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岩永善次郎、異世界と現代日本を行き来する  作者: 山口遊子


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第242話 メタルゴーレム。


 フィギュア化したゴーレム1号の試運転のため俺たちは北のダンジョンの第4階層の枝道に跳んだ。そこは以前はるかさんがダンジョンデビューしたところだ。


 俺たちの前後には他の冒険はいないようだ。華ちゃんがデテクトアノマリー、デテクトライフをかけたら、奥の方に3つ緑の点滅が見えた。その点滅が俺たちの方に近づいてくる。足音から察するにかなり重そうだ。


 キリアはフレイムタンを引き抜き、華ちゃんは右手を上げて備えている。アキナちゃんはいつも通りだ。


「近づいてくる速さも速い。ケイブ・ウルフかケイブ・ボアーじゃないか。

 いずれにせよゴーレム1号の試運転にはちょうどいい。

 出でよ、ゴーレム1号!」


 俺はフィギュア化したゴーレム1号をアイテムボックスから右手に排出して緑の点滅が近づいてくる方向に向けて投げ放った。


 ゴーレム1号は洞窟の岩の路面にぶつかる前に赤く輝いた。輝きが消えた時、そこには銀色に輝く巨人の姿があった。その凛々しさに俺たち4人揃って声が出なかったが、前方からモンスターの接近音が響いてきたことで我に返った俺は、ゴーレム1号あらため、メタルゴーレム1号に、


「メタルゴーレム1号、前方からやってくるモンスターを斃すんだ」


 俺は某少年になり切ったつもりで、メタルゴーレム1号に命令した。


 俺の命令を聞いたメタルゴーレム1号は突然すごい速さで走りだし、向かってきた緑の点滅に接触した。


 (ワン)(ツー)(スリー)


 3度メタルゴーレム1号が手足を動かしただけで、メタルゴーレム1号はその場で停止した。気付けば緑の点滅は3つとも消えていた。


「戦いの様子はよく見えなかったが、予想通りメタルゴーレム1号は相当強いな。

 メタルゴーレム1号が何と戦ったのか見にいこう」


 俺が先頭に立ってメタルゴーレム1号の今の戦闘現場に向かって歩いていたら、華ちゃんが後ろから、


「岩永さん、ゴーレムの名まえですが、メタルゴーレム1号で決定ですか?」


「うん。語呂もいいし、ロボットみたいでカッコいいだろ?」


「まあ、岩永さんですものね」


 俺だから何なのかは分からないが、俺の命名に異論があったわけではないようなので、それで良しとした。


 メタルゴーレム1号が何も言わず突っ立っている戦闘現場には、頭がつぶれたり、どっかに飛んでいったケイブ・ボアーの死骸が壁沿いに3つ転がっていた。


「メタルゴーレム1号、エレメア!」


 予想通り、キーワード、エレメアでメタルゴーレム1号は青い光を発し、光が収まった時には15センチほどのフィギュアに戻っていた。


 メタルゴーレム1号とケイブ・ボアーの死骸は回収したが、こうなってしまうと、ケイブ・ボアーの死骸をフィギュア化しても頭なしのフィギュアになりそうなのでフィギュア化は諦めた方がいいだろう。何か損した気になった。


 そもそも、華ちゃんがいる以上、手に負えないようなモンスターが現れるとは思えないので、メタルゴーレムであれ、メタル大蜘蛛であれ、過剰戦力だ。でもそこにロマンがあるのだ。キミならわかるよな。キミが誰というわけではないけれど。


「さて、ちょっと早いがそろそろ昼にするか。ここはひどいからもう少し先にいって休もう」


 惨劇の現場から50メートルほど進んだところで、メタルゴーレム1号によって吹き飛ばされたケイブ・ボアーの頭が転がっていた。そんなものを洞窟の真ん中に転がしておくと、ここを後から通る冒険者がつまずいても困るので、アイテムボックスに収納しておいた。


「ここでいいな」


 みんな路面の岩の出っ張りに適当に腰を下ろしたところで、まずは飲み物を配っていく。そのあと、ハンバーガーだ。普通の冒険者たちがダンジョンの中で何を食べているのか知らないが、ハンバーガーは食べやすいし種類も豊富。実に便利だ。


