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岩永善次郎、異世界と現代日本を行き来する  作者: 山口遊子


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第253話 アキナ神とその使徒たち


 俺はとうとう子どもたちのお父さんになってしまった。正式にはまだだがな。



 それから数日して、イオナが制作していた神殿の壁画が完成した。モデルである俺たち一心同体はイオナを連れて、完成した壁画を神殿に見にいった。


 壁画は戦隊ものをモチーフにしたはずだったが、そういった感じではなく、何か厳かなものを感じてしまった。俺たちが壁画の前で見とれていたら、神殿の神官がやってきて、


「壁画の制作費でございます。些少でございますがお納めください」と言って、ずっしり重たい布袋を置いていった。


 袋の中には金貨が200枚入っていた。もちろんこれはイオナのお金なので、


「イオナおめでとう。自分の力で稼いだ金だ」


 そう言って、イオナに渡したら、


「いえ、これもわたしに絵を描かせてくれたお父さんのおかげです。

 だから、お父さんがそのお金を使ってください」


 そう言われてしまった。すごくうれしく思ったが、けじめは大切だ。


「イオナ、ありがとう。

 でもな、これはお前がちゃんと稼いだ金だ。お父さんはイオナがちゃんと稼げるようになったことで十分だから、この金は自分のために使ってくれ」


「お父さん。ありがとう」


「ああ。これからもがんばれよ」


「はい」




 そんなことがあって、今日はその壁画のお披露目の日だ。神殿外からも人が集まってくるそうだ。現在イオナの描いた壁画の前には白い布がかけられている。壁画の題名は『一心同体、アキナ神とその使徒たち』


 俺たちがいつアキナちゃんの使徒になったのかは知らないが、別に減るもんじゃないし、アキナちゃんのご利益のためには信者でも使徒でも増えた方がいいから、壁画の名まえを大神官から打診された時『それでいいんじゃないか』と、言っただけで、文句は何も言っていない。


 神殿の大ホールにはこの日のために長椅子が並べられており、俺たちは壁画の前の最前列、いわゆる貴賓席に着いている。ほかに招待されているのはバレンの街の市長を始めバレンの名士たちということだった。


 時間になったところで、大神官が現れてあいさつをした。あいさつと言っても、絵の紹介と、画家の紹介、それにアキナ神をたたえた祝詞のりとのようなものだけだった。


 画家の紹介で、イオナが前に出て一礼した時には、集まった人たちから驚きの声が上がった。メラー先生も来賓として招かれていたので、イオナが一礼した時いち早く拍手してくれた。当然俺たちも拍手したが、集まった人たちも拍手してくれ、神殿の大ホールに拍手の音が響き渡った。


 大神官のあいさつのあと、来賓のあいさつが続くのかと思ったが、来賓のあいさつはなかった。このあたりは、日本でのこういった行事とは異なるところかも知れない。


 そのまま、お披露目は終わってしまい、集まった人たちは三々五々帰っていった。


「肝心のアキナちゃんのあいさつがなかったが、よかったのかい?」


「わらわは、神秘の女神なのじゃ。

 そう簡単に人前には現れないのじゃ。

 というのは、冗談じゃが、わらわが二十歳を迎えるまでは、公式には人前にでれんのじゃ」


「どういった意味合いがあるのかはわからないが、そういう決まりが神殿にあるなら仕方ないな」


「そうなのじゃ。イオナの絵のお披露目の時、わらわにもあいさつしてくれと爺が先日言うてきたので、わらわがその時作った決まりなのじゃ」


 女神さまがそう決めたのなら大神官も従わなければならないのだろうが、それでいいのだろうか?


 この神殿の経営は、信者からの寄進というより各地にある荘園から上がる利益で賄われているそうなので、へたな宗教勧誘で信者を増やす必要がないのだろう。


「みんな帰ったようだから、俺たちも帰るか?」


 なんだか、締まりのない終わり方だったが、俺たちも屋敷に帰ることにした。


 そこで、はるかさんが、大型の手提げ袋に入れていた三脚付きの立派なカメラを取り出して、


「帰る前に、この壁画の写真を撮っておきましょう」


 そう言って、壁画の正面にカメラを据え付けて、レンズの辺りを調整しながらフラッシュを焚いて何枚か写真を撮ってくれた。


「お待たせしました。一度プリンターで印刷して、いいのを選んでポスターにしましょう」


「それはいいですね。

 こんど日本にいった時、ポスターサイズで印刷を頼もう。

 それじゃあ、帰ろうか」


「「はい」」



 屋敷に帰って、みんなしてコタツに入ったところで、保留中だった二十歳はたちのアキナちゃんの肖像画の話になった。俺たちの肖像画は色鉛筆画だったが、せっかくなので油絵にしようということになった。


「アキナちゃんの肖像画が完成したら、まだ神殿の壁には白いところが沢山あるから、今度はうちの全員で長テーブルについて食事しているところをイオナが描いてくれればいいんだがな。

 題名は『いつもの晩餐』だ。食べている料理は『お好み焼』と『たこ焼き』だな。かなり受けると思うがどうだろう?」


「岩永さん、題名の『いつもの晩餐』はいいとして、食べている料理が『お好み焼』と『たこ焼き』じゃ、神殿の壁画にしては軽くないですか?」


 そもそも冗談だったのだが、そう華ちゃんに突っ込まれた。


「神殿じゃ、アキナちゃん以外『お好み焼』も『たこ焼き』も知らないんだから、神秘の食べ物という扱いになってかえって受けるんじゃないか?」と、俺が屁理屈をこねてみた。


「楽園の果物ではどうでしょう」と、今度ははるかさんが建設的な意見を出してくれた。確かに楽園の果物は神々しいかもしれない。


「それは確かにいいと思いますが、『お好み焼』も『たこ焼き』も捨てがたいなー」などと、俺が言ったら、今度は俺の意図を察したのか、アキナちゃんから、


「いっそのこと、『とんかつ』はどうじゃ? とんかつもおいしかったのじゃ」


 建設的なのか破壊的なのか分からない意見が飛び出した。こうなると、他の子どもたちも意見があるようで、


「ソバがいいなー」「そうめんもおいしかったよ」「やっぱりよく食べるハンバーガーじゃないかな?」「いやー、やっぱりアワビの踊り食いじゃない?」


 それからもいろいろ意見が出たが、最終的にはアワビの踊り食いが優勝してしまった。


「わかった。わらわが許す。わらわは話に聞いているだけでまだ食したことがないゆえ、イオナはそのうち神殿の空いた壁に、みんなで並んでアワビの踊り食いを食べているところを描くのじゃ」


「うん、分かった」


 ということになってしまった。これで、いいんだろうか?


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