第230話 鳳凰(フェニックス)、試練の間
アキナちゃんの祝福を受けたピョンちゃんの周りで、山吹色のオーラが渦を巻き始めた。
「なんじゃー!?」
ピョンちゃんを祝福した当のアキナちゃんまで驚いている。
山吹色のオーラは収まるどころかだんだん大きくなり、ピョンちゃんは華ちゃんの肩から舞い上がって俺たちの頭上をピヨン、ピヨンと鳴きながら飛び回り始めた。
「華ちゃん、ピョンちゃんが何を言っているのか分かるか?」
「分かりません」
「オーラに包まれてはっきりは見えないけど、ピョンちゃん、大きくなっていないか?」
「大きくなっています。色も赤味が増してきているような気がします」
「まさか、アキナちゃんの祝福が引き金になって進化したのか?」
「ピョンちゃんが飛び回っているので鑑定は難しいけど、やってみます。
鑑定。……。鑑定できませんでした」
「おそらく今のピョンちゃんは進化途中だから、名まえがないんだ。
このまま様子を見よう」
ピョンちゃんは俺たちの頭上をピヨン、ピヨン鳴きながら飛び回って、だんだん大きくなってきた。山吹色のオーラの渦に包まれているのではっきりはしないが、羽の色は紫から赤く変わってきている。
しばらくピョンちゃんはそうやって飛び回っていたが、ようやくピョンちゃんを取り巻く山吹色のオーラが収まり、クジャクほどの大きさになったピョンちゃんが台座の上に舞い降りた。ピョンちゃんの羽の色は頭の先から尾羽の先まで真っ赤。というか朱色だ。尾羽の枚数も多くなっている気がする。
「ピョンちゃん?」
華ちゃんがピョンちゃんに向かって声をかけた。
「ピヨン、ピヨン」
ピョンちゃんが華ちゃんの呼びかけに答えたが、今までの鳴き声よりかなり声が低くなった。
「ピョンちゃん、鑑定するからじっとしててね。
鑑定。
鳳凰」
そんな気もしないではなかったが、ホントにピョンちゃんは鳳凰に進化してしまった。エリクシールの素材という意味で貴重な羽を付けたピョンちゃんだが、俺にとってはそこまで貴重というわけではない。素材という意味ではそうなのだが、ただの羽でさえそういった貴重な素材ということは、ピョンちゃん自身にも何か凄い力があると思っていいだろう。俺のラノベとゲームの知識から言って間違いない。
「ゼンちゃん、わらわもこれには驚いてしもうたが、ピョンちゃんの進化はわらわの祝福が引き金になったようじゃから、台座の上に書かれた『試練の間』とは関係ないのではないか?」
「ということは、台座の上に大金貨を置けば、ボス的モンスターが現れる?」
「そこは、わらわでも予想できんがの。鳳凰に進化したピョンちゃんもいることじゃし、多少それなりのものが現れようが何とでもなるじゃろ」
「そうだな。
マズくなれば、魔神同様太陽に飛ばすだけだし。
よし、みんな構えてくれ。これから大金貨を台座の上に置いてみる」
俺の声を理解したのか、ピョンちゃんは真っ赤な翼をはためかせて舞い上がり俺たちの頭上を回り始めた。
俺はいったんアイテムボックスから右手の中に大金貨を出して、みんなに見えるように、台座の上に置いた。
最初何の変化もなかったのだが、頭上からピョンちゃんの羽ばたく音とはまるで違う重い羽ばたき音が聞こえてきた。見上げるとそこには羽をはやした金色に輝く大型のモンスターがいた。どう見てもドラゴンだ。
ヤヴァイ。
と、思ってまずはキリアを屋敷に転送しようとしたが、転送できなかった。ヤヴァイ。
振り返れば、俺たちが入ってきた扉は消えている。ヤヴァイ。
ドラゴンを太陽に転送してやろうとしたが、手応えなく失敗した。ヤヴァイ。
ここで俺だけ転移で逃れるわけにはいかないし、そもそも転送ができない以上、転移も無駄だろう。
3秒ほどそうやって時間が過ぎていったが、上空のドラゴンは羽を羽ばたかせているだけで俺たちに対して攻撃してこなかった。そのかわり、ゆっくりと降下して、俺たちの正面に降り立った。
『試練の間に集いし勇者たちよ』
耳を通さずに頭の中に声が響いてきた。ドラゴンが語りかけているのか?
変な成り行きになってきた。華ちゃんはキッとした目でドラゴンを睨んでいるが今のところ攻撃は控えている。
『われが与える試練に答えよ』
答えよ? うん? なんか変じゃね? 俺の思いとは関係なく頭の中のドラゴンの声は続いた。
『2、3、5、7、11、13。この次の数字は何になる?』
なんだ? このドラゴン、俺たちをバカにしているのか?
ただの素数の並びじゃないか。17に決まっているだろ!
『正解! 17だ。武勇だけでなく知力にも秀でていたことを証明した勇者たちよ、最後の道に進むがよい』
そう言って黄金のドラゴンは羽を羽ばたかせて天井近くまで舞い上がりそこでいきなり消えてしまった。ドラゴンが消えたと同時に、俺たちの正面に見える壁の一部が消えて、その先に通路が見えた。
えっ、たったこれだけでお終いなの?
「なんだか、肩透かしだったな」
「ゼンちゃん、わらわには今の問いが全く分からなかったのじゃが、ゼンちゃんにはあの問いが分かったのじゃな?」
「簡単だったからな」
「さすがはわらわが見込んだゼンちゃんじゃ」「さすがはご主人さま」
たまたま俺とか華ちゃんは学校で習っているから簡単な問題だったが、素数のことを一度も聞いたことがなければ無理な問題だったかもしれない。
「ここまできた以上、先に進もう」
「「はい」」「うむ」
俺が台座の上の大金貨をアイテムボックスに収納したら、台座の上に銀色のカギが一つ乗っていた。
その鍵を手にしたら、台座はゆっくりと床に向かって沈んでいった。ついでに、後ろで消えてしまった入り口も出現していた。おそらく転移、転送も可能になったと思う。
その間にピョンちゃんはゆっくりと華ちゃんの頭の上に降りてきてヘルメットの上に止まっていた。
「華ちゃん、ピョンちゃんを頭の上に乗せて重くないかい?」
「不思議と重くはありません」
華ちゃんが重くないならそれでいいんだけどな。
「ところで、このカギはどこのカギかな?」
「今開いた通路を進めば、そのカギが使える扉があるんじゃないでしょうか」
「それもそうだな。よし、いってみよう」




