第236話 山田圭子。
山田圭子は善次郎によって斎藤一郎、鈴木茜とともに日本に帰り、防衛医大病院で検査入院した後、しばらく実家で気持ちの整理をした後、休学中の高校に復学した。
防衛省から、何度かエリート冒険者チームを編成するのでそのチームに参加してくれないかと打診があったが、すべて断っている。理由は、防衛省のいうエリート冒険者とは異世界帰りのあの二人のほか、現在同じ高校を休学中の田原一葉、同じく休学中の三千院華も参加するのだろうと容易に想像できたためである。
山田圭子は、半年以上休学していた関係で、既に留年は決まっている。ある意味吹っ切れた彼女はそれも良かったと思っている。
体育の授業などでは自分の能力を抑えているものの、たまに地が出てしまうことがあり、周囲を驚かせているが、マグレや計測ミスということにしていた。
そういった生活を送っていたら、防衛省から第一期の冒険者チームグリーンリーフの発表があった。予想に反して冒険者チームの人数は3名だった。その段階で名まえの公表はされなかったため異世界帰りの4人のうちの誰が冒険者チームに参加していないのかは分からなかった。
年が明け、3人の記者会見があった。記者会見の席には三千院華の姿がなかった。
そこで初めて、山田圭子は三千院華が日本に帰っていない可能性に思い至った。山田圭子は、善次郎の屋敷がどこにあるのか知らないし、当然三千院華、田原一葉が善次郎の屋敷に逃げ込んだことなど知らなかったため、もっともなことである。
「わたしのせいで、三千院さんはあの世界に取り残されているんだ。
一人でやっていけるはずない。
一人でやっていけないなら、神殿に帰ってきてもよかったのに何で帰ってこなかったんだろう? よほどわたしのことが嫌いだったってわけか。
いまごろ死んでいるかも知れない。あー、わたし、なんてことしたんだろう」
自責の念に駆られた山田圭子は、D関連局に電話をかけた。電話番号は何かあれば連絡してくれとD関連局の野辺次長から知らされている。
「もしもし」
『D関連局、野辺です。その声は、山田圭子さんですね』
「はい、山田です」
『どうしました。冒険者になる決心がつきましたか?』
「いえ、そうじゃないんですが、気になることがあって電話しました」
『どういったことが?』
「向こうの世界に召喚されていたのは、わたしのほか、田原一葉さん、斎藤一郎くん、鈴木茜さん、ゼンジロウさん、そのほかに三千院華さんってわたしと同じ学校に通っていた子がいたんです。
三千院華さんは神殿から逃げ出してそれっきりなんです。わたしのせいなんです!」
病院での事情をある程度聴かれたが、突っ込んだものでもなかったし、そういったことを自分から話す気も起きなかったので他の拉致召喚者について山田圭子は話をしていなかった。
野辺次長は電話の先で混乱している山田圭子に、
『山田さん、安心してください。三千院さんは無事です』
「ほ、ほんとうですか?」
『もちろんです。詳しいことはお話しできませんが、お元気ですよ』
「良かったー。それだけが心配だったもので」
『山田さん、よかったですね』
「ありがとうございます。それじゃあ」
山田圭子は胸をなでおろした。
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週初のD関連局との会議で面白い情報を聞くことができた。
グリーンリーフの面々が、ダンジョン内で初めて石組型ダンジョンに到達し、そこで宝物庫を発見したというのだ。宝物庫の中で大金貨を見つけさらに、大金貨を入れるとスキルブックが出てくる自動販売機があったというのだ。
しかし、グリーンリーフの3人はなかなかやるな。3つしかない冒険者チームだが、名実ともに日本のトップ冒険者チームだ。
この情報を聞いて俺も俄然やる気が出てきた。俺たちのダンジョンは攻略済みかもしれないが、まだまだ未探索領域は広い。俺たちのダンジョンにも宝物庫があっておかしくないものな。
そういった話も終わり、そろそろポーションを卸すため駐車場に跳ぼうとしていたところで、向かいに座る野辺次長のスマホが鳴った。
「失礼します。
D関連局、野辺です。その声は、山田圭子さんですね」
……。
電話を置いた野辺次長は会議テーブルの向かい側に座る華ちゃんに、
「今、山田圭子さんから電話がありました。自分のせいで三千院さんが失踪したことを苦にして三千院さんのことを心配していたようです。
三千院さんは元気ですと伝えたところ、心から安心したようでした」
「そうでしたか」
隣りに座る華ちゃんのいまの声の調子は淡々としていたし、顔の表情も変わっていなかった。華ちゃんがあの時すぐに助けにいこうと決断してくれたおかげで、山田圭子が助かったようなものなのだが、華ちゃんにとって、あのことはもう過去のことになっていたのかもしれない。




