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岩永善次郎、異世界と現代日本を行き来する  作者: 山口遊子


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第267話 学校3


 エヴァの新規事業は軌道に乗り、従業員宿舎の建設も始まった。



 こちらはイオナ。


 先般の商業ギルドでの展覧会や神殿の壁画で一躍有名になったイオナに自画像を描いてもらいたいという引き合いがかなりきている。直接うちにきた依頼は断っているのだが、メラー先生を通した引き合いは断れないので、イオナは先生と一緒に先方に出掛けていって、先方モデルを目に焼き付けてから先方の要望・・を聞いたうえ、うちに持ち帰って絵画部屋で2日ほどかけて描き上げ、絵具が落ち着いたところで先方に届けている。


 イオナは、先方モデルの要望通り、若作り、局部整形、スリム化、全体修正などお手の物でモデルを描くので、それがまた人気を呼んでいるらしい。最初のうち謝礼はだいたい金貨20枚くらいだったが、今では金貨50枚ほどに高騰している。才能が花開いたということだ。イオナはすでに金貨千枚近い資産家だ。



 イオナ本人は、そういった頼まれ仕事の他、自分の好きな絵も描いている。大抵は風景画だ。それがまた見事なもので、写真と見まごうものから、細部にとらわれることなく大胆な筆使いのものまで多岐にわたっている。日本の展覧会に出してやりたいのだが、何かいい手はないだろうか?

 


「華ちゃん、イオナの絵をどこか日本のコンクールに出したいんだが」


「それなら〇展じゃないでしょうか。日本で最も権威があると聞いたことがあります」


「そんなのに出すのか? 大丈夫かな」


「日本最高峰の美術コンクールですけど、お金さえ払えば誰でも参加できるようですよ。大賞は審査員次第ですから無理かもしれませんが、イオナならそこそこの成績は残せるんじゃないでしょうか?」


「参加して悪い物じゃないしな。まだ若いんだし、ダメで元々だしな」


「あれはたしか応募は秋だったような」


「ならまだまだ先だな」


「でも、今から大作を準備するにはちょうどいいかもしれませんよ」


「なるほど。それもそうだな。

 今度向こうに跳んだら、スマホで〇展の傾向と対策を調べて、今までの大賞作の資料があれば資料を揃えてそれからイオナに話して見よう」


 俺と華ちゃんがイオナの絵画コンクールの話を居間でしていたら、近くで話を聞いていたアキナちゃんが、またニヨニヨ笑いを始めて、


「イオナの絵は見事なのじゃ。どこぞのコンクールに出そうと一番になることは必定なのじゃ」


 神さまのご託宣なのだが、そんなに簡単に日本の最高画壇で一等賞は取れないんじゃないか。


「後は、オリヴィアのコンクールだな。これも早めに応募したいところだ。

 ピアノのコンクールで日本一のコンクールって何だろう?」


「日本音楽コンクールのピアノ部門かな。確かコンクールは夏で、応募資格は15歳以上だったから、オリヴィアはもう15歳なので大丈夫です」


 こんどもアキナちゃんが、またニヨニヨ笑いを始めて、


「オリヴィアのピアノはすごいのじゃ。どこぞのコンクールに出ても一番になることは必定なのじゃ」


 こっちにも神さまのご託宣があった。


 なんだか、あの二人がいい線いきそうな気がしてきた。





 それから10日ほどして、学校の引き渡しがあった。その間俺は確定申告をしている。スマホを使い税務署のサイトで申告書を作って提出した。マイナンバーカードを作っていた関係ですんなり申告できた。税額は今の俺にとっては微々たるものだった。今年からはもう金は売らないので来年以降こんな面倒なことはしないで済む。



 俺とはるかさんと華ちゃんの3人でマーロンさんに案内され学校の中を見て回った。でき上った学校は、新品ではあるが、田舎の廃校の趣があった。俺から見て、たとえそうでも、ここで学ぶ子どもたちにはピカピカの母校になるはずだ。


「マーロンさんありがとうございます。

 代金はどういう形でお支払いしますか?」


「今日は馬車できていますので、差し支えなければここでいただいてまいります」


 ということだったので、その場で大袋に金貨550枚を入れてマーロンさんに渡した。かなり重たいが20キロはない。マーロンさんはその大袋を御者に運ばせて馬車に乗り込み帰っていった。



 学校の開校は4月初旬を考えている。生徒については商業ギルドを通じて手配しており今年11歳になる子ども20名の入学は決まっている。


 俺は小学生用の子ども机と椅子を20人分教室に用意して、予備として5人分用具室に入れておいた。教員室には、大人用の机と椅子を4人分用意している。はるかさんがこちらの言葉に訳した教材も人数分+アルファ用意しているのでいつ開校しても問題ない。


 カリキュラムは、


 まず国語。国語といっても、日本語ではなく、ニューワールドの言葉になる。10歳から11歳までの子どもといっても、全く字の読めない子もいるかもしれないし、ちゃんと読み書きできる生徒もいるだろう。こちらの言葉は表音文字なので、全く読めない生徒にはアルファベットに相当するものから教えなくてはならないし、ある程度読み書きできる生徒にはそれなりの教材を与える必要がある。そういった生徒には当面、日本語の教材をニューワールドの言葉に直したものを使うそうだ。国語については、試行錯誤が必要だろう。


 今回入学予定の子どもたちは商業ギルドを通じて集めた関係で、それなりに裕福な家庭の子どもたちだろうから、まったく読み書きできない生徒は少ないだろう。


 あとは、算数。それにソロバンだ。はるかさん自身はソロバンはできなかったそうだが、自分で勉強して今ではある程度ソロバンが使えるようになったそうだ。もちろん、ソロバンを含めた教材は俺がコピーで準備している。俺がいないとマズいので、学校の用具室には予備を山と積んでいる。


 当面、教師についてははるかさん一人となる。校長兼担任の先生だ。俺は理事長ということになっている。今後学校には継続的に支援していかなくてなならないからな。


 9時始業。授業は、

 1時限 9:00~9:50

 2時限10:00~10:50

 3時限11:00~11:50 の1日3時限。週6日となる。


 学校の行事については決めていないそうだが、そのうち遠足などをしたいという話だった。


 教材については、各自の机に置いたままで、自宅には持ち帰らないことにするそうだ。これなら忘れ物はないはずだ。なので、生徒が持参するものは、ハンカチだかタオルといったものだけだ。


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