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岩永善次郎、異世界と現代日本を行き来する  作者: 山口遊子


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第250話 スカイツリー


 なかなかいい知恵も浮かばないので、いったん屋敷に戻って華ちゃん、はるかさんの知恵を拝借することにした。


 華ちゃんは、居間の中でピョンちゃんと戯れていたが、はるかさんは隣で工事監督をしているそうなので、エヴァに呼んできてもらった。


 はるかさんが帰ってくるのを待つ間に、華ちゃんの意見を聞いたところ、


「スカイツリーはどうでしょう?」


「俺もまだいったことがないから、いいんじゃないか。よしそれにしよう」


 ということで、はるかさんの意見は聞かなかったが、スカイツリーにみんなでお登りすることにした。


 エヴァに呼ばれて帰ってきたはるかさんに、みんなでスカイツリーにいこうということになったと伝えたら、


「わたしもまだいったことがなくて。楽しみです」。とのことだった。意外とアレに登った人は少ないのかもしれない。



 余所行よそいきに着替えた二人を伴って再び日本へ。場所は東京駅の八重洲側。そこからタクシーでスカイツリーまでいくことにした。9人いるのでタクシー3台に3人ずつ。各タクシーに俺、はるかさん、華ちゃんがそれぞれ2名ニューワールド組を連れて乗り込むことになる。


 俺と一緒のタクシーに乗ったのは、イオナとアキナちゃん。華ちゃんはオリヴィアとキリア、はるかさんがリサとエヴァという組み合わせだ。運賃は華ちゃんとはるかさんに先に1万円ずつ渡しておいた。


 タクシー乗り場で並んでいたらすぐにタクシーがやってきたので、俺が1号車、2号車に華ちゃん、3号車にはるかさんで、3台揃って浅草方面に向かうことができた。


 1号車の俺たち3人は、3人揃って後部座席で、俺が一番奥、隣がアキナちゃん、出口がイオナの順に座っている。


 


 タクシーの運転手さんに行き先を告げ、ドアが勝手に閉まったことに驚く二人のシートベルトを見てやり、俺もシートベルトをしっかり締めた。


 走り出したタクシーの中から、イオナとアキナちゃんがキョロキョロと外を眺めるわけだが、アキナちゃんの位置が真ん中なので、俺の方に身を乗り出したり、イオナの方に身を乗り出したりして大変だった。


「大きな建物じゃなー」


「どの建物が何の建物かは分からないが、こういった建物の中でいろんな人がいろんな仕事をしてるんだ」


「わらわには想像もつかんな」


「正直な話、俺にも想像できないんだがな」


「ご主人さま、今日写真?を撮った場所はどのあたりになるんですか?」


「左方向なんだろうけど、こっからだともちろん見えないし、方向もはっきり分からないな。

 今からいくスカイツリーという大きな塔に登ればそこからこの東京のほとんどが見えると思う。そこで探してやるよ」


「凄いです。楽しみです」


「わらわも、楽しみじゃ」



 俺たちの乗るタクシーが信号待ちの車でつかえて停まったところを隣の車線から華ちゃんたちの乗ったタクシーが追い抜いていった。


「あっ! 今わらわたちの乗るこの車を華ちゃんの乗った車が追い越していったぞ!」


 今度ははるかさんたちの乗った車が追い越していった。


「ややや! 今度ははるかちゃんの乗る車に追い越された!」


 前の車が動きだしたときには、華ちゃんたちが乗るタクシーもはるかさんたちが乗るタクシーも随分先にいってしまった。


「むむむむ!」


 信号の関係で、俺たちの車が先にいったりすると、


「いけー、いくのじゃ、やったのじゃー」


 タクシーに乗ってこれほど盛り上がれるのはある意味羨ましい。



 少し道が混んで信号にも引っかかったせいで30分ほどかかってスカイツリーの前にタクシーは到着した。2人を先に下ろして代金を払い俺もタクシーから降りた。



 タクシーから降りたところで、華ちゃんたち、はるかさんたちと合流した。


「ここに登るのか?」


「上が見えない」


 子どもたちはみんな上を向いて歩いている。


「今日の人出はどうでしょう? スカイツリーは混みあって大変だとか聞いたことがあるんですが」


「わたしも、混みあうのが嫌だから、今までここに来たことなかったんです」


「さあ、どうだろうな。まだ平日の午前中だからそこまで人は多くないんじゃないか?」


 タクシーの運転手に聞いた通りいったん建物の中に入りエスカレーターに乗って4階に上がったら、派手なエントランスが見えてきた。


 俺たちは、そこから建物の中に入っていった。


 エントランスの先は、壁にパノラマ風の東京の絵が描かれたりしたホールになっていたが、そこはスルーして、


「エレベーターはどこかな? そこのエレベーターじゃなさそうだけど」


「足元に矢印が描いてあるから、それに沿って歩いていけばいいんじゃないですか?」


「そうみたいだな」


 矢印に沿って歩いていったらすぐにチケット売り場だった。


 券売機はいくつも並んでいたが窓口も空いていたので窓口で大人4人と中高生5人分、上の方までいけるチケットを買っておいた。


「アキナちゃん、何が嬉しいんだ?」


 なぜか、アキナちゃんがニヨニヨ笑いをしていた。アキナちゃんは美少女なのでニヨニヨ笑いも可愛いのだが、たまに何の脈絡もなくニヨニヨ笑いをするんだよな。


「ここは人が多そうじゃろ? あまり人が多くて混みあってほしくはないのじゃ」


 それはそうだが、ニヨニヨ笑いとどう関係するのかよくわからない答えだった。


 チケット売り場から展望台にいくエレベーターのゲートに移動していきチケットをかざして先に進んだ。


 そこから先も運よく混んでいなかったのですぐにエレベーターに乗ることができた。


 エレベーターの中には俺たちの他、20人ほどの客が乗っていた。壁に速度と現在高度が表示されているのだがエライ勢いでエレベーターが上昇していく。耳の奥が気圧の関係か変な感じがしたがそのうち治まった。


 アキナちゃん以下の子どもたちは半分口を開けて声を出さずエレベーターの中をキョロキョロ眺めているだけだった。そのおかげか耳の方は大丈夫だったようだ。


 エレベーターが停止して扉が開き、人の流れに沿ってエレベーターから明るい展望台に向かって歩いていく。


 最初行儀よく歩いていた子どもたちだが、展望窓の向こうに広がる景色が目に入ったとたんに駆け出した。


 リサも含めて6人はそのまま展望窓に張り付いてしまった。その後ろから華ちゃんとはるかさんが景色を眺めて、アレは何々、そこは何々と教えてやっていた。


 みんなで少しずつ移動しながら、眺めていたら、市ヶ谷の防衛省のビルを見つけることができた。


「そら、あそこ、分かるかな? あそこに並んだビルのどれかに今日俺たちはいったんだ」


「どれどれ、どこどこ?」


 俺の口ではうまく説明できなかったところを、華ちゃんが子どもたちに詳しく教えてやった。


「へー、あんなところにいたんだ」


 そうやって少しずつ展望台の中を移動していたら富士山が見えてきた。


「あれが、この国で一番高い山だ」


「「富士山!」」


 子どもたちはみんな知っていた。華ちゃんの国語の授業で習ったんだろうな。


 一周したところで、俺たちはチケットを機械にかざしてもう一ランク上の展望台に上がった。


 こっちの方が狭かったが人の数は少なかったので、ゆっくり歩きながら斜面を登って一番上のフロアーまで自由に見て回ることができた。



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