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岩永善次郎、異世界と現代日本を行き来する  作者: 山口遊子


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第252話 お父さん


 浅草のとんかつ屋で腹いっぱいになった俺たちは、ヒールポーションで体調を整えた。時間は午後2時近かったので、


「屋敷に帰るか」


「「はい」」



 そういうことで、屋敷に戻った俺たちは余所よそ行きから普段着に着替えた。


 脱いだ服はアイテムボックスに突っ込むだけでいいし、着替えの服の好きな服をアイテムボックスから出すだけなので俺の着替えが一番早い。居間に下りるのも一番だ。


 コタツに電気を入れて座っていたらそのうちみんな着替え終わって集まってきた。


 みんなの顔を見たら、今日はみんなを日本に帰化させるために日本に飛んだことを思い出した。少し早いかもしれないが、リサ以下6人に向かって、


「みんな俺の養子になるわけだ。みんな女だから、養女だな。

 逆に言えば俺はみんなのお父さんだ。本当はもうちょっと先になるが、今から練習しておいた方がいいからな。

 まずリサの名まえは岩永リサだ。こっち風にいうと、リサ・イワナガだ。

 これから俺のことをお父さんと呼んでもいいが、さすがにお父さんはないから、華ちゃんと同じように、岩永さんと呼んでくれてもいいし善次郎さんでもいい」


「はい。ありがとうございます」


「そして、エヴァ、オリヴィア、キリア、イオナはそれぞれ、岩永エヴァ、岩永オリヴィア、岩永キリア、岩永イオナだ。

 お前たちは俺のことをお父さんと呼べばいいからな」


「「はい! お父さん」」


「それで、アキナちゃんは、岩永アキナだ。一番日本人らしい名まえだ。

 アキナちゃんは俺のことを今まで通りゼンちゃんでいいからな」


「うん」


「そういうことだから、リサ以下5人は今をもって奴隷から解放だ。

 奴隷から解放したと言ってもこれまで通り家のことはやってもらうがな」


「「はい」」


「おそらく奴隷商館にいって手続きすれば正式に奴隷から解放されるだろうから、こっちの方は善は急げで今からいってくる」


 そう言ってコタツから立とうとした俺に向かってリサが、


「ゼンジロウさん」と、少し顔を赤らめて俺を呼び止めた。


「雇い主は奴隷を名目上解放することはできません。従って、解放するための特別な手続もありません。

 子どもたちは成人すればその時点で自由になりますし、わたしのような借金奴隷も拘束期限がくれば自由になります。

 そういうことですので、奴隷主が奴隷に向かって解放するとひとこと言って、そういった接し方をするだけで十分です」


「なるほど。よくわかった。ありがとう」


「どういたしまして」


「ゼンちゃんほどの善人はおらんかも知れんな」。アキナちゃんに言われたが、アキナちゃんは石にされて眠っていた時間を差っ引けばまだ12歳だ。やけに世の中のことを知ったふうに話すものだ。


「今日はみんなの奴隷解放を祝ってどこかで食事してもよかったが、昼が重すぎたから、日本人になる手続きが完了したらその時にしよう」


「「はい」」


「今日はみんな疲れて夕食の準備は大変だろうから、簡単にお好み焼でいくか」


「「お好み焼?」」


「まだみんなに出していなかったか。

 食べればわかるが、この前のたこ焼きは丸くてタコが入ってソースがかかっていたが、お好み焼は平べったくて、キャベツともやしと、もやしはわからないか。

 やっぱり、食べてみれば分かる」


 焼きソバの麺も説明できないし、説明は諦めた。



 子どもたちは特に疲れていたようで、コタツの中に足を伸ばして横になってしまった。このままだとポーションがあると言っても風邪をひき、ポーションを飲むまで辛いだろうと思い、居間のエアコンを点けてやった。


 部屋の中が少し暖かくなってコタツから出た華ちゃんは、ピョンちゃんの頭を一なでしてグランドピアノに着いてピアノを弾き始めた。オリヴィアがピアノコンクールでいい成績を取れるのなら、先生の華ちゃんはもっといい成績がとれるのではと思ったがどうなんだろう。


 そんなことを考えていたら、華ちゃんの演奏するピアノの調べの中で俺も眠くなってきたので横になって目を瞑ってしまった。


 1時間ほど眠っていたようだ。


 いい時間になっていたので、風呂の準備をして、先に入り、順次子どもたちが風呂に入った。


 夕食は少し遅めにしようということで、華ちゃん以下3人も子どもたちに続いて風呂に入った。


 華ちゃんたちが風呂に入っているあいだ俺は気を利かせて、食堂のエアコンを点けて部屋の中を暖かくしておいた。


 みんなが揃ったところで、食堂から平たい皿と各自の箸を持ってきてもらい、透明のプラスチックのパックに入ったお好み焼をパックから出して皿の上に乗っけてやった。小袋に入ったお好みソースと青のりと削り節とマヨネーズが付属していたので、それもみんなに配り、


「「いただきます」」


 お好み焼本体はもちろん各種小袋もコピー済みなので、


「ソースとか、足りないようならいくらでもあるから言ってくれ」


 最初に小袋の青のりを振りかけ、マヨネーズの小袋の角をちょん切って、そこからマヨネーズちゅるちゅるお好み焼の上に垂らしていく。最後に削り節をひらひら振りまいてでき上がり。


 俺を注目していた子どもたちも俺のマネをして小袋の中のものをお好み焼の上に振りかけていく。


 削り節がお好み焼の温かい湿気に触れてくねくね踊るのを見て子どもたちが、


「なんだー」「踊り始めたよー」「かわいー」「何じゃ? 生きておるのか?」


 歓声を上げ始めた。



 子どもたちを見ているだけでも楽しいが、そろそろ俺も食べるとしよう。

 

 お好み焼きは熱々だし切ってはいないので箸だけでは少し食べにくい。お好み焼き用のステンのヘラがあればちょん切るにしてもすくって食べるにしても便利なので、錬金工房でそれらしいものを2つ作ってみた。


 その2本を使って、皿の上のお好み焼を一口大にちょん切って、それを箸で摘まんで食べたらよほど食べやすかった。


「ゼンちゃん、わらわにもその道具を貸してくれ」


 アキナちゃんにヘラを新しく作って渡し、みんなにもヘラを渡してやった。みんな真剣な顔をしてヘラを使ってお好み焼を一口大に切っていく。


 最近、食事中の会話が少なくなったような。



 みんなの口の周りがソースで汚れて面白いことになってきたので、ティッシュでもよかったが紙のナプキンをみんなに配っておいた。紙ナプキンはフライドチキンについていた紙ナプキンをコピーしたものだ。



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