 手袋だけ取った俺たちは飲み食いしながら、


「岩永さん、ゴーレムのフィギュアもコピーしちゃったんですか?」


「まだコピーしてなかったと思うけど。どうだったかな? ……。

 あれ? 知らないうちにゴーレムのフィギュアが2つある。不思議だ」


「やっぱり」


「ゴーレムやら大蜘蛛はダンジョンの外でも動けるじゃろうか?」


「そーだなー。おそらくダンジョンのモンスターたちと同じで、ダンジョンの外では活動できないんじゃないかな。できたとしても半日が限度とか」


「外でもちゃんと動けるようなら、面白いと思ったのじゃが」


「屋敷に帰ったら試してみよう。ちゃんと活動できるようなら、屋敷の警備員にできるからな」


「ゴーレムが屋敷の周りを歩き回っていたら騒ぎになりませんか?」


「3メートルもあるメタルゴーレム1号じゃ大きすぎて騒動になるかも知れないな。

 人と同じくらいの背丈のゴーレムなら目立たないんじゃないか。小型ゴーレムにそれなりの服を着せてしまえばいいんだよ」


「ゴーレムに服ですか?」


「体型が寸胴だから、普通の服は無理でも、ズダ袋の底に孔を3つ空けて上から被せて腰に縄でも巻いておけば十分だろう」


「そんなのでいいんですか? というか、かえって怖くなりそう」


「警備員だから怖いくらいでちょうどいいんだよ。

 そうだ! フィギュアがコピーできたということは、大きさ調整ができるということだから、わざわざゴーレムメーカーの部屋にいかなくても何とでもなる。

 こんな感じでどうだ?」


 錬金工房の中で、今の高さ15センチのフィギュアゴーレムを元に全体を4割縮小して、6割フィギュアゴーレムを作ってみた。でき上ったフィギュアをアイテムボックスから右手の中に排出して、


「出でよ、メタルゴーレム2型」


 手に持ったフィギュアを洞窟の少し先に投げたら、ちゃんと赤く光って、俺より二回り大きなメタルゴーレムができ上った。こいつの名まえはメタルゴーレム2型1号だ。必然的に最初のメタルゴーレムはメタルゴーレム1型1号、2号だな。自分でもどっちが1号でどっちが2号か分からないけど、区別する必要はそもそもないか。


「ほう。寸胴ではあるが、人に見えないこともないの」


「こいつに服を着せて、頭にヘルメットを被せておけば立派な警備員だ」


「田んぼの案山子かかしにこんなのいませんでしたか?」


「鳥を追い払う効果があるのなら不審者を追い払う効果も十分あるだろう。バレンじゃあまり不審者は見ないがな」


「追い払えばいいですが、不審者がさっきのケイブ・ボアーみたいになったらすごくマズくないですか?」


「そうなってしまったら、証拠は太陽の近くでお星さまになってもらうしかないな。

 それは冗談としても、人は殺さないように命令しておけばよきに計らってくれるだろ。

 それもこれも、ダンジョンの外で活動できてからの話だけどな」


「それもそうですね」



 昼を食べ終わったところで、南のダンジョンでなかなかモンスターがでなかったため試していなかった、メタル大蜘蛛以外のメタルモンスターズの試験運用をしてから、野外での運用テストをすることにした。



 残っているメタルモンスターは、メタル大コウモリとメタル大ネズミ、そしてメタル大サソリの3種類。


 枝道をさらに奥の方に進んで、モンスターと遭遇したところで、順に試験をしてみた。


 まずフィギュア大コウモリを向こうからやって来た大ネズミに向けて投げつけたところ、もちろんメタル大コウモリになったのだが、床の上を翼を広げて歩き回るだけで全く飛べなかった。


 メタル大コウモリは『エレメア』でフィギュアに戻してアイテムボックスに回収し、俺たちに向かってくる大ネズミに、フィギュア大ネズミを投げつけてやった。


 フィギュアから戻ったメタル大ネズミは簡単に大ネズミを倒したが、メタル大蜘蛛と比べ動きは悪いし攻撃力が低そうだった。


 メタル大ネズミの方がメタル大蜘蛛より見た目は小さいので、メタル大ネズミを使うとすれば、ワラワラと数で群がって押し切るような使い方がありそうだ。ただ、そこまでするような強敵に対しては華ちゃんが当然対応するので、出番はなさそうだ。


 最後に試したメタル大サソリはハサミもあればしっぽのトゲもあって攻撃力自体は大蜘蛛より明らかに高いのだが、メタル大蜘蛛と比べ足が遅いのが欠点だった。


 ということで、メタル大蜘蛛が一番優れていると結論づけた。


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