第224話 イオナ5
メラー先生の後をイオナとアキナちゃん、最後に俺がくっ付いて画材を扱っている店に向かって歩きながら、メラー先生に授業をどうするか話したところ、絵の授業は明日から週2回程度、メラー先生がうちにやってきて午後2時から4時まで2時間教えてくれるということになった。
メラー先生はうちの屋敷の前の通りから表通りに回ってしばらくいったところにあった雑貨屋のような店に入っていった。
俺たちはメラー先生を先頭に、タダの雑貨がそれこそ雑多に並べられた店の中を歩いていき、店の奥の方にあった階段を上って2階に上がった。
2階は1階とうって変わって、整然と商品が並べられていた。まさに画材屋だ。絵具といったらチューブに入っているものを想像するのだが、ここでは陶器の瓶に入れられた粉だった。粉に油なりを混ぜて、絵具らしくするらしい。あとで知ったが、混ぜる油によって出来上がりの質感や透明感などが変化するそうだ。
メラー先生は手にした店のかごの中に色粉の入った瓶をどんどん入れていき、何種類かの油の入った瓶もカゴに入れていった。先生は瓶をカゴに入れる時、イオナに向かってその商品の説明を細かくしていた。その説明をイオナは真剣な顔をして聞いていた。すでに講義は始まっていたようだ。
二人はそんな感じで真面目な話をしていたのだが、アキナちゃんはフラフラと店の中を歩き回っていた。
筆を何本か、絵画用のナイフを何本かカゴにいれたところで、カゴが一杯になった。一杯になったカゴは俺が持った。精算してアイテムボックスに入れてしまいたかったのだが、俺が精算してしまうとメラー先生が却って面倒になってしまいそうなので、黙ってカゴを持って二人についていった。
次にメラー先生が手にしたのは、いわゆるイーゼルで、かなりがっちりして重そうなものだった。
「これは重いものですから、店の者に言ってお屋敷に配達してもらいましょう」と、メラー先生が言うので、アイテムボックスでコピーしてやろうかと思ったが、やたらなことはできないので止めておいた。
そのあと、パレットとキャンバスを数種類選んで、店の人にカゴごと運んでもらうことになった。搬送先は俺の屋敷なのだが、俺自身住所を知らない。にもかかわらず、メラー先生は、〇△通りの○×と店員に告げたら店員は理解できたようだ。荷物は夕方までには屋敷に届くそうだ。
請求は、神殿に回すようメラー先生が言っていたようだ。これなら、いくらでも買い物できる。
買い物が終り店を出たところで、メラー先生は商業ギルドにイオナの絵のことを伝えにいくというので、そこで別れた。
俺は、イオナとアキナちゃんを連れて、珍しく歩いて屋敷に帰った。
明日からの絵画の授業で、どの部屋を絵画部屋にするか考えたのだが、二つある応接室のうち一つは使っていないので、その部屋を絵画部屋にすることにした。椅子を何個か残して、テーブルは物置用の台にするつもりで部屋の奥に動かしておいた。
イオナとアキナちゃんは、俺の作業を黙ってみていたのだが、イオナに、
「誰でもいいが、この部屋を絵画部屋にするから、店から荷物が届いたらこの部屋に運ばせてくれ」
「はい」「了解なのじゃ」
部屋の準備が終わり、しばらくしたら昼食になった。
食事しながら、明日の午後から週2回、イオナの絵の先生がやってくることをみんなに話しておいた。
「名まえは、メラー先生。顔を見たらちゃんとあいさつするようにな」
「「はい」」
「それと、言い忘れたが、メラー先生の顔でイオナの描いた絵を、今度商業ギルドで開かれる展覧会に出すことになったから」
「すっごーい」「イオナ、やったね!」「さすがはご主人さま」
ご主人さまは関係ないと思うのだが。
「イオナちゃん、それで、どの絵が展覧会に出展されるの?」と、華ちゃん。
イオナが答える前に、アキナちゃんが答えた。
「それは、ゼンちゃんのあの絵じゃよ」
「えっ!? あの絵ってアノ絵でしょ?」
「ゼンちゃんの絵は1枚しかないからの」
「岩永さん、おめでとうございます。これで、岩永さんはこの街で男性モデルとしてデビューですね!」と、今度は真面目な顔をしてはるかさん。
華ちゃんのボディーブローに続いて、はるかさんからストレートを喰らってしまった心境だ。我慢だ善次郎。すべてはイオナのためだ。
冗談はいいのだが、どこかの画家からホントにモデルになってくれと言われたらどうしようか?
「でも、実物とあの絵はだいぶ差があるからモデルは難しいかも?」と、またしてもはるかさん。ストレートと思っていたらワンツーだった。
ワンツーに続いて、
「ねえねえ、イオナちゃん、今度はわたしを若くして描いてくれない?」と、はるかさん。
「もちろん、いいですよ」
「イオナちゃんが空いてる時間に合わせるから言ってくれる?」
「食事の後片付けが終わったらいつでもいいです」
「居間にいるから呼んでね」
「はい」
「イオナ、次はわらわじゃ。よいじゃろ?」と、アキナちゃんが名乗りを上げた。
「アキナちゃん、アキナちゃんを若くしたら幼児に成っちゃうけどいいの?」
「わらわは、長いこと石にされておったので、このナリじゃが、本当の歳は二十歳なのじゃ。
わらわの本当の歳の姿を見てみたいのじゃ。イオナならできるじゃろ?」
「できると思う」
「嬉しや」
「せっかくだから絵画部屋で描いたらどうだ。イオナとアキナちゃんは知ってるけれど、絵画部屋というのは、使っていなかった応接室をメラー先生の絵の教授用に使うことにしたんだ」
イオナは午後から、はるかさんの若いころの肖像画とアキナちゃんの二十歳の肖像画を描くことになった。
俺は、食事の後片付けが終わる間に、居間の棚に置いていたスケッチブックや色鉛筆を絵画部屋に運んでおこうと思ったのだが、イオナがどれを使っているのか分からなかったので止めておいた。ポスターフレームと額だけは絵画部屋の壁に立てかけて並べておいてやった。
食事の後片付けが終わり、イオナとはるかさんが絵画部屋に入ってきた。
俺はどんな感じでイオナの絵ができ上っていくのか見ていたかったが、でき上ってからのお楽しみということで部屋を出ていった。




