第241話 ゴーレムメーカー
2022年12月28日16:35
前話の最後。屋敷にバジリスクのフィギュアを飾らない理由を修正しました。
「理由は何かの拍子でフィギュアからメタルバジリスクに戻ってしまうと、メタルバジリスクにその気はなくてもおそらく重さだけで床が抜ける」
昨日メタル大蜘蛛で気を良くした俺は、今日もメンバーを引き連れダンジョンに跳んだ。
今日はグレーター付きのモンスターのフィギュア化だ。
フィギュアメーカーの石室に跳んで、まずはグレーター大蜘蛛の死骸を魔法陣の真ん中に置いてキーワード「エレメア!」を唱えたのだが、魔法陣もグレーター大蜘蛛の死骸も何も反応しなかった。
「あれ? 魔法陣が壊れたかな?」
そう思って、ノーマル大蜘蛛でフィギュア化を試したら、ちゃんとフィギュアになってくれた。
「上位種はダメなのかも」と、華ちゃんが言ったので、試しにグレーター大コウモリを試したところ、これもフィギュア化できなかった。他のグレーターモンスターも全部試してみたがどれもフィギュア化しなかった。
「どうもだめみたいだな。グレーターの付くモンスターがメタルグレーターモンスターになったら強くなりすぎだものな」
「そうですね」
「残念なのじゃ」
「しかたない。
それじゃあ、探索を再開しよう」
俺たちはフィギュアメーカーのある部屋の反対側の通路の突き当りの部屋の前に跳んだ。昨日、明日のお楽しみと思って残しておいた部屋だ。
左手で如意棒を持ち、華ちゃんが罠を解除した扉に右手をかけて、
「開けるぞ」と、声をかけた。
俺の後ろで、キリアがフレイムタンを鞘から引き抜く音がした。
扉の先はフィギュアメーカーのあった部屋と同じ20メートル四方の石室で、あの部屋と同じく天井は高く、部屋の扉は俺が今開けた扉だけ。デテクトアノマリーの赤い点滅で分かりにくかったが、床の上には赤い魔法陣が描かれていた。向いの壁にはフィギュアメーカーの部屋と同様銘板があり、文字が刻まれていた。
そこでアキナちゃん。
「意味は、偶像師:魔法陣の上に命なきものを置け。さすれば命が授けられる。
最後の言葉に近い発音はエレモア?じゃな。『師』というのは前回のこともあるから、作り手という意味の方が近そうじゃの」
「となると、命なきものを魔法陣の上に置いて、エレモアと唱えれば、偶像ができるってことだな。
命なきものというのはなんだろうな?」
「動物、植物は生物だから命がありますが、鉱物は生きてはいないので鉱物だと思います」と、華ちゃん。
確かに鉱物に命はないものな。ということは、土、砂、石か。水も確かに非生物だし空気も非生物だが、魔法陣の上に直接は置けないからちょっと違うような気がする。
ということなので、以前魔神のいた空洞で引っこ抜いた岩がアイテムボックスの中にたくさんあったので、素材ボックスに2、3個移し、高さ3メートル直径1メートルの岩の円柱を錬金工房で作り出して魔法陣の真ん中に置いてみた。なぜ岩のまま魔法陣の上に置かなかったかというと、引っこ抜いた場所が場所だったから何かの病原が岩に付着していたらマズいと思ったからだ。
「それじゃあ、やってみる。
エレモア!」
エレモアという言葉が終わると同時に、魔法陣と俺の置いた石柱が赤く輝き始めた。
10秒ほどで赤い輝きが消えたところで、人型のゴーレムらしきものが魔法陣の真ん中に立っていた。身長は元の石柱とほぼ同じで3メートルほど。顔の造作は2つの赤く光っている目だけだ。こいつの色合いは、もとの石柱のまんまなので、いわゆるストーンゴーレムなのだろう。見た目はゴツイしデカすぎる。そもそも扉を出入りするにもしゃがまないといけない。このままだと使いにくそうだ。こいつもフィギュアになってくれればいいのだが。
その前に、俺のアイテムボックスにこいつが入るかどうかだな。ゴーレムの命が生物的な意味合いのものならアイテムボックスには入らないのだろうが、フィギュアがアイテムボックスに入った以上ゴーレムもアイテムボックスに入る気がする。
もし入らなければ、転送でフィギュアメーカーの部屋に送ってフィギュアに成るかどうかだけは試してみないとな。俺の『フィギュア化は持ち運びのため理論』からすると、十分成算はある。フィギュア化した結果、メタル大蜘蛛みたいに超強力なメタルゴーレムが生れれば万々歳だ。
