた。クラスのほとんどの者は、二人がダンジョンに本当に入ったとしても何の成果もなかったのだろうと思っていた。
「1匹だけだがモンスターを斃した。
重さは11キロ、最高査定で買い取ってもらったぞ」
モンスターは1キロ1万から3万で買い取られるという事前情報をみんな知っていたようで、クラスの中にどよめきが広がった。最高査定ということは、動物型なら3万、虫型なら2万。
「本当なのか?」
足立が学生服のポケットからスマホを取り出して、ダンジョンでの記念撮影した画像を見せてやった。
「そういうことだ」
そう言って足立はスマホの電源を切ってポケットの中にしまった。
机にカバンを置いた足立と下村のところにクラスメイト達が集まってきた。
足立と下村の席は近かったので、ダンジョン初日でのことをクラスメイトに聞かれるまま二人で話してやった。二人とも、なぜか女子大生風の弓持ちからキスされたことは話さなかった。
「35万2千円!」
買い取り価格を聞かれたので正直に答えたら、具体的な数字を聞かされたクラスの中がさらにざわめいた。
「すげー。俺もダンジョン免許取ってればよかった。夏休みには絶対取るぞ!」
「俺も、俺も」
……。
周りの騒ぎが少し落ち着いたところで一人の小柄な女子生徒が真面目な顔をして、
「ねえ、足立と下村、わたしがダンジョン免許取ったら仲間に入れてくれない?」
「そうだなー。火野は何が得意なの?」
「わたしはなんでもできるよ。たぶん」
「中学の時、火野は何してたの?」
「帰宅部」
「そ、そうなのか。
まっ、無事免許が取れたらな」
「わたし、頑張るからね」
「免許もそうだけど、冒険者の活動にはある程度お金も必要だからな。武器も防具もそれなりに高いし、ダンジョンの中に入れば千円、ロッカールームを使えば千円、武器の保管料は1カ月で千円、どんどんお金がなくなるから」
「お金なら大丈夫。わたし結構貯金してるから」
「それならいいけど」
その日、授業の合間の休憩時間。足立と下村と一緒にダンジョンに入りたいという生徒が何人かいたが二人とも曖昧に返事をしただけだった。
放課後、帰宅部の足立と下村は一緒に学校を出てその帰り道、
「俺たちがダンジョン免許を取って冒険者になると言った時、みんなバカにしてたがえらい変わりようだったな」
「そういうもんだろ。でも、今日俺たちと一緒にやっていきたいと言ってきた中で、火野だけは俺たちのことをバカにしてなかったぞ」
「そうだな。あの小柄な火野ではダンジョン免許を取るのは難しいだろうが、免許を取った後も俺たちと一緒にやりたいっていうなら、仲間にしてもいいかもな」
「そうだな。
それはそうと、ダンジョンって、いったい何階層まであるんだろうな?」
「深さもそうだけど、今の第1階層でさえ、どこまで広がっているのか分からないからな」
「不思議だよな」
「ダンジョンのことはそうだけど、それより例の4人組について、防衛省が『最強の冒険者チーム』って発表したじゃないか」
「あったな。防衛機密とまで言ってた。それまでグリーンリーフのことをずっと日本一の冒険者チームだと思っていたけれど、とんでもない連中なんだろうな」
「遠くから撮影みたいで不鮮明だったが、3人黒服で、一人だけ白服だった。
男1人、女3人の4人のチームで、女3人のうち二人は小柄というより中学生くらいじゃないかって話だったろ。
いちおうダンジョン免許は16歳以上ということになっているから、小さくても高校生以上なんだろうけどな」
「それでも、小柄な女子がチームのメンバーに二人も入って『最強の冒険者チーム』とまで防衛省で言ってる以上、本当に魔法が使えるんじゃないか? 俺の考えだと小さい二人のうちの黒服が攻撃魔法専門の魔術師で白服が回復魔法とか強化魔法専門の僧侶だ」
「確かにそんな感じだよな」
「グリーンリーフの斎藤一郎は魔法の杖で魔法を使ったけど、鈴木茜は何も持たず魔法が使えるんじゃないかって噂もあるし、防衛省も魔法についての質問には一切答えていないし、絶対、魔法ってあるよな」
「そりゃあ、魔法の杖の攻撃魔法だけってはずはないから。ダンジョンがあるのに魔法がないわけないものな」
「あと、初日に金の塊を見つけたって昨日の新聞に出てただろ?」
「うち新聞取ってないから、俺はスマホのニュースで知った」
「俺たちは入場規制のある休日しかダンジョンに入れないけれど、入場規制のない平日だと混みそうだな。特に今日なんか」
「でも、ダンジョンの中は思った以上に広かったから混むって程でもないんじゃないか。本当に混むようだと入場規制が始まるかもしれないけど」
「だな。しかしオープンしてから、二日間で、3つのダンジョンを合わせてケガ人が二桁ってすごいよな」
「そうだな。第2階層までいった連中もそれなりの数いたそうだけど、ダンジョン免許証がダテじゃなかったってことだろうな」
「だな。
俺たちも、ダンジョン免許証取る時にトレーニングしたけど、ダンジョンに入らないときはトレーニングした方がいいかも知れないぞ。
サボっていると体力も落ちてくるだろうし、動きも悪くなるからな」
「学校で昼休みにでもランニングするか?」
「そうしようぜ。訓練は裏切らないっていうものな」
「初めて聞いたけど、その通りだと思うぞ。
明日からな」
「おう」




