第243話 メタルモンスター、ご利用は計画的に
俺たちは北のダンジョンの第4階層の枝道の奥で、メタルモンスター利用計画について昼食を取りながら話し合っていた。なんであれ、ダンジョンの外でメタルモンスターが動き回れるか検証が先だという結論で昼の休憩を終えた。
いつものように当てはなかったが枝道をさらに奥の方に向かって歩きながら、
「俺たちのダンジョンで宝物庫を見つけようと始めた今回の探索だけど、フィギュアメーカーとゴーレムメーカーを見つけることができた。大収穫だったな」
「さすがはご主人さまです」
「30分ほどこの道を進んで、それから屋敷に戻って実験しよう」
「「はい」」「楽しみじゃな」
途中、華ちゃんのデテクトライフに反応した大ナメクジとスライムを2匹ずつメタル大蜘蛛で斃したところで、俺たちは屋敷の玄関前に転移した。
「まずは、メタル大蜘蛛で検証だ。
出でよメタル大蜘蛛!」
フィギュア大蜘蛛を目の前の地面に向かって軽く投げたら、銀色のフィギュア大蜘蛛が地面に転がっただけでメタル大蜘蛛に変形しなかった。
「あれ? 変形しなかった。ダンジョンの中じゃないとだめだったか」
フィギュア大蜘蛛は収納して、
「メタルゴーレムでもいちおう試してみよう。
出でよ、メタルゴーレム!」
同じように地面に投げられたゴーレムのフィギュアは、フィギュア大蜘蛛と同じように地面に転がったままだった。
「残念じゃったの」
「ダンジョンの中で使えるだけでもよかったじゃないですか」
「ご主人さま」
いつもならさすがですと続くキリアも何も言えなかったようだ。
ドンマイ。
フィギュア化してない素のゴーレムも試した方がいいので、1つ2型のゴーレムを作ってみた。
「最後に素のゴーレムで試してみる」
今作った素のゴーレムを地面の上に置いてみたが、全く無反応だった。
「ダンジョンの外だと、全然だめみたいだな。
それじゃあ、今日はここまで。屋敷に入って着替えよう」
「「はい」」
俺は、鎧を脱いだ後、着替えるくらいならと思い、風呂を準備してそのまま風呂に入ってしまった。
屋敷では、毎日ちゃんと子どもたちが風呂掃除してくれているので、湯舟にお湯を入れるだけで風呂に入れる。日本にいたころは当たり前だが風呂に入る前に湯舟を洗い、それから湯舟に時間をかけて湯を張っていたので結構面倒だった。その結果、冬場などは2日に一度とか、3日に一度しか風呂に入らなかったが、今は風呂を欠かしたことがない。
非常に健康的な生活だ。さらに言えば、年に1度、ちょっといいポーションを飲んでおけば自覚のない体の悪いところも治っているわけだから、健康そのものだ。ヒールポーション(極)あらためエリクシールが老化、特にボケに効くかどうかは不明だが、ボケに何か原因があるようなら修正されてボケも改善される可能性が大いにある。寿命一杯健康でいられるなら万々歳だ。
体を軽く流して湯舟に入り、メタルシリーズの利用法をぼんやり考えた。
『フィギュアもゴーレムもダンジョンの外で使えなかったことは残念だが、逆に使えていたらそれこそとんでもないことになってたな。俺がその気になれば、千個くらいコピーするのは簡単だものな。実際のところ素材として何を消費したのか不明だからそのうち素材不足でコピー効率が落ちるのだろうが、それでも1万個はコピーできそうだ。1万のメタルゴーレムが押し寄せたら、この世界のふつうの国の軍隊じゃ太刀打ちできないんじゃないか?
妄想はそれくらいにして、メタル大蜘蛛とかメタルゴーレムをダンジョンの中でどう使っていくかが問題だな。
勝手にダンジョンの中を徘徊させて、ダンジョンの探索に使っても良さそうだが、モンスターを斃しても死骸を拾ってきてくれそうにもないし、宝箱が見つかっても叩き潰してしまうのが落ちだな。
ダンジョンの外での警備員は無理だったが、ダンジョン内だったら警備員が務まるか。
あとは、自転車をこがせてダイナモで発電もできる。1000台自転車を並べて24時間365日自転車をこがせたら、かなりの発電量があるんじゃないか? あれって確か2ワットか3ワットだったから1000台並べても2、3キロワットか。意外と少ない。手間を考えると無意味だな。
防衛省に来週いったら、商品サンプルでフィギュアを置いてきてやろう』
湯舟の中で思案した結果、防衛省に売ってしまうのが良さそうな気がしてきた。メタル大蜘蛛は冒険者のお供に最適だ。今さら金が少々増えても仕方ないのだが、無償提供はそれなりに問題があるので、メタル大蜘蛛は、100万程度で売ってやろう。
そこらの冒険者などよりよほど強力なメタル大蜘蛛がヒールポーション1本分と考えるとかなりお値打ちだが俺からしたら作る手間は変わらないのでそんなところでいいか。
メタルゴーレムの場合利用法は限られるが背中にリュックを背負わせればかなりのものを運ぶことができそうだ。運搬係にも使えるし、モンスター戦にも使える。となると200万くらいでも売れそうだな。
だいたいの目安をつけたところで、湯舟から出た俺は体と頭をきれいに洗い、再度湯舟に入って1から100まで数えて上がり、湯舟の湯を張り替えて風呂から上がった。
着替え終わった俺は「おーい、手が空いたら風呂に入れよー」と、子どもたちに声をかけて居間に回った。
その週は南のダンジョンで探索ついでにメタルゴーレムとメタル大蜘蛛を中心に試験運用してみた。
前衛にメタル大蜘蛛1号と2号。その後を俺たちが進み、殿がメタルゴーレム2型1号と2号だ。メタルゴーレムにはそれぞれズダ袋を持たせている。モンスターの死骸をその中に入れて運搬するためだ。1号、2号と言っているが、大蜘蛛にもゴーレムにもマジックで印を付けていないので、区別できないし区別の必要もない。
メタル大蜘蛛1号と2号だが、華ちゃんのデテクトアノマリーの赤い点滅がなくてもダンジョンの床に仕掛けられている罠をモンスター同様器用に避けていくことが分かった。
「罠に突っ込んで自爆するようじゃ困ると思ったが、こいつら賢いな」
「返す返すも外で使えんのが残念じゃったの」
「まあな。
それでも、これだけ活躍してくれれば十分だ」
「そう言えば岩永さん」
「うん?」
「マネキンってあるじゃないですか」
「うん」
「あれって、ゴーレムメーカーでゴーレムにできるんじゃないでしょうか?」
「石がゴーレムになるくらいだから、ゴーレムになるんじゃないか?」
「ということは、美少女フィギュアもゴーレムになるんじゃ?」
「確かに。美少女フィギュアがダンジョンの中限定といっても、歩き回れば一気に大ブレークしそうだな。来週日本に飛んだときどっかで仕入れたいな。やっぱ秋葉原かな?」
「わたしは買ったことがないのでわかりませんが、おそらく」
「いってみるだけいってみよう」