逸る気持ちを抑えて俺は冷静な口調で、
「このままだと、こいつを使いづらいから、フィギュアメーカーの部屋にこいつを移動させてフィギュア化しよう」
「その前に、このゴーレムが命令を聞くかどうか試した方が良くありませんか?」と、さらに冷静な口調で華ちゃん。
確かにその通りだ。俺たちの命令を聞かないようなら何の意味もないからな。
名まえがただのゴーレムでは締まらないから、こいつはゴーレム1号と名づけよう。いまはそこまで締まっていないが、そのうち28号までいけば、そいつをメインに使っていけばいい。メタル大蜘蛛もメタル大蜘蛛1号、2号なのだが、メタル大蜘蛛についてはコピーも作ったしオリジナルも2匹いる。もはや、どれがどれだか全く区別がつかない。
それはそうと、まずはゴーレムに命令だ。
「ゴーレム1号、扉をくぐって通路に出てみろ」と、命令してみた。
ゴーレム1号は俺の命令を理解したようで、ゆっくりと扉に向かって歩き始め、しゃがんで扉を抜け通路に立った。ゴーレムのしゃがんだ姿を初めて見た。石でできているはずの関節周辺が曲がっているのか、動きに合わせて変形しているのかよくわからないのだが、球体関節が付いているふうでもないのに、スムーズに関節は可動するようだ。
俺たちもゴーレム1号の後についてゴーレムメーカーの石室を出た。
「ちゃんと命令を聞いてくれるし、なかなか面白い。
ゴーレムに命令する方がメタル大蜘蛛に命令するより、正〇郎少年の雰囲気があって楽しいぞ」
華ちゃんも正〇郎少年については知識がなかったようで、
「正〇郎少年ってだれですか?」
「昭和のヒーローだ」
「岩永さんって平成生まれですよね? どうして昭和のヒーローのこと知っているんですか?」
もっともな質問である。
「正〇郎少年は平成時代に入ってから大ブレイクしたからかな」
「ブレイク?」
「そう。ブレイク。
そのスジでは今でも大人気なんだよ」
「どのスジか、何となくわかりました」
「それはそれとして、今度はアイテムボックスに入るか試してみよう。収納!」
ゴーレム1号は簡単にアイテムボックスに収納できてしまった。
「これなら、持ち運べるけど、フィギュアメーカーの部屋に跳んで、フィギュア化できるか試してみようぜ」
「ゴーレムのフィギュア化ですが、命を失ったものを置け。という指示からしてどうでしょう?」
「俺のラノベとゲーム知識からするとゴーレムはかりそめの命を受けたものだから、命を失ったもの、とは言えなそうだが、ものは試しだし、ちょっといって試せばわかるよ」
「そうですね」
華ちゃんが俺の手を取ったところで、つられてキリアとアキナちゃんが訳も分からず俺の手を取った。
「転移」
フィギュアメーカーの部屋に現れたところで、俺はさっそくゴーレム1号を魔法陣の真ん中に排出してキーワード『エレメア』を唱えた。
ダメもとと思ったのだが、魔法陣とゴーレム1号は青く輝き始め、輝きがなくなった後に、高さ15センチほどの銀色のフィギュアが魔法陣の真ん中に立っていた。
俺は、ゴーレムのフィギュアを手元に転移させて、みんなにフィギュア化したゴーレム1号を見せてやった。
「できましたね。ロボットのおもちゃみたい」と華ちゃん。
「確かに今はおもちゃに見えるけど、昨日の大蜘蛛みたいに投げつけると元に戻って、とんでもなく強くなると思うんだがな」
「ゼンちゃん、ゴーレムも人形にしてしまったのじゃな」
「小さい方が扱いやすいし、元に戻った時、銀色になれば強くなるだろうしカッコいいからな」
「さすがはご主人さま」
「さっそく試してみたいが、ここのダンジョンだとなかなかモンスターが出てこなくて面倒だから、北のダンジョンにいってみるか?」
「そうですね。アキナちゃんは初めてでしょうから一度くらい、いってもいいでしょう」
「北のダンジョンか。わらわはまだいったことがないゆえ、見てみたくはあるぞ」
「それじゃあ、久しぶりに北のダンジョンにいってみよう。
行き先は第4階層の枝道だな」
「「はい」」「おう!」




