第234話 自動販売機
グリーンリーフの3人は第15階層に到達した。
15階層はそれまでの洞窟型ダンジョンとは異なり石組ダンジョンで、階段下の石室で水場が見つかった。
階段を下り切る前に斎藤一郎によるディテクトトラップで部屋の中は罠のないことが確認されていたし、田原一葉の感覚でも、右の壁の違和感だけで罠はないと感じていたため、田原一葉は部屋の中に一つだけある扉に手をかけ押したのだが、扉は開かなかった。
「あれ? 開かない。
あっ! 扉に鍵穴がある。
さっきの宝物庫の鍵の形に似てる」
「一葉さん、これ」
一郎が、一葉に宝物庫の鍵を渡した。
渡された鍵を扉の鍵穴に差し込んだら、すんなり差し込め、捻ったところ扉が音もなく開いた。
扉の先に広がっていたのは、バレン南ダンジョンと同じ10メートル四方の部屋だった。部屋の中央に台座が置かれ、その台座の上に箱が一つ置かれていた。扉は、今開けた扉だけで行き止まり部屋だった。
「宝箱ってわたし初めて」と、茜。
「たまにミミックが擬態していることがあるけれど、これは本物だわ」
台座の手前の床に3カ所、罠が仕掛けられているように一葉には感じられた。
「台座の前に罠がある」
一葉の後ろから、一郎がディテクトトラップをかけたところ、一葉の感覚と同じく床の3カ所に罠があることが分かった。
「洞窟型ダンジョンで罠は見なかったけど、やっぱり石組型ダンジョンには罠が仕掛けられているんだなー。
じゃあ、順番に罠を解除するよ」
一郎が、アイデンティファイトラップ、ディスアームトラップと手順通り魔術を唱え3カ所の罠を全て解除した。
「僕たちなら罠を見つけて解除できるけれども、レッドウルブズやブルーダイヤモンズじゃどうしようもないから大変だろうな」
「探検スキルか魔術スキルのスキルブックが見つからないと厳しいわよね。あの人たちは洞窟ダンジョン内をくまなく探索していくよりないんでしょうね。
それじゃあ、蓋を開けるよ」
3人は台座の上の宝箱を前にして、
「どうやって開けるのかな? ノックでいいのかな。
あっ、鍵穴がある」
「宝物庫の鍵が鍵穴にはまりそう。
試してみるね。
はまったわ」
一葉が宝物庫の鍵をひねると、宝箱の蓋が開いた。
宝箱の中に入っていたのは数十枚の金貨だった。
「この金貨、向こうの世界の金貨と比べて、ずいぶん大きいわね」
「そうだね。枚数は、1、2、……、31、32枚。
リュックにしまっておくよ。
ずいぶん重たいな」
一郎が32枚の大金貨を宝箱から取り出し、宝箱の中身が空になった。その瞬間宝箱が消えてしまい台座だけが残った。
「びっくりしたー。
一瞬で宝箱が消えちゃった」
「こういったところは、謎だよね」
「あれ? 正面の壁に金色のスリットがある。さっきまでなかったよね?」と、一葉。
「はっきり覚えてはいないけど、なかったと思う」「わたしもなかったと思う」
「ということは、宝箱が消えたと同時にできたのかな」
「そうじゃないかな」
3人で壁にできた金色のスリットをよく見ると、
「これって自動販売機のコインスロットに見えない? さっきの大金貨を入れるんじゃないかな」と、茜が指摘した。
「そうかも。一枚くらい無くなってもいいから試しちゃいましょう」
「じゃあ、入れてみる」
一郎がリュックの中から大金貨を1枚取り出して、スリットの中に入れてみたところ、スリットの大きさは大金貨がピッタリ入る大きさで、大金貨はスリットの中に消えていった。
「何も反応ないな。
大金貨が1枚無駄になっちゃったか」
「そうじゃないみたい、後ろの台座の上にあるのはスキルブックじゃない?」
茜の言う通り台座の上にはスマホ大の黒いツルツルの板が乗っていた。
「鑑定!
スキルブック:探検。
さっき探検のスキルのことを話していたらピンポイントで手に入った」
「この部屋はスキルポイントの自動販売機置き場だったのね」
「大金貨はまだ31枚あるけどどうする?」
「2回目があるか試す意味でも、もう一枚スリットに入れてみようよ」
「そうだね。
それじゃあ入れてみるよ」
一郎が2枚目の大金貨をスリットに投入した。
「あ! いきなりスキルブックが現れた。
自動販売機確定だね。
今度のスキルブックは何だろう?」
「鑑定、
スキルブック:探検。
今度も同じ探検だった」
「ここって、探検スキルばかりなのかな?」
「そうなのかどうか、確かめるためもう一枚大金貨を入れてみようよ」
「じゃあ」
一郎が3枚目の大金貨をスリットに投入した。
こんどもちゃんとスキルブックが台座の上に現れた。
「鑑定、
スキルブック、盗賊。
盗賊スキルって泥棒のスキル?」
「盗賊のスキルは罠を発見し、特定して解除することができるスキルよ。探検スキルと違って罠の発見レンジは狭いみたいだけどね。
だけど、これもピンポイントだよね」
「ダンジョンそのものが親切設計だから、こういったところにも表れているのかも」と、鈴木茜がそれらしく口にしてみた。
「そうかもしれないよ。ダンジョンの親切設計もそうだけど、冒険者にはある一定水準になってもらって、どんどんダンジョンの奥まで入ってきてもらいたいんじゃないかな。そうじゃないと、誰もダンジョンに入らなくなってそのうち廃れてしまうから。冒険者に奥深くまで入ってもらいたい理由は全然わからないんだけどね」
「ダンジョンには何かそういった本能のようなものがあるんじゃないかな。
盗賊スキルが1つだけだと取り合いになっちゃうから、次も盗賊スキルを期待してもう一枚大金貨を入れてみようか?」
「そうね」
4枚目の大金貨がスロット中に消え、スキルブックが台座の上に現れた。
「鑑定、
スキルブック、盗賊。
やっぱり盗賊スキルだった」
「今回はここまでにして、上の階に帰らない?」
「「了解」」




