第266話 宿舎
屋敷に戻った俺たちは、今度は華ちゃんを連れて、エヴァの買った土地に跳んだ。早いうちに整地してしまおうと思ったからだ。
「華ちゃん、ここにエヴァの言っていた従業員宿舎を建てることにしたんだ。この土地はエヴァが買ったんだよ」
「エヴァちゃん、スゴイ。
わたしも張り切っちゃおう」
「華ちゃん、そこの杭と、あそこと、あそこと、あそこの杭に囲まれたところがエヴァの土地だから」
「わかりました。
ウィンドカッター!」
四隅に立った杭の位置を確認した華ちゃんがウインドカッターで枯れた雑草を薙ぎ払った。いつも通り切れがいい。
その後、俺が切り払われた枯れ草を収納して、エヴァの土地はかなり綺麗になった。
「それじゃあ、華ちゃん。工事用に重力魔法で地面を転圧だ」
「はい。グラヴィティー!」
地面が柔らかかったのか20センチほど地面が沈んでしまったので、窪んだ分、俺がアイテムボックスにしまっていた砂をかけておいた。
その後、華ちゃんがもう一度重力魔法をかけて転圧し、少し沈んだところに再度砂をかけておいた。
「これで、いつからでも工事に入れる」
「お父さん、ハナおねえさん、ありがとう」
「おう」「いいのよ」
「マーロン建築のマーロンさんのところにいって建屋の建築を頼もう。学校の工事の様子を見にたまに隣にやってきているから、今日もきているかもしれない。いればいいんだけどなー」
「はい」
そういうことで、屋敷に戻り、隣の建築現場にマーロンさんがやってきていないかと覗いたら、ちょうど現場ではるかさんと立ち話をしていた。俺は表から隣に回ってマーロンさんに、新しく頼みたい仕事の話があるので、ここが片付いたら屋敷にきてもらうように頼んできた。
10分ほどでマーロンさんがやってきたので、応接室に通し、建屋を建ててもらう土地の位置を説明した後、エヴァが宿舎の建設について話をした。
「バレンダンジョンの近くに立っている冒険者用の宿舎をもう少し立派にした感じのものを考えています」
「なるほど。あの建物はわたくしどもで建てていませんし中を拝見したこともありませんが、外観からある程度は想像できます。
まずは規模から伺いましょう」
「4人部屋が10部屋。食堂と厨房、トイレとシャワー、あと物置として2部屋くらいです」
食堂と厨房ということは、エヴァは賄を雇うつもりか。やるな。
「エヴァ、それだと40人で一杯になっちゃうけど大丈夫なのか?」
「大丈夫ですよ。簡単な構造ですから、後からいくらでも増築できます」と、マーロンさんが答えてくれた。
「土地は十分ですから平屋でも問題ありませんが、のちのち別棟を建てることがあるなら、総2階のほうがいいと思いますが、どうします?」
「総2階でお願いします」
「了解です。だいたいの見当は付きましたので、明日の午後一で図をもってお伺いします」
そう言ってマーロンさんは帰っていった。
後ではるかさんに聞いたのだが、学校の方は仕上げ段階に入っているそうで、再来週には引き渡されるそうだ。これなら工事も待たされることなく工事に入れそうだ。
翌日。昼食を済ませてマーロンさんを待っていたら、午後1時にやってきた。
マーロンさんをエヴァと迎えて応接室に通し、簡単なあいさつをしたら、すぐにマーロンさんは応接室のテーブルに図面を広げて説明を始めた。
「まず、4人部屋の大きさは南北方向に6メートル×東西方向に4メートル。6人でも問題ない広さですが、宿舎ということで、個人の荷物を置くことを考えてこの広さにしました。
廊下と階段の幅は2メートル。としています。
1階部分には、4人部屋2部屋分の食堂と1部屋分の厨房、それに4人部屋4つ、トイレとシャワーと洗面で廊下を含んで4人部屋1部屋分。それに階段となります。この階段は学校と同じ踊り場で一度折り返す2メートル幅の階段です。
2階部分には、4人部屋6部屋と物置2部屋、それに階段です。
これで建屋の大きさは、東西36メートル、南北8メートルの総2階。延べ床面積は576平方メートル。床から天井までは2メートル50センチです。
次に内外装ですが、これもほとんど今隣で建てている学校と同じで、屋根と外壁は板張りとします。もちろん防腐加工されていますから、最低でも20年は大丈夫です。
内側の壁は泥壁に漆喰塗りです。床、天井は板張りです。
昨日現場を確認してきました。学校の時と同じようによく突き固めてあったので、すぐにでも着工できます」
やっぱり、前回同様見積まで用意されていた。俺もエヴァも中身を見てもよく分からないのだが、合計金額と工期だけ確認しておいた。
合計金額は金貨520枚、こちらの工期も学校と同じ2カ月半だった。
「お父さん、代金はこんなもので大丈夫かな?」
「学校の時は650平米で金貨550枚だったはずなので、壁が多くなった今回の576平米で金貨520枚は妥当だろう」
「なら、いいですね。
マーロンさん、それでお願いします」
「工事は明日から入れますが、よろしいですか?」
「はい」
マーロンさんは図面を置いて帰っていった。
今回の仕事は商業ギルド経由のものではないので、支払いは前金だそうで、翌日受け取りに人を寄こすということだった。
翌日、マーロン建築から人がやって来たので俺の方で領収書と引き換えに金貨520を支払っておいた。この金はエヴァの俺に対する借金になるが、イワナガ運送の実績を見ていると2カ月で返済されそうだ。
エヴァは、宿舎が完成して賄を置いたら孤児奴隷を4人買いたいと俺に言ってきた。作業場で2人一組4グループで仕事をしているのだが、お金の出し入れが結構大変なのだそうだ。孤児奴隷でお金の勘定ができない者はいないので、各クループに1名孤児奴隷を付けてサポートさせ、金銭の受け渡しと記帳させたいとのことだった。
エヴァは、お金を儲けて孤児奴隷たちをどんどん引き受けていきたいと言っていたが、有言実行。実に大したものだ。




