第246話 這いよるフィギュア美少女
昼食を終え、みんなでデザートを食べたところで、俺は一人でゴーレムメーカーの部屋に跳ぶことにした。本当は華ちゃんを連れて部屋の中に異常がないことを確認した方がいいのだろうが、そんなに日にちも経っていないので大丈夫だろう。そう思って、
「俺だけで、フィギュアの確認をしてくるから」と、華ちゃんたち一心同体のメンバーに告げたら、
「何が起こるか分かりませんから一緒にいきましょう」
「その通りじゃ」
「ご主人さま、みんなでいった方がいいと思います」
そう言われては仕方ないので、昼食の片付けが終わったらフル装備に着替えて、みんなで南のダンジョンに跳ぶことにした。
ゴーレムメーカーの部屋に現れたところで、華ちゃんが手順通り一連の魔法を唱えて、異常がないことを確認した。俺が手を抜こうとしたところもいさめてくれるし、決して手を抜くことがない。わが一心同体は素晴らしいパーティーだ。
それでは本番だ。
まず、白いプラグスーツフィギュアをアイテムボックスからいったん俺の手の中に取り出した。
美少女フィギュアを初めて見たアキナちゃんが、
「ほー、可愛らしい人形じゃ。わらわも欲しくなった」
「屋敷に帰ったらアキナちゃんにゴーレムにする前の人形をあげるよ」
「うれしや」
手にしたフィギュアを今度は魔法陣の真ん中に転送して置いた。美少女フィギュアは台座から外してしまっているので、寝っ転がったまま天井を見て無意味にポーズしている。
「それじゃあ、ゴーレム化、いきます。
エレモア!」
俺のキーワード『エレモア』の声と一緒に、魔法陣とプラグスーツの美少女フィギュアが赤く輝き始めた。
赤い光はすぐに収まり、魔法陣の真ん中には何かが立っていた。
「岩永さん、ゴーレムできたみたいですが、美少女フィギュアには見えないような」
華ちゃんの指摘通り、魔法陣の真ん中に突っ立っているのは、高さが20センチほどの全体的に白茶けたビニール製のゴーレムだった。形状はゴーレム1型、2型、3型と同じゴーレム、ゴーレムしたゴーレムだ。見た目が柔らかそうなだけに、ちょっとキモい。
「うーん。どうもゴーレムメーカーはこの形のゴーレムしか作れないようだな。
元の形を残すためにはフィギュアメーカーじゃないとだめらしい。
しかし、フィギュアメーカーは命の抜けた亡骸かゴーレムじゃないと使えないしなー」
世の中、自分の思い通りにいかないことは多々ある。それにどう対処するのか、それとどう向き合っていくのかが大切なのだ。
ビニールゴーレムをアイテムボックスに収納した俺は、
「防衛省でフィギュア美少女に期待してくれと言った手前、何とかフィギュア美少女を作りたいのだがどうすればいいか。うーん」
「岩永さん、いいことを思いつきました」
「なんだい?」
「美少女フィギュアの形をしたモンスターの死骸があればいいわけですよね」
「まあ、そうだが、美少女フィギュアの形をしたモンスターなんてどこにもいないぞ」
「そうなんですが、買ってきたフィギュアの型を取ってその型の中にスライムとか、不定形のモンスターの死骸を詰め込んでしまえばどうでしょう?」
「そいつはナイスアイディアだ。粘土で型はいくらでも取れるし、一度作ってしまえば型の大きさは自由に調整できるからな。型の中にスライムの死骸をアイテムボックスから排出して、スライムが溶けだす前にフィギュア化してしまえばうまくいきそうだ」
俺は華ちゃんのアドバイスに従って、まずは粘土を作ることにした。粘土は土の粒子を細かくして少し水分を足してやるだけだったので、それらしいものが簡単にでき上った。
プラグスーツ美少女フィギュアを取り出してその周りに硬めの粘土をべたべた張り付け、空気が残らないようにしっかり押し付けた後、中身のフィギュアだけアイテムボックスに収納して型を作った。
型ができたところで、フィギュアメーカーの部屋にみんなで跳んだ。ここでも手順通り華ちゃんの魔法で異常がないことを確認している。
次に俺は、アイテムボックスから粘土型をフィギュアメーカーの魔法陣の真ん中に置いた。粘土型は一度錬金工房の中で高温処理したのでレンガのように硬くなっている。型の頭の部分には、死骸の容量が定量オーバーするようならオーバーフローできるように小孔を空けているので少々中に突っ込む死骸の容量が多くても型が壊れることはないはずだ。
「準備完了。型の中にアイテムボックスからスライムの死骸を排出しまーす。
排出」
ゆっくり排出できれば一番いいのだが、そんな芸当はできないので、一瞬でスライムの死骸が型の中に入った。しかし、スライムの容量が定量を大きく上回っていたようで丈夫なはずの型だったが内側から割れて壊れてしまった。ドンマイ。
一度スライムの死骸と型の残骸はアイテムボックスに仕舞って、さっきの型より少し大きな型を錬金ボックスの中で作り、再度魔法陣の真ん中に置いた。
「再挑戦、いきまーす。
排出!」
今度もうまくいかず型が中から割れてしまった。
それから2度同じ失敗を繰り返し、5度目の挑戦。型はだいぶ大きくなって最初と比べて容量は2倍くらいになっている。
「いきます。
排出!」
型は壊れることなく、スライムの死骸はすっぽり収まった。
「それじゃあ、フィギュアメーカー起動。
エレメア!」
魔法陣が青く輝いた。型の頭の部分に空けた小孔からも青い光が漏れてきたので中でスライムの死骸も光っているのだろう。
光が収まったところで、俺は型の中にできていたフィギュアを、アイテムボックスだか転移術の力で認識して、手元に転移させた。
俺の右手のひらの上に銀色のフィギュアが乗っている。大きさは2センチほど。かなり小さいが非常に精巧にできている。型の頭頂部に小穴を空けていた関係で、フィギュアの頭の上に1本アホ毛のようなものが付いていたのだが、これはこれで風情があっていいかもしれない。
「フッフッフッフ。でき上ったぞ!」
華ちゃんたちが俺の右手の平をのぞき込む。
「可愛らしくなりましたね」
「小さくなったのー」
「さすがはご主人さま」
「それじゃあ、こいつをもどしてみるか。魔法陣の上に投げ出したらマズそうだから、部屋の隅に向かって、
出でよ、ア〇カ・ラングレー!」
右手の上の小さなフィギュアを部屋の隅に放り投げたら、床に触れる前に青く光り、そこに背丈が30センチほどの銀色のフィギュアが立っていた。
「ア〇カ・ラングレー、こっちにこい」
メタルア〇カ・ラングレーに命令したところ、ア〇カ・ラングレーはその場でゴロリと倒れて這いながら俺のところに近づいてきた。そりゃそうだ。スライムが二足歩行なんて知るはずないしできるわけがない。しかも、アス〇・ラングレーは美少女フィギュアの形を保てず少しずつ溶けだしている。
3人が溶けながら這いよるア〇カ・ラングレーと俺を交互に見ながら、
「ゼンちゃん、ちょっとおかしく見えるのじゃが」
「岩永さん」
「ご主人さま」
「まっ、もどさずフィギュアのままならそれなりにニーズはあるんじゃないか?」
ということで、2体目の美少女フィギュアについては作業見送りとなった。




